第501話 旧校舎、謎の地下室発見

その後、ようやく依頼の内容の説明をベアトリーチェから全て聞くことができたリュー。


依頼は、冤罪で婚約破棄された男爵令息ジャカールの無実を証明する事、なのだが……


その当事者であるジャカールが行方不明なのだから、まずそれを探し出す必要がある。


そしてそのジャカールは、半年ほど前から問題になっている失踪事件に何らかの関わりがあると噂されているという。


ジャカールの冤罪とはまさにその事なのだから、結局、リューの仕事は、失踪事件を解決する必要があるという事になってしまう。


まぁ、解決できなくとも、ジャカールが無関係である事を証明できれば良いのだが、それは難しいであろうことは想像に難くない。


とりあえず、だいたいの事情は分かったので、その日の夜から早速、リューは捜査を開始する事にした。神眼を使っての捜査である。


東棟の校舎の屋上に転移したリューは、まずは怪しいと噂の西棟の旧校舎をサーチする。


夜中なので建物の内部は真っ暗闇なのだが、神眼で探る分には暗闇でもまったく影響はない。


複雑な迷路となっている事が多いダンジョンと違って、画一的な構造の校舎を探知するのは容易い。まぁ複雑なダンジョンをサーチするよりも、人の心の奥にある暗く淀んだ迷宮を覗くほうがずっと疲れる、というのが最近のリューの感想なのであったが。


そして、上から順に校舎の中を探知していったリューは、地下に一人の生徒が閉じ込められているのを発見したのであった。


例えば、リューの能力があれば、誰にも知られずに捕まっている生徒を助け出す事も容易いだろう。さらにそのまま首謀者を暗殺してしまう事さえも可能だろう。


だが、それだとリューが仕事をした事が分からない。


一応、仕事として受けた以上、雇い主のベアトリーチェに分かるように見せる必要があるだろう。さらに、怪しいやつを瞬殺してしまっただけでは、ジャカールの無実を証明する事にもならない。


囚われた生徒は特にいますぐ命に関わるという状況でもなさそうなので、とりあえずその晩はそのまま放置しておき、翌朝、ベアトリーチェに話をして、一緒に旧校舎に向かう事にしたのであった。




  * * * * *




翌日、朝から西棟旧校舎へ向かったリュー達。(ちなみに授業はサボリであるが、緊急事態なので仕方ないだろう。)


メンバーは、リューの他に、ベアトリーチェ、その護衛であるマグダレイア、そしてベアトリーチェの従者でありジャカールの幼馴染のヘレン。そしてさらに学園長と、その護衛も一緒に来る事になった。


ベアトリーチェに話をしたところ、学園長に報告すると言う。しかたなく一緒に学園長に行方不明の生徒を発見した事を報告しに行くと、学園長自ら行って確認すると言い出した。それは危険では? とひと悶着あったが、結局、護衛として学園の警備員であるオークルも一緒に行くというところで落ち着いた。


オークルは引退して学園の警備員に再就職したのだが、かつては王宮の騎士だったので、歳である事を除けばそこそこ腕が立つらしい。


リュー 「こっちだ」


リューが向かったのは、地下へと続く階段である。だが、地下に降りてみても、そこには何もない空っぽの部屋があるだけであった。


ヘレン 「やっぱり、誰もいないですが……?」


リュー 「そう見えるがな」


ヘレン 「?」


リューが指をパチンと鳴らすと、部屋の奥の壁に、先程までなかったはずの扉が現れた。


学園長 「はて? こんなところに部屋はなかったはずじゃが……」


ベアトリーチェ 「魔法で隠蔽されていた、という事ですね?」


リュー 「そういう事だ。誰かが掛けた魔法かと思ったんだが、どうやら魔道具を使っているようだな」


扉の取っ手部分にその魔道具取り付けられて居たが、リューが魔力分解を用いたために、壊れてしまったようだ。


オークル 「みたことない紋章だな」


学園長 「どれどれ…」


学園長が取ってのついたルーペを取り出して魔道具を見る。そのルーペは外国製の鑑定の魔道具なのだそうだ。あまり複雑な鑑定はできないらしいが。


学園長 「どうやらアルソナ国製の魔道具じゃな、ホレ、このルーペと同じジフダラードのマークがついておるじゃろ?」


リュー 「ジフダラード?」


ベアトリーチェ 「古代遺跡がたくさんあって、魔道具作りが盛んな国ですよね、魔導国家なんて呼ばれている。何年か前にドネル帝国に併合されたとか」


学園長 「うむ、ちゃんと勉強しておるようだねベアトリーチェ。ジフダラードは何年か前にドネール帝国に併合された。あ、ドネル帝国は、現地の発音ではドネール帝国というほうが近いそうじゃぞ。実は、儂の友人がジフダラードに居るのじゃが、嘆いて折ったよ。魔道具作りは盛んじゃが、魔道具に頼りすぎて魔法の鍛錬がおろそかになっておるとな。研究者の数は多いが、戦闘能力のある者は少ない国でな。魔力鍛錬至上主義のドネール帝国に攻められて、抵抗できなかったそうじゃ…」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


敵と遭遇! …あれ、ジャカール? なんで敵方に居るの?

そして閉じ込められるリュー達


乞うご期待!


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