第493話 その一瞬、無意識に死を覚悟した
リュー 「なかなか、鋭い攻撃だった。アブナイところだった」
マグダレイア 「危なかった? 簡単に受け止めておいて……少しはできるようね、さすが、連続婦女暴行魔ね」
リュー 「連続婦女暴行魔って…俺はそんな事した覚えは…」
マグダレイア 「本気で行かせてもらう! 覚悟!」
マグダレイアの猛攻が始まった。
一撃一撃が異様に鋭い。
リューも必死で躱す必要があった。
それもそのはず、マグダレイアの剣の腕は【剣聖級】であったのだ。これほどの使い手が居るとは正直リューも驚きである。しかもまだ若い少女である。
リュー 「世の中は広いなぁ…強い奴がいっぱい居る」
正直言って、ランスロットと鍛錬していなかったらリューも対応できななかっただろう……と言っても、一切の
ランスロットのおかげで、まだリューには余裕があったのだ。
マグダレイア 「そんな…私の剣がことごとく止められてしまうなんて……ありえない」
リュー 「こちらも、そろそろ本気出させてもらおうか」
時間停止の能力を使ってしまえば簡単に勝てる相手ではあったが、それはあえて使わない。リューも強敵に会い、ランスロットとの鍛錬でどこまで自分が強くなったか試してみたくなったのである。
防御に徹していたリューが反撃に転じる。
だが、リューの期待に反して、その一撃で勝負はついてしまった。
リューは、打ち込んでくるマグダレイアの手首を打った。防御と反撃が一体となった小手打である。リューとしてはごく軽く当てたつもりだった。しかし…
リューが持っているのは重さ百キロもある特殊合金製である。その衝撃は予想以上に激しく、マグダレイアは手を傷め、剣を落してしまったのだ。
マグダレイア 「あ……」
リューの剣がそのままマグダレイアの喉元につきつけられる。
リュー 「勝負あったな?」
アルバ 「そんな……レイア様が負けるなんて、ありえない……」
二人の戦いを隠れて見ていたアルバがフラフラと出てきた。
リュー 「お前か……なぜ嘘を?」
アルバに詰め寄ろうととするリュー。だが、その行く手をマグダレイアが阻む。
マグダレイア 「待ちなさい! アルバに手は出させないわ!」
マグダレイアは腰の剣を抜き、構えた。
先程傷めた手首はもうなんともないようであるが、その程度は驚く事でもない。この世界にはポーションもあるし、治癒系の能力を持つ者も多いのだから。
マグダレイアが構えたのは木剣ではない、腰に佩いていた真剣である。見事な剣である、かなりの銘刀なのだろう。
マグダレイア 「この剣をとったからには、遅れは取らないわよ」
リュー 「実力差は先程証明されたはずだがな」
マグダレイア 「さっきはその武器のせいで遅れをとっただけよ」
リュー 「ああ、これな…、それはそうか、木剣では打ち合えないよなぁ…」
マグダレイア 「そんな武器を使って、卑怯者。だけど手の内はもう分かったわ、私も武器を変えさせてもらう。今度は負けない」
リュー 「やれやれ、武器のせいじゃなく腕の差だろうに。じゃぁこうしよう」
リューは訓練場の壁に自分の金属製の模擬剣を立てかけると、壁に掛かっていた木剣を手にとった。
リュー 「俺はコレでいい。ああもちろん、お前はその剣を使っていいぞ」
マグダレイア 「舐められたものね……いや、それも油断させる手なのかしら? 悪いけど木剣相手でも手加減は一切しないわよ? もう殺さないようになんて言わない。本気で殺る…」
アルバ 「そ、そうよ! 女の敵に手加減は無用ですわ!」
リュー 「いい加減にしろよ……
俺、冤罪かけられるの、大っ嫌いなんだよね。
たとえ女相手でも、容赦はもうしない」
マグダレイアが激しい怒気を放っているが、リューから放たれた殺気がいとも簡単にそれを押し返して圧倒する。リューの無限魔力生成による膨大な魔力を力任せに乗せた殺気である。その圧力だけでアルバは卒倒しそうになる。
マグダレイア 「こっ…、負けない…!」
マグダレイアも必死で気合を押し返す。
リュー 「どうした、かかってこないのか? 俺を斬り殺すんだろう?」
その言葉が終わる前にマグダレイアが切りかかっていく。マグダレイアの全身全霊を込めた全速の斬り込みである。
水平に振られたマグダレイアの剣が、リューの腰のあたりに迫る。リューは反応していない。仮にリューが反応できたとしても、今手にもっている木剣では、受け止められてもそのまま木剣ごと胴体を両断できる。
マグダレイアの剣が、リューの居た場所を通過する。
斬った。
マグダレイアがそう思った瞬間、しかしそこに居たはずのリューは消えていた。
直後、背後から恐ろしい殺気が襲ってきたのを感じ取り、マグダレイアは反射的に床に身を投げた。
リュー 「ほう、よく避けたな。いまのが避けられるとは思わなかった……俺もまだまだだな」
慌てて立ち上がったマグダレイアだったが、肩に激しい痛みが走る。床に倒れ込む事でかろうじてリューの攻撃を躱したマグダレイアだったが、リューの振った木剣はマグダレイアの肩を掠めていたのだ。
それはかなりのダメージを与えていた。痛みが走り、マグダレイアは慌てて治癒魔法を発動して肩を治療した。
マグダレイア 「なんて鋭い振りなの……まともに受けたらマズイわね」
リュー 「殺気を読まれたか。やはり、ランスロットの言っていた通り、剣は無心に振らなければだめなんだなぁ…」
そう言いながら、リューの発していた殺気・剣気が消えていく。
先程まで感じていたリューからの圧力が消え、少し体が軽くなった気がしたマグダレイアであった。
だが、逆に恐ろしくなる。それまであった攻撃的な気が消えて、リューがいつ攻撃してくるのか、気配がまったく読めなくなったからである。
リュー 「さて、終わりにしよう」
次の一撃で終わる。
マグダレイアはその一瞬、無意識に死を覚悟した。
だが……
『そこまで!!』
リューが動こうとするより一瞬早く、声がかかった。
あと0.01秒声が遅ければ、リューの木剣がマグダレイアを打ちのめしていたであろう。
声をかけたのは、ベアトリーチェであった。
― ― ― ― ― ― ―
次回予告
はじめまして
乞うご期待!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます