第492話 ちょまてって誤解だ
慌てて鞄の中を漁り、見つけ出した手紙をベアトリーチェに渡すアルバ。
ヘレン 「ちょっとアルバ。汚い鞄の中ねぇ、これじゃ埋もれてしまうわ。…あなた、前はもっと綺麗好きじゃなかったっけ?」
ベアトリーチェ 「……これ、一体いつの手紙?」
アルバ 「…7日前です……その、リーチェ様が風邪で寝込んでおられたので、元気になってからお渡ししようと思っていて」
ヘレン 「リーチェ様が寝込んだのは5日前でしょ」
アルバ 「てへ」
ヘレン 「あんた、なんだか性格変わったわよね…」
ベアトリーチェ 「だとすると、時間的には、探偵は、もうとっくに来てるはずね」
ヘレン 「そう言えば、助けてくれた転校生の男の子が、ベアトリーチェ様に会いたいって言ってました、なんでも、ユキーデス伯爵に、頼…まれた、って……それってまさか!」
アルバ 「…!」
ベアトリーチェ 「その人の名前は?」
ヘレン 「リュージーンと言ってました」
ベアトリーチェ 「手紙によると、探偵の名前はリュージーンと書いてあるわ」
アルバ 「アイツが? そんなの……怪しいです! だって、アイツ、レイア様の手を、握ったんですよ!」
ベアトリーチェ 「まぁ、レイアの?」
マグダレイアのほうを振り返るべアトリーチェ。マグダレイアはちょっと頬を赤くした。
アルバ 「そうです、手が早い、早すぎる! きっと【魅了】のスキルか何かを持っていて、女生徒を誑かして西棟に誘い込んでるんですよ! そうよ、きっと、女生徒暴行事件の犯人だと思います!」
ヘレン 「何を言ってるの……彼は襲われた私を助けてくれたのよ?」
アルバ 「う、だけど……、そ、それだって罠だったかも、そうよ! 襲った奴らもグルだったんだわ、そうに違いない! 仲間に襲わせて、それを助けるフリして近づく。ありそうな
ヘレン 「いや、全員本気でぶっ飛ばされてたから、嘘じゃないと思うんだけど……」
ベアトリーチェ 「だいたい、つい数日前に学園に来たばかりの人間が、何ヶ月も前の失踪事件や暴行事件の犯人なわけないじゃない……?」
アルバ 「それは……でも……」
ベアトリーチェ 「…アルバ、最近どうしたの? 何かおかしいわよ? アナタは以前はもっと大人しい性格だったじゃないの……?」
アルバ 「お、おかしくなんかないですよ! だんだん、地が出てきてしまってるだけです……以前は猫被ってたので」
ベアトリーチェ 「そ、そうだったの……」
* * * * *
翌日から登校するつもりだったベアトリーチェだったが、熱が下がったばかりなので、もう一日様子を見て休めと診察に来た校医に言われてしまった。
そのため、翌日もリューは、ただ学園の授業に付き合うだけの時間が続く事になった。まぁ、リューにとっても久々の学校の授業体験というのもそれなりに懐かしくもあったのだが。
その日の放課後、リューはアルバから呼び出された。ベアトリーチェが会うと言ってると言われれば、断る理由もない。
ただ、指定された場所が何故か、訓練場のひとつであった。(魔法学園なので、魔法の演習用に防護魔法がかけられた演習場がたくさんあるのだ。)
リュー (訓練場ってのは、盗聴防止とかの意味もあるのかな?)
やっと詳しい依頼内容を聞けるかと思ったリューだったが、待っていたのはベアトリーチェではなく、先日西棟旧校舎で遭った少女、マグダレイアだった。
マグダレイア 「来たわね……」
リュー 「おや、君は……?」
マグダレイア 「…あなた、どうやらクズ男だったみたいね?」
リュー 「なんだいきなり?」
マグダレイア 「昨晩、アルバに暴行したそうね?」
リュー 「一体何の事だ???」
マグダレイア 「とぼけるつもり? アルバが言ってたわよ、昨晩、嫌がるアルバを押さえつけて、無理やりあんなことやこんなことやそんな事やあんな事や……」
リュー 「一体何を言ってるのか分からないなぁ。昨晩、俺は誰とも会ってないが…?」
マグダレイア 「しかも、貴族の娘が暴行されたなんて、恥になるから言えないだろうって脅したとか……だけど残念だったわね! アルバは泣き寝入りするような弱い娘じゃなかった!」
リュー 「おーい話聞いてるか? 俺は知らんと言ってるんだが? アルバがそう言ったのか?」
マグダレイア 「汚らわしい! 女の敵、私、許せないのよね、そういう奴!」
リュー 「多分人違いだぞ? あるいは嘘か。そんな簡単に騙されて、大丈夫か?
っても、話通じない感じだな。なんか目が座ってるし」
マグダレイア 「犯されたなんて恥にしかならない事を、わざわざ自分から言うわけないじゃない! 勇気を出して打ち明けてくれたのに、それを嘘なんて簡単に切り捨てて……やっぱり本当にクズなのね。許せないわ」
リュー 「おいおい、証拠もなしに一方的に…酷い話だ」
マグダレイア 「あげく、暴行された事実をバラされたくなかったら、また抱かれに来いとか言ったらしいじゃない!」
リュー 「だからそんな事は言ってないっての!」
マグダレイア 「表沙汰にできないなら、私が罰します。バラせないように、一生話す気が起きないくらいに、あなたをツブす…」
そう言うと、レイアは剣を構えた。腰には剣を佩いていたがソレではなく、構えたのは練習用の木剣であった。
レイア 「殺しはしない。でも、二度と悪さできないように
構えた剣の切っ先をリューの股間辺りに向けるレイア。
リュー 「やれやれ、キチガイ女か?」
問答無用で打ち込んでくるレイア。
だが、それをあっさり受け止めるリュー。
マグダレイア 「受け止めた?! 私の全速の打ち込みを?! それに剣なんて持っていなかったはずなのにいつの間に…」
リューの手には最近お気に入りの特殊合金製の模擬剣が握られていた。
― ― ― ― ― ― ―
次回予告
怒ったぞ
もう女でも容赦はもうしない
乞うご期待!
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