第488話 モブ不良学生の出番は強制終了だ

男子生徒4 「だからどうした?!」


男子生徒が凄むが、その目をジロリと睨み、リューが威圧を発する。その圧力に男子生徒4は気圧されてたじろぎ、思わず手を離してしまう。


男子生徒5 「おい、何してっ、ぐっ、離せっ」


反対側に居た男子生徒5はまだ腕を掴んだままであったが、そちらに向き直ったリューは胸ぐらを掴むとそのまま持ち上げた。


男子生徒6 「てめぇ、やんのかゴラ!」


殴りかかってる男子生徒6。


だがリューは、持ち上げた生徒5を向かってきた生徒6に叩きつける。投げ捨てられた生徒5の頭が生徒6の顔面に激突して鈍い音がする。


地面に転がって動かなくなる二人。


リュー 「顔面骨折くらいはしてるかもしれないが、そのくらいは自業自得だろ。…先に手をだしてきたのはそちらだからな? セイトウボウエイだな? あ、これがホントの生徒防衛ってか。こういう高度なジョークはまだランスロットには言えまい」


だが冗談に笑う余裕もなく、男子生徒4は後退っていった。いつもならすぐに出てきて応じそうなランスロットも出て来ない。ランスロットは国の将軍として国防の仕事に忙しいようだ。


男子生徒1 「おい、何やってんだ」


男子生徒1・2・3は女生徒を離すと、ポケットからナイフや短い金属棒を出す。


よく見ると男子生徒1がナイフとは別の手に何か小瓶のようなモノを持っている……よく見ると、それは先程女生徒に投げつけていたコショウの容器であった。リューの呪文詠唱を警戒しているのか。


男子生徒1 「お前もだ!」


男子生徒1に言われて、男子生徒4もナイフを取り出した。


男子生徒1 「やっちまえ!」


号令とともに襲いかかってくる男子生徒達。


もちろん、リューの敵ではない。が……


リュー 「一応生徒だし、殺しちゃ駄目だよなぁ……?」


仕方なくリューは、攻撃を躱しながら生徒達の顔面にビンタを叩き込んでいく。


単なるビンタではあるが、リューが力任せに振ったため、スイングが視認できないほどの速度である。


パンと破裂音がして、顔がもげるかというほどの勢いで吹き飛んでいく男子生徒達。


全員、一撃で意識を失って地面に転がる事になったのであった。


リュー 「一撃で終わらせないで、もっと弱くしてなんども引っ叩いてやったほうがよかったかな……」


    ・

    ・

    ・


リュー 「大丈夫か?」


リューは呆然としている女性に近づいて言った。


リュー 「こいつらは…って聞くまでもなく、廃墟の校舎をたまり場にしてる不良達ってやつか」


女生徒 「…あ! あの、ありがとうございました! あなたが来なかったら危ないところでした。私はヘレンと言います……って、あら、あなたは…」


リュー 「?」


ヘレン 「確か、今日転校してきた、確か、リュー……」


リュー 「リュージーンだ」


ヘレン 「ごめんなさい、そのリュージーン、さんは、どうしてここに?」


リュー 「リューでいい。いや、ちょっと人を探していてな。いや、探してる人物は今日は休みだって事が分かってるんだが。その人物と親しい者がこっちの校舎に向かったって聞いてな」


ヘレン 「……それはつまり、私を心配して来てくれたって事ですか?」


リュー 「いや、まぁ、たまたまだ。散歩のついでに、話に出た西棟校舎とやらに来てみただけ」


ヘレン 「わざわざ不良がたまり場にしてる場所に? ふふ、優しいんですね。私の事はアルバから?」


リュー 「アルバ? いや、名前は知らない。公爵令嬢のレイカって娘の取り巻きの子が言ってたんだ」


ヘレン 「レイカ様の?! …そうですか。って、私が親しくしている休んでいる人物ってもしかして…」


リュー 「ああ、その娘が言ってた、君は、ベアトリーチェと親しいんだろう?」


ヘレン 「リーチェ様をご存知なんですか?」


リュー 「いや、まだ会った事はないが…、ユキーデス伯爵に頼まれてね」


ヘレン 「伯爵に…、そうだったんですか。こんな時期に転入っておかしいなと思っていたんです」


リュー 「それより、君みたいな女の子が、なんでこんなところを一人で歩いてるんだ? こっちの校舎はあまり治安が良くない・・・・・・・ってみんな言ってたのに?」


ヘレン 「そ、その……幼馴染に会いに」


リュー 「恋人と隠れてデート?」


ヘレン 「ちっ違います、本当にただの幼馴染です!」


リュー 「だが、こっちの壊れた校舎は不良達のたまり場だってさっき聞いたぞ? その幼馴染ってのはその仲間なのか?」


ヘレン 「ジャカールは不良じゃないです! ただ、もう一人、幼馴染がZクラスに居て……侯爵令息のマリク様って言うんですけど、私やジャカールにとっては兄みたいな人で。勉強は嫌いでしたが、とても面倒見の良い人なので、Zクラスでは不良達のリーダーみたいな立場だったのです。


最近Zクラスの不良達が問題を起こす事が多いんですが、それをマリク様がやらせてるんだろうって噂が出ていて。最近起きてる事件にも関与してるんじゃないかって……。


でも、ジャカールはマリク様がそんな事するわけがない、直接会って確認するって言ってて。そのあと、行方不明になってしまったんです……


でも、さっき、そのジャカールがこっちの校舎に入っていくのを見掛けて! 思わず追っかけて来てしまったんです」


リュー 「で、学園の不良の巣窟に女の子一人で入って襲われた、と」


ヘレン 「あの! 一緒に行ってもらえませんか? あなたとても強いみたいだし」


リュー 「このガキ共はどうするんだ? 教師か警備員でも呼んできたほうがいいんじゃないか?」


ヘレン 「でもジャカールが、はやく行かないとまた見失ってしまいます…


…でも、そうですね、分かりました。あなたは先生を呼んできてください。私は、一人でジャカールを追います!」


リュー 「あ、おい! ちょ待てよ…! ああ行っちまったよ。しょうがない、ほっとけないか。


ランスロット…は居ないか、忙しいみたいだな。誰か居るか?」


パーシヴァル 「お呼びでしょうか?」


リュー 「コイツラ、縛り上げてくれ」


パーシヴァル 「御意」


いつもならそのままスケルトン空間に連れて行ってもらい、厳しい取り調べをしてもらうところだが……


リュー 「婦女暴行未遂とは言え、学園の生徒を拉致して拷問してはさすがにまずいか…」


仕方ないのでリューは、不良達を後で学園長か警備隊に引き渡す事にして、その場に転がしておいてもらう事にした。


意識を失っている男子生徒達が、どこからともなく現れたスケルトン兵士達に縛り上げられていくが、それを確認する事もなく、リューはヘレンの後を追った。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


ついにリューにも運命の出会いが?!


乞うご期待!



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