第487話 不良学生に襲われる女生徒

レイカ 「……どこの世界にも馬鹿は居るわ。貴族にもね」


遠い目をして吐き捨てるように言ったレイカ。


リュー 「まぁ、そうかもしれんな」


レイカ 「…行くの?」


リュー 「ああ、食い終わったから行く。あんたはどうぞごゆっくり」


女生徒1 「もうこの席には来るんじゃないわよ?」


リュー 「さぁな、気が向いたらまた来るかもな」


レイカ 「あら? 私に逢いたいからかしら? そうならまた逢いに来てもいいわよ?」


女生徒1 「そんなレイカ様!?」


リューは返事をせず、手を振りながらその場を立ち去った。


リュー 「さて、ちょっと腹ごなしに校内を散歩してみるかね。さっき西の校舎とか言ってたな、そっちのほう行ってみるか。まぁベアトリーチェは風邪で休みなら関係ないだろうが…」


    ・

    ・

    ・


『おい君、見ない顔だな。どこへ行くんだ? そのバッジはBクラスの生徒じゃないか。なに、転校生? そうか、迷ったか? そっちはZクラスの校舎だ、Bクラスの生徒が行く場所じゃない。そろそろ午後の授業が始まる、はやく教室に戻りなさい』


途中、西棟に向かうリューに学校の職員と思われる男が声を掛けてきたが、言うだけ言うとそのまま急ぎ足で立ち去ってしまった。


職員の言葉はもちろん無視してリューは古い校舎のほうへと進んでいく。


建物は確かに古い感じがしたが、まだまだ普通に使えそうである。こちらが新館のほうだろう。さらに裏手に回ってみると、裏庭はバリケードで封鎖されていた。その先が解体予定の旧校舎というわけだろう。


その時、女性の悲鳴が聞こえてきた。旧校舎のバリケードの向こう側からである。


転移を使うまでもなく、リューは軽くジャンプしてバリケードを飛び越える。


そのまま声のした方に駆けつけてみるリュー。すると、一人の女生徒が数人の男子生徒に囲まれている。


囲んでいる男子生徒はだらしなく制服を着崩して、いかにも不良生徒ですという感じである。


男子生徒1 「逃げるなよぉ、遊ぼうぜぇ?」


女生徒 「近寄らないで! アンタ達と遊んでる暇なんかないわ!」


男子生徒2 「まぁまぁ、せっかくここまで来たんだし?」


男子生徒3 「俺達と遊びたいからこんなところまで来たんだろ?」


女生徒 「アンタ達なんかに用はないわよ!」


男性生徒1 「じゃあなんでこんなとこに一人で来たんだよ?」


女生徒 「私は…ジャカールを追って…」


男子生徒2 「じゃかーるぅぅぅ? なんでぇ、あいつの仲間かよ」


女生徒 「知ってるの?! ジャカールはどこに居るの?!」


男子生徒3 「しらねぇよ!」


男子生徒1 「…いや、知ってるぞ、知ってる知ってる」


男子生徒3 「?」


男子生徒1 「でもぉ? タダでは教えられないなぁ…?」


女生徒 「くっ……お願い、どうしたら教えてくれるの?」


男子生徒3 「俺達に、ちょっとの間付き合ってくれたら教えてやってもいいぜぇ?」


男子生徒1 「大丈夫、怖いことはないよぉ、きもちーことするだけだから」


女生徒 「…! アンタ達、本当はジャカールの事なんか知らないんでしょう?! 最近西棟で女生徒が暴行される事件があったって噂、もしかして、アンタ達の仕業ね?!」


男子生徒2 「ああそうだよ? ちょっと優しくしてやったらついてきたからさ。楽しませてもらっただけさ。向こう・・・も楽しんでたぜ?」


女生徒 「最低…」


男子生徒1 「ジャカールなら今、とある場所に居るぜ? それがどこか知りたくないのか?」


女生徒 「本当に知ってるかどうかあやしい、信用できない」


男子生徒3 「もうめんどくせぇ、さっさとっちまおうぜ!」


男子生徒1 「せっかちだなぁ、でもま、手っ取り早くていいか」


女生徒 「ひっ、触らないで!」


男子生徒4 「おっと!」


女生徒は逃げ出そうとしたが、すぐに背後に回り込まれてしまった。


男子生徒5 「へっへっへつ、逃さないぜぇ」


女生徒 「くっ…、それなら!」


女生徒は呪文の詠唱を始める。魔法学園の生徒である、当然、それなりに攻撃魔法も使える。相手も当然使える可能性が高いが、しょせんは成績の悪いZクラスの生徒達である、負ける事はないと女生徒は考えたのだが…


男子生徒1 「おっと、あぶない」


男子生徒の一人が何かの粉を女生徒の顔にぶつけた。


女生徒 「…ぷっ、何?! …っくしょん!」


男子生徒1 「コショウだよ、くしゃみで呪文詠唱ができないだろう?」


女生徒は呪文を続けようとするたびにコショウを投げつけられクシャミで詠唱が中断してしまう。


それを見ながら不良生徒達はゲラゲラ笑っている。


男子生徒2 「あーあやっちまった。あれやるとる時に胡椒の香りがしてクシャミが出るからいやなんだよなぁ」


男子生徒1 「しょーがねーだろ! さっさと口を押さえちまえよ」


男子生徒達が女生徒の腕を掴んだ。


女生徒 「いやっ!」


リュー 「え~っと、手を貸したほうがいいか?」


悲鳴を聞いて駆けつけてきたリューである。


リュー 「いや、こういう場合は、確認の必要はないか」


つい冒険者の癖でリューは間抜けな声を掛けてしまったのだが、相手は魔物ではないし、女生徒は冒険者ではないのだから尋ねる必要はなかったのを思い出した。


※冒険者が魔物と戦っている場合は、むやみに手を出すと獲物を横取りする気だと思われる事があるので、手助けが必要かどうか確認が必要となる。


女生徒 「たっ助けっくしゅん! …いや、逃げて! そして、先生に知らせて! 人を呼んでっくしゅん…きて!」


男子生徒1 「おい、ソイツも捕まえろ!」


男子生徒4・5・6がリューに向かって走ってきた。逃げる素振りもないリューは簡単に両側から腕を掴まれた。


ヘレン 「ああ、何やってるのよ……早く逃げてって言ったのに……」


男子生徒4 「おとなしくしr」


リュー 「ひとつ!! 言っておくが…」


男子生徒達 「!?」


リュー 「…俺は体に触れられるのはあまり好きじゃないんだよねぇ…」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


「あなたは先生を呼んできてください、私はジャカールを追います!」


「あ、ちょ待てよ」


乞うご期待!



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