第486話 そこは公爵令嬢のレイカ様の専用席よ!

リュー 「やれやれ、俺はのんびり学生ライフをエンジョイしに来たわけじゃないんだが……休みじゃ仕方ないな」


伯爵が手を回し、リューはベアトリーチェと同じクラスに入れてもらったはずであった。「行けば会える」という話だったのだが、しかしなぜか、教室にはそれらしい女生徒の姿は見当たらなかった。


午前の授業の合間にちらっと隣にいた女生徒にベアトリーチェについて尋ねてみると、今日は休みだと言う。


仕方がないので、昼飯を食いにリューは学食に行ってみる事にした。かなり混雑していたが、よく見ると、食堂の奥のほうは空いている。ランチを購入し、リューは空いている奥のほうへ移動した。


ふと見ると、テラスに、日当たりが良い居心地の良さそうなテーブルが空いていたので、そこに座って食べる事にしたのだが…


リューが食事をしていると、女生徒のグループが近づいてきた。


豪華な格好をした、いかにもどこぞのご令嬢とその取り巻き達という感じである。


女生徒1 「ちょっとアナタ! なんで勝手にその席に座ってるの?」


リュー 「あん?」


女生徒2 「そこはレイカ様の席と決まってるのよ」


令嬢(レイカ) 「…見たことない顔ね?」


リュー 「ああ、今日転校してきた」


レイカ 「そう、転校生なら知らなかったのは仕方ないわね」


女生徒1 「さっさとどきなさい。そこは公爵令嬢のレイカ様の専用席よ! 食堂の中の席は、階級によって座っていい場所が分けられているのよ」


リュー 「食堂のおばちゃんに全席自由席だって聞いたんだが?」


女生徒2 「暗黙のルールよ、分かるでしょう? ましてやレイカ様は公爵令嬢、貴族の頂点よ。一番良い席を使うのが当然でしょう。知らなかったのなら仕方ないけど、早く席を譲ったほうがよいわよ」


リュー 「学園内では地位は関係なく皆平等だって聞いたぞ? まぁそんなにここで食いたいなら、向かいの席が開いてるからどうぞ? 相席でも構わんならだが」


女生徒1 「あなたねぇ!」


レイカ 「そうね、相席でもいいわ」


女生徒2 「レイカ様!?」


レイカはリューの座っているテーブルの向かい側に腰を下ろした。すかさず後ろに控えていた女生徒3・4・5が大きな傘を立て、レイカの食事の準備を始めた。


レイカ 「ふてぶてしい態度ね、面白いわ、あなた。公爵令嬢と聞いて動じない人は少ないのよ? あなた、どこの家の人? その度胸は、もしかして、どこか外国の王族とかかしら?」


リュー 「名乗るような家名などない、俺は平民だからな」


外国の王族と聞いて一瞬しまったという顔をした取り巻きの女生徒達であったが、リューの答えを聞いて怒りの表情に変わる。表情の変化が面白いなどと思うリュー。


女生徒1 「平民ですって! 平民が貴族と相席で食事とか、処刑モノですわ!」


レイカ 「ほほほほっ」


女生徒1はブチ切れたが、なぜか公爵令嬢は笑い出した。


レイカ 「別にいいわ、学園内では地位は関係ないって事になってるのだしね。たまには平民と交流するのも面白いものよ。


それにしても、こんな時期に転校生なんて……しかも平民の転校生? いくら優秀であったにしてもおかしいわね。察するに、どこぞの貴族の横車ってところね、さては?」


リュー 「ああ、まぁ、そうなるのかな。ユキーデス伯爵の紹介でな」


だが、それを聞いた途端、レイカの表情が曇った。


レイカ 「ユキーデス伯爵ということは、ベアトリーチェの知り合い?」


ベアトリーチェの名前が出て慌てた顔をしている女生徒達。


リュー 「ああ……ベアトリーチェにはまだ会えてないんだけどな」


レイカ 「あなた、ベアトリーチェの関係者なの?」


リュー 「関係者といえばそうなるのかな? ちょっとユキーデス伯爵に頼まれた事があってな」


レイカ 「…そう。あの娘は今日はかぜd」


女生徒1 「そう言えばさっき!」


レイカの言葉を遮って女生徒1が口を挟んで来た。


女生徒1 「あ、申し訳有りません、レイカ様」


レイカ 「別にいいわ、さっきどうしたの?」


女生徒1 「さっき、西棟校舎に向かって行くのを見掛けました」


レイカ 「ベアトリーチェが? あの娘は今日は風邪で休んでるはずだけど……」


女生徒1 「いえ、見掛けたのはヘレンです、ベアトリーチェ様はいつもヘレンと一緒に居ますから、てっきり一緒なのかと」


リュー 「西の校舎?」


レイカ 「来たばかりで知らないのね、教えてあげるわ。西棟は成績の悪い生徒達のクラスが使っている古い校舎よ。新館と旧館があって、旧館は壊れかけているので今は使われていないんだけど、不良のたまり場になってるって噂があるのよ。ヘレンはそんな場所に、一体何の用なのかしらね?」


女生徒2 「きっと、不良達のお仲間なのでは?」


リュー 「へぇ!!」


女生徒1 「なっ、なに!?」


リュー 「いや、貴族の学園でも、“不良” なんて居るんだなぁと思ってな。“不良のたまり場” なんてのもあるんだな、実に面白いな!」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


女生徒 「ひっ、触らないで!」

不良学生 「へっへっへっ怖がらなくていーんだよー気持ちー事するだけだよー」

リュー 「助けたほうがいいのかな?」


乞うご期待!



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