第481話 冒険者ランクもSですが何か?
再び木剣で切り結び始める二人。
ここまでの戦いで分かっている事だが、ゴッホの剣の腕はなかなかのものである。冒険者ならAランクは超えているだろう。
リュー 「やるな。だが……」
いくら魔法・スキル抜きの剣術勝負とは言え、普段ランスロットと稽古しているリューにとってはそれほど恐れるような相手ではなかった。ゴッホの腕がいくら立つと言っても、数万年も剣の技術を磨いてきたランスロットには遠く及ばないのだ。
徐々にリューが本気を出すにつれ、ゴッホが追い込まれていく。そしてついにゴッホの小手をリューの剣が捕らえ、手首を骨折し、ゴッホは剣を落としてしまったのであった。
ゴッホ 「ぐぅ~~~っ! ばかなぁ~~~俺が負けるなんて……こんなのありえねぇ!」
リュー 「試験は終了、合格って事でいいか?」
ゴッホ 「いや、まだだ! 俺は本当は、素手の格闘が一番強いんだよ!」
リュー 「まだやるのかよ…」
ゴッホ (くそ、せっかくフウワの前で格好良く決めるつもりだったのに……まさかこんなガキに無様に負けちまうなんて、このままだとフウワに嫌われちまう!)
そう、ゴッホはフウワに惚れており、リューの腕を試したかったのもあるが、根底にはフウワに良い格好を見せたかったという思いもあったのだ。
ゴッホは再びポーションを飲み怪我を治すと、再び訓練場の中央に出てきて構えた。今度は素手である。
リュー 「やれやれ。まぁいいけどな」
ゴッホはまだ舐めていた。体格に劣るリューである、武器なしの格闘なら勝てるのではないかとゴッホは考えたのだ。
だが、リューは素手でも十分強い。そもそも、普通の人間が、いくら強いとはいえ、竜人と素手で殴り合おうというのが無謀なのである。結局、殴り合いを始めたゴッホは、さらに痛い目を見るだけなのであった。
殴り合いが始まった。いや、殴っているのはリューだけなので殴り
だが懲りずにゴッホが立ち上がって来るので、同じことを何度も繰り返す事になる。だが、リューがそれに違和感を感じて言った。
リュー 「おい、お前……さっきから身体強化使ってるだろう?」
ゴッホはリューのパンチが強烈過ぎて耐えられず、二発目からは身体強化を使ってなんとか耐えていたのであった。(ゴッホは魔法は苦手だが身体強化は得意である。というか、身体強化を使わない限り、この世界の冒険者達のような超人的な身体能力は発揮できない。Aランク超の実力があるゴッホも、身体強化は当然常用しているのである。)
リュー 「ルール違反じゃないのか?」
ゴッホ 「ちっバレたか。別に問題ない。
リュー 「…やれやれ、もう、いいか…。かなり気を使って手加減してたんだがなぁ……」
ゴッホ 「…え?」
本気を出し始めたリューに、ボコボコにされていくゴッホ。身体強化をしていても、ダメージが蓄積していく。(それでもリューは身体強化は使っていない素のままなのだが。)
さらに、リューはゴッホの手首と襟を掴むと、そのまま背負い投げで投げ飛ばした。床に激しく背中を打ち付けられて苦しそうなゴッホであるが、それでもまだ持ちこたえていた。身体強化の
おかげであろう。
だが、リューの投げ地獄は始まったばかりである。続けて何度もなんどもナンドモ何度も持ち上げられては床に叩きつけられるゴッホ。
ゴッホ 「いっ…! うげっ…! こっ…! やめ…! まいっ! おねがぶごっ! ……! ……!」
ゴッホは降参する余裕も与えられずパタンパタンと叩きつけられ続け、とうとう泡を吹き始めていた。
ふと見ると、フウワとドロテアもドン引きしているのに気づいて、リューは手を離した。
ゴッホはすでに半分意識を失った状態でダラリと床に寝ていた。
リュー 「ええっと、今度こそ、試験は終了って事でいいか?」
フウワ 「え? …ええ、もうやめてあげて、彼のHPはもうゼロよ」
リュー 「ちょっとやりすぎたか?」
フウワ 「…いえ、彼のほうが問題のある事をしてたので、問題ないと思います」
泡を吹いて動けなくなっているゴッホに近づき、ポーションを口に流し込んでやりながら、フウワはそう答えた。
ポーションのお陰で復活したゴッホはフウワに膝枕されてなんだか嬉しそうであったが、それに気づいたフウワがすぐにゴッホを床に落とした。
ゴッホ 「いてっ! 急に立ち上がるなよフウワ…
…少年、リュージーンだったか、すまんすまん、ついムキになっちまった。しかし強いなぁお前! 身体強化も一切使ってないんだろう? 現役のAランク冒険者でもある俺に勝つなんて……」
リュー 「お前も冒険者だったのか」
ゴッホ 「お前もって事は、お前もなのか?」
リュー 「ああ、最近はほとんどまともに活動してないけどな」
ゴッホ 「ランクは?」
リュー 「Sだが?」
ゴッホ 「お前ならAランクだってじゅうぶ……今なんて言った?」
リュー 「だからSランクだよ」
ゴッホ 「エスランクゥ!?」
フウワ 「魔導師ランクがSSなんだから、冒険者ランクだってそれなりに高いのは当たり前、別に驚く事でもないでしょうに……」
ゴッホ 「…ギルドカード見せてくれるか?」
リューは黙って金属質のラメの入った黒いカードを取り出して見せてやった。
ゴッホ 「……確かに、見たことのない色のカード、だな……」
フウワ 「だいたいSランクのカード見たことあるの? ない? ないなら見たって判別つかないじゃないのよ」
ゴッホ 「そ、そりゃそうだな。しかし、Sランクとは……参ったねこれは。とんでもない奴に挑んじまったわけだ。最初っからランクを提示してくれていたら、試験なんか不要だったのに」
フウワ 「そうよねぇ~」
ゴッホ 「というか、それだけの実力があったら、学園に入学する必要なくね?」
リュー 「事情があるもんでな」
というわけで、リューは無事に転入試験は合格、魔法学園に入学する事ができたのであった。
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次回予告
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