第475話 転入試験の筆記で苦しむリュー

筆記試験が始まった。


案の定、少年は苦戦していた。


特に社会・歴史系。


「自分はこの国で生まれ育ったわけではないのだから、この国の制度や歴史について知らない」などと言い訳をしていたが、おそらく嘘だろう。そんな言い訳で試験を免除したりはしない。



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※実は、試験中、リューは念話でランスロット達に答えを教えてもらおうとしたのだが、残念ながらランスロットも答えられないのであった。


ランスロットは悠久の長い歴史を生きてきているので、大きな括りでの人類の文明の変遷などは知っているが、各時代の細かい国ごとの事情などは、いちいち知らないのである。


当然、近年のガレリアの事情なども知るわけがない。ガレリアの国民にとってはある程度長い歴史のある国であっても、ランスロットにとってはこの世界の長い長い歴史の中の一瞬の出来事に過ぎないのだ。


しかも、学校で教えている歴史というのは、国にとって都合よく改ざんされている部分があるのだ。この国の初等科の学校教育でも受けてきていなければ、どんな風に教えられているのかなど知るわけがないのである。

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少年の社会・歴史の試験の結果は酷いものであった。だが意外にも、地理の試験については思ったよりちゃんと答えられていた。


この国では地図というものが普及していない。もちろん地図は存在するが、戦略的理由で国が厳重に管理しているのである。


そのため、この国に生まれ育った者であっても、地理の問題は意外と難しいのだ。だがこの少年はかなり答えられていた。なるほど、この国の生まれではないなどと行っていたが、それは嘘ではないのかも知れない。おそらく、旅をしてきた経験が生きているのだろう。



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※地理については、リューは宰相から貰った国の地図を持っていた事が幸いした。地図を何度も眺め、しかも神眼を使って視点だけだが国内を見て回る事もあった。そのため、地理についてはこの国の一般国民よりも詳しくなっていたのだ。


それに、どうしても分からなければ、時間を止めて地図を広げて見る事さえできるのだ。


ただ、地理の試験は、地図さえ見ればすべて応えられるという問題でもなかったため、それほど高得点はとれなかったのだが。例えば、領地ごとの特産品の情報など訊かれても、地図にはそこまで記載されていないので答えようがなかったのだ。

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この少年は、社会・歴史の試験はかなり酷い結果であった。だが地理はそこそこ良くできていた。最後は数学の試験であるが……


これには驚かされた。数学の試験はほぼ満点だったのだ。それも尋常ではない速度で回答していた。天才か? まさか、カンニングではあるまいな?


私は念のため、自分でその場でいくつか問題を作って解かせてみたのだが、全てあっさり答えられてしまった。私自身、あまり計算が得意ではないので、それほど難しい問題が出せるわけではない。数学の教師を連れてくれば良かった。まぁとりあえず、カンニングではなさそうなのは分かった。



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※リューはそれほど数学が得意というわけではなかったが、この世界では足し算が基本で、引き算ができればかなり優秀、掛け算割り算ができたら天才と呼ばれる状況なのである。中学校レベルの数学の知識があれば、この世界ではトップクラスの優秀さという事になってしまうのであった。

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数学の点数の良さで、筆記試験は合格点を超えてしまった。


筆記試験で合格しないと実技試験に進めない、というわけではないのだが、あまりに筆記が悪かったら、その時点で不合格を言い渡すつもりだったのだ。


だが、そうは行かなくなってしまった。


次は実技である。


内容は、魔法と模擬戦。まずは魔法の試験からであった。


実技試験は筆記よりも試験官の裁量が大きくなる。ここはひとつ、極めて厳しい採点をしてやろうと思っていた私は、そこでとんでもないモノを見せられる事になるのであった。



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次回予告


筆記試験の結果に自信のなかったリューは、実技で点を稼ぐ必要があると判断したようです


乞うご期待!


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