第474話 貴族のコネを使った不正入学は許しまへんで
私はフウワ・ソリン。去年から学園都市ユーフォニアにあるガレリア魔法学園という学校で教師をしている。女性、28歳。担当は主に魔法の実技指導だ。
魔法学園は貴族と王族の子女を教育するために設立された。私立であるが、代々高位貴族家、さらには王族がこの学校を卒業してきた歴史があり、貴族や王家から多大な寄付を受けて運営されている。貴族・王族が国を動かしているわけで、私立はあるが、事実上、国立に近い扱いとなっている。
そんな魔法学園に、転校生がやってくるという話が耳に入った。なんでも、伯爵家の紹介だそうで、訳ありだとか。学園長の裁量で試験なしで転入が認められるという事だった。
それを聞いてすぐに私は、貴族の権力を使った不正入学では? と疑った。
聞けば、紹介者のユキーデス伯爵と学園長のワイルダーは古い友人なのだそうだ。
私達はすぐさま学園長に抗議に行った。
私達とは、私と一緒にこの学校に赴任してきた教師達である。私たちは全員、昨年、他の学校から転職してきた教師である。学園では新参者なのだが、一昨年、学園の教師や職員に汚職が多数発覚したため、古い学園の空気を一新するためという名目でスカウトされて来た立場なのだ。そのため、学園長も私達の意見を無下にはできない。
抗議に対して、最初、学園長は色々と言い訳をしていた。
貴族の子女を受け入れるのが主である魔法学園には、種々様々な “大人の事情” というものがあり、特例や例外は非常に多いのだという。古くから居る教師・職員はそれを良く知っていて無難にやってきたのだと。
だが、そんな事を受け入れるわけには行かない。言ってみれば、私達は不正を正すために呼ばれたのだ。その私達が過去の慣習に習って不正を許していては意味がない。
キチンと試験を行い、合格点を超える学力・能力があると認められなければ転入は認めない。どうしてもゴリ押しするなら公に問題提起するつもりだと伝えたところ、学園長も折れた。
そして、その生徒の転入試験が行われることになったのである。
試験官も私達転任教師のグループが担当する事にした。古い教師達にやらせると、学園長に忖度して甘い採点をしかねないからである。
受験する子供の名前はリュージーンと言うそうだ。
試験は実技と筆記。
筆記試験と魔法の実技については私が、模擬戦については同僚のマッチョ教師ゴッホが担当する事になった。
受験してくる子供に罪はないという考えもあるだろうが、このような貴族のコネを当たり前だと思っているような子供は、ロクな性格をしていないに違いない。
勝手にヒネた子供が来ると私は思い込んでいたのだが、現れたのは思ったより大人であった。童顔ではあるが、よく見れば子供というより青年と言ったほうがあっている感じである。まぁ、入学に年齢制限はないので何歳であっても問題はないのだが。
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※この時すでにリューは19歳。成長が遅い竜人の体質のため、かなり幼く見えるので、外見でだけ言えば学生の中に入っても違和感はそれほど強くはないが、そのふてぶてしい落ち着きぶりが大人びて見えるのであった。
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だが、私はがっかりした。
現れたリュージーンという青年――――少年? 雰囲気はともかく顔は童顔だし、学校に入るために受験してる子供なのだから、少年と呼んでいいだろう――――この少年を【鑑定】してみたのだ。
その結果はおどろくべきものだった。そのレベルが、なんと “1” だったのである。
あり得ない。
平民だって成人するまでにはレベル5~6程度までは上がるものだ。それが1のままとは、よほどの落ちこぼれなのだろう。
稀にだが、いくら努力してもまったくレベルが上がらないという子供が居ると聞く。この子がそうなのかも知れない。
訳ありと学園長は言っていたが、なるほど、普通に試験を受けたのでは合格できないので、転入という形で特例を狙ったというところか。
だが、身分は平民だと言うことだったが、貴族が通うこの学校になぜ入れようとしているのだろう? ユキーデス伯爵家の推薦だったそうだが……。そうか、おそらく、あまりに能力が劣っているため、廃嫡して平民に落とされた伯爵の息子なのだろう。廃嫡したものの、出来の悪い息子を不憫に思った
私は少年の顔を見ながら、自分の推論に満足していた。
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次回予告
筆記試験
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