第458話 …残念だよ侯爵
ランスロット 「そもそも、次の世界に転生しても、幸せになれるとは限らないのですよ? むしろ、この世で人に恨まれるような事をして魂に傷を残してしまった者は、その業を背負って生きていく事になりますから、次の世界でも辛い人生になる事の方が多いのです。本当に清らかな魂ならば、転生は致しませんが、そんな者は人間には居ませんからな」
リュー 「へ、そうだったのか?!」
ランスロット 「ええ、不死王様がそう言っていました。まぁ、この世界に生まれてきているのは、何らかの業を魂に刻んだ者ばかりみたいですが。そもそも清らかな魂であれば、このような世界には生まれてこないのではないかと」
リュー 「…てことは、俺も汚れた魂なのか…? そのへんの話、もうちょっと詳しく…」
侯爵 「えーい、何を、訳分からんことをごちゃごちゃ言っとるんだ! だいたい貴様! 国の権力争いには口を出さんなどと言ってたそうではないか? なぜ介入する?!」
ランスロット (詳しくは、不死王様に直接お訊ねになったほうが分かりやすいかと)
リュー (…そうしよう)
侯爵 「おい!? 聞いてるのか? なぜ王に肩入れする? 儂の誘いには乗らなかったくせに!」
リュー 「うるさいなぁ。ああ……基本的には権力争いなどには加担しないつもり、だったけどな。
だが……
自分の “友人” が困っていたら、やはり助けたくなるだろう?」
エド・ドロテア 「リュー……!」
リュー 「基本的には、くだらない権力争いや戦争に加担する気はないさ。だが、俺に直接手を出してきた奴に対しては全力で抵抗する。当然、俺の家族や仲間に手を出された場合も、な」
侯爵 「エド王は既にお前の仲間だと言う事か」
リュー 「さあ、どうだろうな?
まぁやっぱ、生きていれば、それなりに知り合いも増えてくるもんだよなぁ…」
ドロテア 「知り合い…。友人から一気に格下げになったな」
リュー 「それに……やっぱり戦争に積極的なのは抵抗があるんだよな。(日本人だったからな。)
もちろん、正しいとか間違ってるとか言うつもりはないけどな。物事の正邪善悪など、ちっぽけな人間が勝手に決めて騒いでいるだけだ。立場視点が変われば正しさも変わる。
だから『これが絶対正しい』なんて俺は言うつもりはない。
だが、強いて言えば…
エド王のやり方のほうが俺の好みだって事だな。俺も、もうしばらくこの国に居るつもりなんでな。戦争大好きな偉そうな貴族が支配する国よりは、エド王が治めている国のほうが住みやすそうだろ」
侯爵 「ふん、甘い王の下では国が……む! くそっ、離せ、無礼者め! 儂は侯爵だぞ!」
話している間にも、王の騎士達が侯爵を取り囲んでおり、宰相の合図とともに侯爵は拘束されたのであった。
エド王 「……残念だよ、
反対意見を言う者は貴重だと思っていた。
しかし…クーデターまで起こした者を、赦すというわけにも行かない…」
騎士達に連行される侯爵。ただ、最後に立ち止まり、振り返って言った。
侯爵 「この国は敵対国家に囲まれている。強くあらねばならん。帝国の脅威に対抗するためにはな…。舐められてはならんのだよ。そのためには何をおいても、力が、武力が重要なのだ。エド王のように甘い考えでは、いずれ攻め滅ぼされますぞ……」
エド王 「国を守る武力は大切だ。そこはしっかりやるつもりだよ」
侯爵 「守っているだけではいずれ綻びができ、そこから決壊するものだと何度も言っているだろうに…まぁどこまでやれるか、お手並み、あの世から見ていますぞ……」
反乱軍の一万の兵士は、その装備や荷物ごと、一瞬にして消えてしまった。こうして、突如発生したクーデターは、2日で終了したのであった。
突然、王都の中に騎士たちが大挙して入ってきて、それが忽然と消えてしまったのだ。戦闘の痕跡も死傷者も残っておらず、王都の人々も現実感がなく夢でもみていたかのようであった。
そのため、後日、あの軍勢はクーデターを企てた貴族が見せた幻術だった、などという噂が市中に広がった。その幻術を、さらに上回る能力を持った王に仕える幻術士が打ち破ったのだと。
幻術であれば、骸骨の兵士が顕れたのも、一万の軍勢が突如として消えてしまったのも不思議ではないと、その噂は妙な説得力を持って広まっていったのであった。
エド王 「リューに大きな借りができてしまったな」
リュー 「ちゃんと料金払ってもらうぞ、俺は冒険者だからな。
仕事の押し売りのようで申し訳ないが、俺は依頼を受け、報酬をもらって仕事をした。そうだろう?」
エド王 「ああ、そうだな。だが、実に有り難い押し売りだった。ありがとう。依頼料はもちろん弾む」
リュー 「そうしてくれ」(ニヤリ)
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次回予告
庶民の中で育った王
乞うご期待!
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