第459話 逃しませんぞ?

近代の魔法王国ガレリアは、近隣の国を侵略・併合しながら大きくなってきた。魔法王国と言われるだけあって、他国よりも優れた魔法の力を強みとして、いずれ、他国をすべて併合して一大帝国を築く、世界制覇を目標とする国として認知されていた。


だがある時、不慮の事故で歴代最強とも言われた前国王ビンガム・ジョージ・ガレリア十三世が戦死してしまった。


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※正しい道を見極められる王家の道標スキルがありながら、何故戦死そうなったのか? 国を守るために、王が交代したほうがよいとスキルが判断したわけでもなかろうが、国家の未来を判断するためにスキルを使っていた先王は、己が危険を顧みず、勇猛が過ぎた結果だったのかも知れない。事実、先王は戦死したが、その時の戦にはガレリア軍が勝利したのであった。

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実は、ガレリアには覇権を争う強力なライバル国があった。その国はガレリアに匹敵するほど強力であり、その国の存在のためにガレリアの世界制覇はなかなか進まないのであった。


そしてその国は、ビンガム王の死の情報をいち早く掴み、ここぞと混乱に乗じてガレリア国境に攻め込んできたのだ。


王の息子達は、我先にと競って戦場に立った。ガレリアは実力主義である。この戦で功績をあげた者が王位を継ぐ事になるだろう。


だが、かろうじて国境は守りきったものの、ライバル国は非常に強力で、ガレリア軍には甚大な被害が出てしまった。しかもその戦で、王の息子達は全員死亡してしまったのである。(息子たちは王家のスキルの力があまり強く発現していなかった。)


王位継承権を持つ王子たちがすべて居なくなってしまったため、王弟の庶子であったエドワードがその跡を継ぐ事になったのである。


こうして、エドワード・アルバイン・ガレリア王が誕生したのだ。


即位した彼は、これまでの、戦争により世界を制服する事を目指していた方針を転換、平和を維持し内政を充実させる事を重視したのであった。






王弟は既に数年前の戦争で死亡しているが、その王弟が昔、戯れに平民のメイドに手を出しできたのがエドワードである。


だが、夫の火遊びでできた平民との間の子エドワードは、王弟の正妻に疎まれ、王宮から遠ざけられた。そのためエドワードは、地方都市で庶民と同じような生活を送ってきたのだ。


そこでエドワードは、戦争が長く続いた事で荒れ果てた国土と疲れ果てた民の姿を見て心を痛めており、方針の転換は王となってからの大英断であった。


だが、強さこそすべてと信じ、覇権を求めてきた武闘派の貴族たちは、いきなりの方針転換に納得していない者も多かった。平民出身で戦争の経験もない “ぽっと出” の王を馬鹿にする者も多く、エド王に反発して従わない者も多かったのだ。


反感を持った貴族の中には、王を亡き者にして、新たに王を迎え、再び覇権を目指そうと考える者も居た。それらをまとめ上げたのがグリンガル侯爵だったのである。




  * * * * *




クーデター鎮圧後


エド王は国の再編に追われる事となる。国内の貴族の三割以上が失脚する大再編である、簡単な事ではない。


ドロテア 「うーむ、正直、全員殺す事はなかったんじゃないか? 処刑は首謀者と指揮していた貴族だけで。配下の騎士達は国にとっても貴重な戦力だったんだが」


リュー 「指揮官級の貴族だけを選別して殺すなんて面倒な事してたら、即時解決なんてできなかったろ」


ドロテア(ジト目) 「いいや、リューおまえならできたんじゃないのか……」


宰相 「侯爵も、それなりの覚悟で望んでいたようですしね。仮に侯爵を取り押さえて脅しても、反乱軍を解散させる事はできなかったでしょう」


エド王 「うむ、戻らなかったら攻撃を再開するよう指示を出して来たと言っていたからな。侯爵は、既に指揮権の引き継ぎまで済ませて来ていたのだろう」


ドロテア 「だがな、これだけの貴族と騎士・兵士が一気に失われてしまうと、大変だぞ、これから、色々と……」


リュー 「まあ、がんばってくれ!」


ドロテア 「他人事か! リューも少しは手伝ってくれよ?」


リュー 「国を運営するのは王や宰相の仕事だ。俺には関係ないし、興味もないな。そもそも俺には政治的な才能はない。そういうのは専門家であるあんたらに任せるよ」


エド王 「…まぁ、それが王の仕事だ。なんとかしてみせるさ」


ドロテア (まぁ、ガーメリア達が戻ってきたら全部押し付ければいいかぁ)


宰相 「逃しませんぞ?」


ドロテア 「う……」


いつのまにか後ろに立っていた宰相にしっかりと裾を握られているドロテアであった。



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次回予告


反乱貴族たちの末路


乞うご期待!



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