第457話 クーデター消滅

侯爵 「わずか2~3時間でダンジョン攻略など……相変わらず、信じられん話ばかりだな、お前は!」


リュー 「俺は転移が使えるんだ。ダンジョンの最下層まで直接転移してしまえば、短時間での攻略も難しくはないだろう?」


侯爵 「最下層のボスモンスターを倒せれば、だろうが」


リュー 「それも、転移を活用すれば簡単だ」


侯爵 「簡単か、化け物め。だが、お前一人が駆けつけてきたところで、もはや状況はひっくり返せんぞ?


いかにお前が規格外の移動能力を持っているとしても、三万もの兵士が相手ではどうする事もできまい?」


リュー 「別に……? 一人でできるもん!」


ドロテア 「もん?」


リュー 「…あ、いや、おほん……


まぁ、実際、一人でどうにかしろと言われたらできなくはないんだが、今回はあえて…


ランスロット、頼む」


リューの横に姿を顕したランスロットが答えた。


ランスロット 「御意! では……


…配置、完了です」


リュー 「おお~壮観だなぁ」


窓のほうに移動して、城の外を眺めたリュー。慌てて他の者達も窓に駆け寄る。そこから見えたのは……


城壁の上、そして、城壁と敵軍の間にズラリ立ち並ぶスケルトン兵士達の姿であった。


リュー 「一度、やってみたかったんだよねぇ、スケルトン兵士総出演みたいの?」


隊列を組む骸骨兵士達も心なしか誇らしげな様子に見える。


侯爵 「あ、アンデッドの軍団だとぉ~」


顎が外れそうな勢いで驚いている侯爵であったが、少しして我に返ったようだ。


侯爵 「だ、だが、まだ儂の軍勢のほうが数が多いようだが?! 多少魔物の兵士が増えたとて、勝つのは儂のほうじゃ!」


ランスロット 「数なら、我々のほうが多いですよ? ざっと見たところ……あなたの軍勢はせいぜい一万人というところですか。先程三万人とか言ってましたが盛ってましたね? でも、我々の軍団レギオンの兵士は、なんなら百万人でも動員できますので。ちなみに盛ってない、むしろ控えめな数字で言ってます」


侯爵 「ひゃ、ひゃく万……?」


ランスロット 「しかも、末端の兵士でも、冒険者で言うAランク級の戦闘能力を持っています。降伏するなら今のうちですよ?」


侯爵 「う、嘘だ……、ハッタリだ!」


ランスロット 「やれやれ、信じられませんか、困りましたね」


リュー 「勝てはしない、素直に降伏すれば命はたすけてやるが?」


侯爵 「ふ、バカめ、降伏などする腰抜けはおらぬ。クーデターを起こしたのだぞ、負ければ待っているのは死罪なのだ。全員、勝つと信じて決死の覚悟で望んでいるのだ」


リュー 「勝つと信じて決死の覚悟? なんか矛盾してる気もするが、負けたら死ぬのは覚悟の上って事だよな? じゃぁいいか、ランスロット、攻撃開始だ」


ランスロット 「御意」


次の瞬間、グリンガル軍の全ての兵士の横や後ろに寄り添うようにスケルトン兵士が出現する。それぞれが手に剣や槍、斧などの武器を持っているが、出現と同時にそれらはグリンガル軍の兵士の身体を刺し貫いていた。


バタバタと倒れていく人間の兵士・騎士達。地面が血で染まっていく。


亜空間から出現する完全な不意打ちに、対応できた者は数名程度しか居なかった。その数名も、一撃目は躱す事ができても、二撃目で全員始末されてしまったのだが。


ランスロット 「殲滅完了しました」


リュー 「早いな、もう終わりか。多少被害を与えたところでもう一度降伏勧告をしようかとも思ったんだが、その余裕もないほど一瞬だったな」


ランスロット 「相手にもなりません」


侯爵 「……は?」


ランスロット 「では、全員、養成所送りでよろしいのですね?」


リュー 「ああ、血液もちゃんと消しといてくれよ」


ランスロット 「了解です、血の跡も残しません」


侯爵 「……殺した、のか…? あれほどの数の兵士を? いずれも一騎当千の騎士達だったのだぞ? それを一瞬で……」


リュー 「だから言ったろうが、勝ち目はないと」


侯爵 「貴様……アッサリ大量虐殺を実行しおって、罪の意識はないのか?」


リュー 「クーデター起こしておいて何を。決死の覚悟で望んでたんだろ? 負けたら死刑になる予定だったんなら同じだろうに。


それに、死は、終わりではない。人は死んでも、その魂は永遠に生き続ける。人は死んだら、次の世界へと向かうだけなのだよ。それを知っていれば、今回の人生も、終わってみればまた、一瞬の夢幻…


だが安心しろ、死んではいない。いや、死んでるか。


死んでるけど、全員スケルトンとして第二の人生を送らせてやる予定だ。


軍団レギオン増員作戦キャンペーンってな。兵士は随時募集中~、条件は応相?」


ランスロット 「未経験可、研修制度有り。手取り足取り丁寧に教えます。研修期間は、早い者でも百年くらいが掛かるでしょうが」


リュー 「さすがに “経験者” は居ないだろうけどな」


侯爵 「まさか! 殺してアンデッドの兵士にすると言うのか、なんて酷い事を…」


ランスロット 「何をおっしゃってるのです? 酷くなんかありませんよ~、スケルトンになれば、食べることも眠ることも生殖行為も必要なくなります。病も老いもない、永遠の楽園が待っているのですぞ? 兵士達は皆、なって良かったと言っていますよ?」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


…残念だよ侯爵


乞うご期待!



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