第451話 おまえに兄貴と呼ばれる覚えはない
サリオ 「くそ、スッカラカンになっちまった…」
リューに金を払ったことで、サリオは所持金がほとんどなくなってしまったのだ。
サリオ 「お前ら、いくらか持ってるか?」
ラリオ 「…俺達もほとんどないんだよ、だから、つい、出来心であんなことを…」
サリオ 「バカが、犯罪だぞ。捕まったらどうなるか」
ワリオ 「こんな田舎の村なら騎士隊もいねぇし大丈夫かと思ってよ…」
サリオ 「叩き出されただけで済んでよかった、上に訴えられていたら、お尋ね者になってたところだ」
ヤリオ 「……で、出禁、さ、三年は長いんだな」
サリオ 「身から出たサビだ。三年牢屋に入れられるよりはマシだろう。三年間、いや、三年と言わず、一生悪さしないで真面目に働け!」
ヤリオ 「そんなぁ…」
サリオ 「分・か・っ・た・な?!」
ラリオ・ワリオ・ヤリオ 「はい……」
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だが、骸骨飯店の料理を諦めきれなかったヤリオは、さらに遅れて到着したもうひとりの兄貴に泣きついたのだった。
この兄は、本当の兄弟ではないが、リオ兄弟達と義兄弟の契を結んだ仲だった。そして何より、長男のサリオがまったく歯が立たないほどの破格の実力の持ち主で、Sランク冒険者なのである。その強さは鬼神のごとしで、リューがいくら強くても敵わないだろうとヤリオは思ったのだ。
最初、話を聞いたこの超兄貴は、弟分達の不始末など、自分で責任を取れと相手にしなかったのだが、相手がSランクと聞いて、ちょっと興味を示したのだ。
そして、店を訪ねた超兄貴。
店員に声を掛け、オーナーを呼んでもらう。
リュー 「今度は誰だ……?」
『やっぱり! 兄貴! また会えたな!』
リュー 「お前は……誰だっけ?」
『俺だよ俺! 忘れられてるとはな! さすがは兄貴だぜ!』
リュー 「ああ、いや、顔は憶えてたんだが、名前がな、出てこなかったんだ。たしか、デビルだっけ?」
ゼヒロ 「ゼヒロだっつーの! 確かに悪魔みたいな顔してるけどよ~」
ゼヒロは豪快に笑った。
ゼヒロ 「Sランクの冒険者が居るって聞いてな、もしかしたらと思ったら、やっぱり兄貴だった! なんか、弟分達が迷惑掛けたみたいだな!」
リュー 「お前に兄貴呼ばわりされる憶えはないが? だいたいお前のほうが大分歳上だろうが」
ゼヒロ 「まぁそう言うなってぇ! 俺より強いんだから、兄貴と呼ばせておくれよってなもんだ!」
ヤリオ 「へ、超兄貴より強いって、まさか……」
ゼヒロ 「ああ、以前戦ってな、負けたんだよ。歯が立たなかった。俺の事を超兄貴と呼ぶんだったら、この御方は超超兄貴だぞ?」
ヤリオ 「そ、そんな、Sランクの超兄貴が? ま、負けた?」
ゼヒロ 「元Sランクな。冒険者やってたのは昔の話だ、とっくに引退した。まぁ現役であっても兄貴には勝てなかったと思うがな」
ヤリオ 「サ、サリオ兄が、ゼヒロの兄貴と連絡とれなくなって心配してたけど、い、引退したのかぁ…」
ゼヒロ 「ああ、その後、博打で借金作ってな、奴隷やってたもんでよ」
リュー 「それで、奴隷ギルドの戦闘奴隷がなんでこんなところに?」
ゼヒロ 「戦闘奴隷からは開放されたんだよ。兄貴が色々と奴隷ギルドを改革してくれたおかげだな」
リュー 「お前も違法奴隷だったってわけか」
ゼヒロ 「ああ、ちゃんと計算したら俺の借金はとうに返済し終わってたんだと」
リュー 「で、こんなド田舎に何しにきたんだ? また冒険者を始めるのか?」
ゼヒロ 「いや、故郷に帰ろうかと思ってな。なんか
リュー 「故郷ってどこだ? この先には国はないって聞いたが」
ゼヒロ 「この先は魔境っていわれてるけど、その向こう側にはまた国があるんだよ。魔境を突っ切って行くのが最短距離だからな」
リュー 「ふ、そんな事ができるのはお前だけだろうな」
ゼヒロ 「兄貴も一緒に行かねぇか? 俺たちが組んだらどこの国に行ったって無敵だぜ?」
リュー 「俺は一人でも無敵だよ」
ゼヒロ 「かぁ、そんなセリフ、痺れるねぇ! まぁ、兄貴はそう言うだろうと思ったさ」
リュー 「まぁ飯でも食っていけ。しばらくは街にいるんだろう?」
ゼヒロ 「兄貴も冒険者を辞めたのか?」
リュー 「辞めては居ないが、他にも色々とやりたいことがあるんでな」
ゼヒロ 「そっか、そうだな。人生、色々楽しまねぇとな!」
ゼヒロはその後、リューの店の食材を一人で食べ尽くしてしまい、店は早終いせざるを得なくなるのであったが。
ゼヒロはこの村でしばらく魔物を狩って金を稼いだあと、食料を大量に買い込んで魔境の奥へと去っていったのだった。
ゼヒロ 「じゃーな、兄貴! またどっかで会おうぜ!」
リュー 「嵐みたいに騒がしいヤツだったな……」
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骸骨飯店は、しばらくの間は大繁盛であったが、時が経つにつれ、徐々に客足も落ち着いてきた。
これはリューの想定内である。なにせ、メニューが少ない。最初のうちは毎日食いに来ていた客も多かったが、どんなに旨い料理でも毎日食っていると慣れてきて飽きるのは当然であろう。
それでもある程度は安定して客が入るので、経営は順調に行きそうである。
仮に赤字になってもリューが外で稼いできて補填すれば問題ないだろうが、それでは健全な経営とは言えない。
リューが居なくても店だけで採算が取れる、持続可能な店にしたかったのだ。そしてそれは成功したようだ。
次は、さらに日本にあった別の料理を店で作れるように考えていくつもりであった。
余談だが、食いしん坊のワリオは、その後リューの店の料理を食べる事に成功している。
サリオはAランクの中でも腕が立つ方なのだから当然ではあるのだが、弟達も全員狩人としてはなかなか優秀で、ゼヒロが去った後も自分達だけで魔物を狩ってきて十分稼げるのだった。
そして、ワリオはその金で人を雇い、皿持ち込みでリューの店に行かせて、テイクアウトで売ってもらう事にしたのだ。
リューもそれは知っていたが、出禁は破っては居ないし、その程度は目をつぶってやる事にしたのであった。
リュー 「テイクアウトかぁ…
…そうだ、新メニューを追加しよう。
カツサンドだ」
ヤリオ 「こ、これも、う、美味いんだな……」
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次回予告
指名依頼
再びライムラの街へ
乞うご期待!
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