第449話 兄貴来店

リューは、騒いでいた男三人、ラリオ・ワリオ・ヤリオを、店の外……だと並んでいる客に迷惑になるので、村の外に放り出す事にした。


トナリ村の門の前に魔法陣が浮かび、突然ボロボロの状態の三人とリューが現れ、門番が驚く。


門番 「どっ、どうしたんだ?」


リュー 「店で金を払わずに暴れた奴が居てな。ちょっと懲らしめてやったんだ」


門番 「店? ああ、アンタは! 新しくできた店の!」


聞けば、門番も店ができてから既に何度か通っているそうで、リューの話だけで事情をすぐに察したのであった。


門番 「この村は、外から冒険者が集まってくるからな。問題起こす奴も多いんだよ…」


ラリオ 「す…みませんでした……もう、じばせん……」


『お前ら、どうした?!』


そこに、一人の旅の冒険者がやってきて声をかけた。


ラリオ 「あ…? 兄貴!」


やってきたのは三人の兄、長男のサリオであった。


サリオ 「どうしたんだ、ボロボロじゃないか? 誰にやられた?」


ラリオ 「それが…」


門番 「ああ、そいつらは村の店で悪さして叩き出されたらしいぞ」


リュー 「お前らは金輪際店には出入禁止だ。もし破ったら、次は生かしてはおかないから覚悟しておけ」


リューを見るサリオを無視してリューは再び転移で消えていった。


門番 「ひゅー、転移魔法か? さすが。しかし、お前らも馬鹿だねぇ、よりによって、Sランクの冒険者の店で暴れるなんて……」


ラリオ 「へ、Sランク…?」


門番 「ああ、Sランクの冒険者が村に来たって話題になってたろ? ってお前ら見ない顔だな? なに? 昨日村に来たばかり? だから知らなかったのか。ま、どっちにしても、悪さしなけりゃ良かっただけだな」


サリオ 「お前ら、一体何をしたんだ?」


ラリオ 「実は…ワリオの奴が、旅費を博打で全部すっちまってよ。金がなくなったもんで……」


サリオ 「それで店で無銭飲食しようとしたのか?」


ワリオ 「こんなちっぽけな村だし、ちょっと脅せば飯だけじゃなく、金も取れるんじゃないかと思ったんだけどな、出てきた店のオーナーってのが化け物で…」


サリオ 「相手を見極めず喧嘩を売って痛い目を見たってわけか…馬鹿やろうが」


ラリオ 「そいつ、Sランクだって、本当なのか…?」


門番 「ああそうだよ。先日、冒険者ギルドで腕に自信のある冒険者達が挑戦したらしいが、全く相手にならなかったそうだ」


サリオ 「なんでこんな田舎の村にそんな高ランクの冒険者が?」


門番 「こんな村・・・・で悪かったな! 信じるも信じないも勝手にすればいい。村に入りたいなら入場料は銅貨一枚、冒険者は身分証見せてくれたら無料だよ」


サリオは弟達にポーションを飲ませたが、全身ボロボロで何箇所も骨が折れていたため、持っていた低級ポーションでは完全には治らなかった。


サリオ 「随分手酷くやられたようだな。手持ちのポーションを使い果たしてしまった。これは、挨拶に行かないといかんようだな…」


ラリオ 「兄貴、やめといたほうがいい、アイツはヤベェって…」


サリオ 「そうもいかんさ、ヤバい奴ならなおさらな…」


全快はしなかったものの、なんとか歩けるようになった弟達ともに、サリオは村に入っていった。


ヤリオ 「だ、だけど……美味かったんだな……」


ワリオ 「ああ、料理の味はなかなかのもんだった、また食いてぇな」


ラリオ 「だが、出入禁止になっちまったな……」


ワリオ 「そんなもん気にしねぇで……アイツが居たんじゃ無理か…」


ヤリオ 「あ、謝ったほうが、いいんだな」


ラリオ 「謝って許してくれると思うか?」


ワリオ 「アイツ容赦なかったもんなぁ……」


サリオ 「そんなに美味かったのか?」


ラリオ 「ああ、今まで食った料理の中では一・二を争うレベルだな」


サリオ 「…俺も食ってみるか」


ラリオ 「無理だろ、出入禁止だし…ってまさか」


サリオ 「ああ、出入禁止はお前たちだけだろ、俺は関係ない」


ヤリオ 「あ、兄貴だけ食う気か?! ず、ずるいんだな!」


サリオ 「仕方ないだろ、自分でしでかした事の結果だ」


ヤリオ 「お、俺はただ飯くってただけなんだな」


サリオ 「二人を止めなかったんなら同罪だろ」


ヤリオ 「そ、そんなぁ……」


サリオ 「とにかく、お前たちもこんな目に合わされたし、一度挨拶に行かないといかんだろう」


ラリオ 「兄貴? アイツは手強いぞ? とんでもない強さだった」


ワリオ 「さっき、門番がSランクとか言ってなかったか?」


サリオ 「…大丈夫だ。お前たちも一緒に来い」




  * * * * *




再び、リューの店の前。


2~3人の客が入店待ちで並んでいたが、サリオは最後尾に並んで大人しく順番を待って入店した。


そして食ってみた料理は、たしかに美味かった。弟達が言っていたとおりだ。


サリオ 「まったく、弟達は馬鹿な事をしたもんだな。俺も出入禁止になるかも知れないが、仕方がないか……。


おい! この店の主と話がしたいんだが?」


サリ 「オーナーに? 何の用だい?」


昼過ぎに、妙な冒険者の男三人に絡まれたばかりなので、サリは警戒しながら訊く。


サリオ 「俺の名はサリオ。今日、ここの店主に暴行を受けたラリオ・ワリオ・ヤリオの兄だ」


サリ 「…っ、仕返しに来たってわけ?! 言っとくけどここのオーナーはとんでもなく強いんだからね? だいたい、あの男達が代金も払わずに、逆に金を脅し取ろうとしてきたんじゃないの!」


早口でまくしたてるサリ。


サリオ 「待て待て待て、落ち着け。別に仕返しに来たわけじゃない。むしろ逆だ、謝りに来たんだ。ほら、あの三人の分の代金もちゃんと払う」


サリオは金貨をテーブルの上に置いた。


サリオ 「店主と話をさせてくれないか? 謝罪をしたいと伝えて欲しい」


サリ 「へ……、あ…、ああ! ちょっと待ってね」


サリは慌てて店の奥へと走っていった。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


Sランクにどこまで通用するか、試してみたいんだ


乞うご期待!



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