第447話 誠意を見せろ

店に入ってきたのは男三人。昨日、村にやってきた冒険者の兄弟、ラリオ・ワリオ・ヤリオだった。


店の前には入店待ちの数人の列ができていたのだが、そのラリオ達は無視して店に入っていった。


たまたまタイミングよく(悪く?)食事を終えて席を立った客が居り、ラリオ達はそのままそこに座ってしまった。


『おい、順番を守れよ!』


次は自分の番だと思っていた客が文句を言う。


ラリオ 「ああん?!」


ワリオ 「なんか文句あんのか?!」


強面の大男に凄まれて、客の村人は関わっちゃいけないタイプだと判断、大人しく引き下がった。


ラリオ 「おい、客だぞ! 飯を出せ!」


店員サリ 「はーい、ちょっと待ってねぇ……!


……ハイおまたせ! これメニューね。ウチはカツとカレーしかないよ」


まだ仕事に慣れておらず、給仕だけで精一杯のサリは、前の客の皿を厨房の洗い場まで運んでいて、割り込みに気付かず、普通に対応してしまった。


ラリオ(メニューを見ながら) 「なんだ? 料理はこれだけか? 聞いたことねぇ料理だなぁ」


ヤリオ 「う、美味そうな匂いがしてるんだな……」


ワリオ 「なんでもいい、おすすめの料理をさっさと持ってこい!」


店員サリ 「じゃぁカツカレー三人前でいいね? ああ、ごめん、ちょうどカツがなくなってしまったみたい。すぐに揚がるからちょっと待ってね」


ラリオ 「さっさとしろよ!」


ワリオ 「何ジロジロ見てやがんでぇ! ぶっ殺すぞ!」


大声で騒ぐラリオ達を迷惑そうに見ていた周囲の客は慌てて目を逸らした。


ワリオ 「遅ぇぞ! まだか!」


サリ 「カツ揚がるのに五分かかるからちょっと待って! てか、まだオーダーしてから1分も経っていないじゃないか。気が短過ぎ…」


ワリオ 「あんだてめぇその態度は! ぶっ飛ばすぞ?」


ラリオ 「おめえ! 名前は?!」


サリ 「あん…? アタイはサリだけど? 怒鳴ったって料理のスピードが上がったりはしないんだから、大人しく待ってなよ」


ワリオ 「サリか、てめぇの態度、覚えて! 後で店のオーナーにチクってやるからな!」


サリ 「……」


凄む男達。睨まれながら長い5分が過ぎ、やっとカツが揚がり、サリは少し青くなりながらも気丈な態度で料理を男達の席に運んだ。


ワリオ 「…なんだこれ? …食えんのか?」


ヤリオ 「匂いは美味そうなんだな…」


ラリオ 「…俺は知ってる、以前一度だけ食ったことがあるぞ。カライレスとかなんとかいう料理だ。遠い異国の料理らしい」


サリ 「カレーライスだよ」


ワリオ 「この店は異国の料理を出す店なのか…」


ヤリオ 「……! う、まいんだな!」


ラリオ 「う…む。思ったよりやるな…」


カツカレーを食い始めた男達は、あっという間に平らげてしまい、さらにおかわりまでした。一人三人前も食って食事を終えた男達だったが…


そこでいちゃもんを付け始めた。


ラリオ 「おい! 飯の中から虫が出てきたぞ! この店では客に虫を食わせるのか!」


サリ 「な、そんなわけ……言いがかりよ! そんな、皿からはみ出すほどのデカイ虫が入ってたら出す前に気づくっての! アンタ、今、自分で入れたんでしょ!」


ワリオ 「何~? この店は虫入りの料理を出しておいて、客のせいにしやがるのか?」


ラリオ 「おい、俺が虫を入れたって証拠でもあるのか? あるなら出してみろ」


サリ 「え、それは……」


ラリオ 「ないなら……証拠もなく俺達の名誉を傷つけた事、どう責任とる気だ?!」


ワリオ 「そうだ! 証拠出してみろよ! オラ!」


サリ 「そんな事……」


ヤリオ 「は、はやく、謝ったほうが、いいんだな」


ワリオ 「オラオラどうした? 証拠は? 出せないんなら? どうすればいいんだ?」


サリ 「く……、す、すみませんでした……」


ワリオ 「ああ? 聞こえねぇぞ?!」


サリ 「すみませんでした!」


悔しそうに頭を下げるサリ。


ワリオ 「最初からそうやって素直にしてりゃあいいんだよ!」


ラリオ 「いや、俺は別に、言葉だけの謝罪なんていらねぇよ。そんなの腹の足しにもならん。謝罪ってのは、上っ面の言葉なんかよりも誠意が大事なんだ、分かるか?」


サリ 「…?」


ワリオ 「誠意を示す一番簡単な方法は、そうだなぁ…金貨十枚ってところかな?」


サリ 「え?」


ワリオ 「今日のところは “迷惑料” だけで飲み込んでやるよ」


サリ 「そんなの、出せるわけ……」


ラリオ 「なんなら、この店の料理は虫が入ってるって宣伝して回ってもいいんだぜ?」


ワリオ 「それとも、ひと暴れして店ぶち壊してやろうか?」


『どうやらデカイ虫が店内に入り込んだみたいだなぁ…?』


その時、店の奥からリューが出てきたのであった。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


サリ 「きっとお金を渡して解決するんだろうね、仕方ないよね…」


乞うご期待!



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