第446話 骸骨飯店オープン!

店の場所は、今リュー達が住んでいる家の隣にした。周囲の土地をリューが買い占めているので問題ない。建物は、スケルトン建設部に頼んだら、あっという間に建ててくれた。


ただ、スケルトン建設部にお任せで店を作らせたら、骸骨をふんだんにあしらったオドロオドロしい雰囲気の店にされてしまった。


ランスロットは絶賛していたが……


リュー 「全部却下だっ!」


リューのイメージする食堂とはかけ離れているので仕方がない。


とはいえ、せっかく頑張って作ったのに、悲しそうなスケルトン建築部の職人達の顔をみていたら(骸骨なので表情は分からないのだが、なんとなく表情が伝わってくるのである)、全部やり直しさせるのも忍びなくなって。部分的に直せる範囲は直したが、ある程度は許容せざるを得なかったのであった。


店内のデザインや什器類はまだ手つかずだったので、そちらはリューが張り付いてデザインをいちいち指定してやったので、割と無難な感じに収まったが、その間に、骸骨のトレードマークがついた「骸骨飯店」の看板が店にかけられていた事にリューは気づかないまま、店をオープンさせてしまったのであった。


リュー 「らぁんすろぉっとぉ~???」


しかし、もう開店してしまったし、涙目?で駄々を捏ねるランスロットに根負けして、そのまま営業を開始することにしたのであった……


リュー 「なんだってそう骸骨にコダワリがあるんだよ……」


ランスロット 「可愛いデザインじゃないですかぁ?」


ランスロットに言わせると、同じ骸骨であっても、かわいい骸骨やハンサムな骸骨、精悍な格好いい骸骨など、色々と違いがあるのだそうだ。一応、店のマークには、かなりかわいいデザインの骸骨を選んでくれたらしい。


リュー 「正直、よくわからん…


…まあいいか、もう客も入ってるしな」






◇骸骨飯店


メニューはカレーとカツしかない。


・とんかつ

・オークカレー

・カツカレー

・カツ丼

・カツ定食

 (サラダ・スープ付。パンまたはライスが選べます。)


カツ丼のご飯なし=カツ煮というメニューも考えられるが、そこはリューのこだわりで、カツ丼オンリーとなった。


また、これもリューのこだわりで、カツ定食、カレー用、カツ丼用のカツはそれぞれに厚さを変えてある。特にカツ丼のカツは、薄切りのほうが美味いというのがリューの拘りなのであった。肉を薄切りにするのはなかなか難しいのだが、半分凍らせてしまえば簡単である。(ヴェラは全属性魔法が使えるので当然肉を瞬間的に凍らせる事は簡単であった。)


店は開店当初は連日店の前に行列ができる状態になってしまっていたが、問題もあった。


ヴェラ 「ちょっと! アタシを殺す気?! 忙し過ぎ!」


そう、対応できる料理人が居ないのである。


料理はヴェラに頼んで作ってもらっていたが、ヴェラ一人に頼った状態のまま見切り発車してしまったので、当然立ち行かなくなる。


リューももちろん手伝ったし、モリーとアリサ、レスターとアネットまで動員して対応に当たったが。そもそもヴェラは料理は上手だが、料理人になりかったわけではないのだ。教会のほうの治療院の仕事のほうがむしろやりたい仕事である。今のところは治療を希望する患者は多くはないが、それも徐々に増えていっているので、そのうち兼業は無理になるかもしれない。


リューは慌てて村長ケイトに頼んで従業員を募集した。村長のツテであちこちに声をかけてもらう。また、村長から冒険者ギルドや商業ギルドなどにも声をかけてくれたようだ。


なかなか新しい仕事は少ない田舎の村という事もあるのだろう、思ったより反響があり、かなりの人数が応募してきたため、一人ひとり面接し、合否を後で発表する形にした。


リューは日本で生きていた時は常に雇われる立場であった。時に理不尽な上司や経営者の言動にコノヤロウ死ねよと思うこともあった。そんな中、やはり働くなら人を雇い使う立場になってみたいと思っていた。独立開業して自分の店や会社を持つ、というのは、リューのやってみたい事の一つだったのだが、それが叶ったのであった。


だがもちろん、経営者には経営者の苦労があって、楽しいことばかりでもない。それはリューも予想はしていたのだが……案の定、やってみると考えなければいけない事は多くあるし、問題もたくさん出てくるのであった。


例えば、面接で不合格にすれば、当然不満を漏らす者が居る。リューはそんな戯言は一蹴してしまうが、当然、それで反感や恨みを募らせていく者も出てくるわけである。そういう者達が、裏で店の悪評を流したり、妨害したりする可能性もあるだろう。


また従業員も雇ったらすぐに使えるようになるわけではない。接客業の経験者などほとんど居ないので、接客の仕方から料理の作り方まで色々と教える必要がある。


料理の作り方の指導はヴェラに丸投げであるが、接客の仕方や仕事に対する姿勢、経営方針などはリューが教えることになる。


リューは面接時に神眼を使って相手の心の中まで読んで選んだので、真面目な性格の人間しか雇わなかったが、たとえ真面目な人でも、良かれと思って行動した事が経営方針とは異なるという事はあるものだ。


完全に任せられるようになるまでは、時間がかかるのであった。


さらに、料理の値段の設定や売上の管理。営業時間と労働時間の設定、従業員の給与の設定。食材の在庫の保管方法、管理方法。営業時間が長くなれば、従業員のローテーション等、考えなければいけないことはいくらでもあった。


また、食材の仕入れについても確保する必要がある。今のところはリューの収納に入っているものを出して使っているが、それでは結局リューが居なければ店が回らなくなってしまう。


リューは店をやってみたいとは思っていたが、その店に縛られたいとは思っていなかったので、いずれは従業員に全て任せて、オーナーとして、必要な時だけ指示を出すだけにしたかった。そのためにも、安定した仕入れ先の確保なども考えて行かなければいけない。


さらに、ガラの悪い客も中にはいる。基本的にこの村の人間は温厚な者が多かったが、冒険者は外から来た流れ者が多く、荒くれ者が多い。


なんとか従業員を店に出せるようになって数日後、さっそくそんな客が現れた。


客 「おう、さっさと料理を出しやがれ! どんだけ待たせんだよ!」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


悪客 「この店は虫が入った料理を食わせるのか?」

店員 「そんな皿からはみ出すようなデカイ虫が乗ってたら出す前に気づくっての!」


乞うご期待!



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