第440話 リューの模擬剣完成

だがなんと、それならタングステンの約三倍の重さと強靭さを持つ金属素材を持っていると不死王が言いだした。


つまりそれは地球には存在しない金属である。不死王が持つ素材の中でもレアなモノらしい。


そんな素材でも不死王は面白がって気前良くタダでくれると言う。例えレアな素材であっても不死王にとっては大した価値はないので気にしなくて良いらしい。


そもそも不死王は人間とはかけ離れた存在であるので、人間的な価値観で計る事ができないのだろう。


リューはその素材をありがたく使わせてもらう事にした。


その金属素材は純粋な状態でも十分に重く強いのだが、有る種の物質を微量に混ぜる事で、さらに強い合金に仕上がっていると言う。


地球でも合金の研究は盛んだったが、材質の組み合わせと配合は無限にもなり、開発には膨大な時間がかかる。しかし、不死王には永遠の時間とアンデッドを使った無限の労力があるのだ。動力源としても、不死王自信が持つ膨大な魔力を利用する事もできる。その膨大なリソースを使った研究の成果の一つなのだ。


(研究の過程では、無駄とも思えるような謎物質も無数に生み出されているらしいが。)


その新素材には特に名前はないそうだ。不死王は実験した順に番号を振っているようだったが、膨大な桁数の数字を言われてもリューには覚えられなかったので、便宜的に新合金Aと名付けた。


Aに特に意味はない。リューの中で一番目だったのでAとしただけであえる。ちなみにもう一種類、合金素材を貰っており、こちらは新合金Bと名付けた。こちらは羽根のように軽量でありながら強度は新合金Aにも匹敵する金属である。これを使って新絶軽い剣や防具を作れるので、この素材の人間の世界での需要は計り知れないのだが、とりあえず(その時点では)リューにとっては興味ないものだったので、そちらは特に使う事なく寝かせてある。いずれ何か使う機会も出てくるかも知れない。


リュー 「新合金……」


そう聞くだけでリューはちょっとワクワクした。地球にいた頃から、リューは金属素材に惹かれるところがあり、各種の金属の塊を棚に飾ったりしていたのだ。


新合金Aの加工は、スケルトン軍団の冶金部に協力してもらいながら、リュー自身が行った。


しかも、普通に作るのではなく、リュー独自のアイデアを加えた。それは―――通常の剣よりも何倍か、太く、長く作って、それをリューの熟達しつつある空間魔法を使って通常の剣のサイズに空間を圧縮し閉じ込めるという方法である。


結果として、サイズ・形状は通常の木刀と同じだが、重量が100kg近くあり、傷つける事がほぼ不可能という模擬剣ができたのであった。


通常の鋼鉄製の剣が1~2kg、素振り用の極めて重い模擬剣でも10kg程度である事を考えると、100kgの剣など普通の人間には振り回す事はできないだろう。だがリューの竜人筋肉ならば、これくらいでちょうど良いのであった。


ただ、今回リューが床に突き刺したのはソレではない。リューとスケルトン冶金部が半分お遊びで作ったお化け模擬剣である。


材質は、レアな素材を使うのはもったいなかったので通常の鉄製にしたが、250倍もの巨大サイズで作り、それを通常サイズに空間圧縮したのだ。


そんなサイズの鍛冶仕事は人間の鍛冶屋では(あるいは名工として有名なドワーフの鍛冶屋であっても)不可能だが、リューの空間魔法がそれを可能にしたのだ。太陽にも匹敵するような超高温を空間魔法で別の空間に閉じ込め、その中で金属を溶かし加工したのである。(ちなみに鉄鉱石は、リューの空間転移で遠い宇宙空間に浮かぶ岩石を取り寄せてスケルトン冶金部に精錬してもらった。)


そうして何種類かのサイズの模擬剣を作ったのだが、その中でも一番重いものが、今回出した模擬剣である。マッツが「剣が軽いんだろう」などと言っているのが耳に入ったので、ちょっといたずら心を出したリューが、手持ちの中から一番重いモノを取り出して床に突き刺したのだ。


重量が1トンもある剣などというモノは、人間では誰も持ち上げる事ができないであろう代物であるが……実は、リューも素では持ち上げる事ができなかった。


竜人レベルを最低3以上には上げておかないと持ち上げる事もできない、超反則級の模擬剣なのである。


そんなモノを無造作に手渡したのだから、リューも意地が悪い。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


俺はらねぇ!

お前が自分でれよ!


乞うご期待!



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