第430話 アリサ
宿に帰ったリューは、とりあえず眠る事にした。(リューは睡眠は極力しっかり取る主義である。というか、働かなくて良い状況に来たのだから、ゆっくり寝たいのである、日本に居た時は常に仕事他に終われ睡眠不足だったのだから。)
もう遅いのでヴェラ達を起こすのも悪いと思い、仕方なくリューは自分の部屋にアリサを泊める事にした。リューの泊まっている部屋はツインだったのでベッドも2つあるのでちょうどよい。(宿の都合でそこしか空いていなかった。)
子供用の寝間着なども用意はないが、クリーンをかけてやれば服も身体もキレイになるので問題ない。
それぞれベッドに入り、魔道具の明かりを消して眠りにつく。だが、アリサは、暗くなった部屋の中で、闇の中を見つめて怯えた顔をしていた。闇の中に、骸骨の化け物が居る気がしたのだ。実際、警備のスケルトン兵士が亜空間の中に居たのだが、その姿が見えているわけではないのだが。
アリサはリューのベッドに転移で潜り込んだ。リューもアリサが入ってきたのに気付いたが、もう半分寝に入っていたので、面倒でそのまま眠った。特に予知能力は作動していないので危険はないだろうと判断した。危険がある場合は予知能力で察知できるし、寝る時はベッドを次元障壁で囲っているので、リューは意外と無防備に寝ているのだ。(アリサは転移を使えたので次元障壁を超えられたのだ。)
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翌朝、リューを起こしに来たヴェラが一緒のベッドで寝ているアリサを見て驚いていた。
ヴェラ 「リューが幼女を連れ込んでる?!」
……まぁヴェラもリューがそんな事をするわけがないとは分かっていたが。
リューは事情を説明し、アリサをヴェラに任せたのであった。
ヴェラは朝早起きして風呂に入る習慣があった。日本で暮らしていた頃は、朝シャワーを浴びてから出勤するルーティーンだったので、この世界に来てからもそれを続けている。
朝風呂なんてこの世界では非常に贅沢な話なのだが、正体がケットシーであるヴェラは魔法が得意なので、お湯を作り出す事など簡単なのだ。
まぁ、ゼッタークロス商会の木洩陽の宿の風呂は温泉になっている事も多く、そうでなくとも24時間入れるようになっているので、魔法を使う必要はないのだが。
今朝はまだ風呂に入っていなかったので、ヴェラはアリサと一緒に入る事にした。
身体の汚れをとるだけならクリーンで十分なのだが、奴隷にされていたなら風呂など入れなかっただろうし、疲れを取り、リラックスしてもらうのには温かい風呂に浸かるのが良いと思ったのだ。
脱水症状を起こさないように風呂に入る前に水を一杯アリサに飲ませたが、そのせいで胃腸が動き出したのか、風呂の中でアリサのお腹が鳴っていた。
聞けば、昨日は夕食を食べていないと言う。“仕事” がある日は、それが終わらないと食べさせてもらえないのだとか。
ヴェラは、風呂から出たらすぐに朝食だからとアリサに言い、早めに出る事にした。
ヴェラが風呂で見たアリサの身体は、筋肉は締まっていたが脂肪がほぼゼロであった。よほどストイックな環境に置かれていたのだろう。だが、この年齢の少女としては、あまり良い状態とはヴェラには思えなかった。
風呂から出た二人はすぐ食堂へ向かった。既に来ていたミィやモリー達にもアリサを紹介しながら朝食を食べ始めた。
アリサは、よほど腹が空いていたのか、モリモリと出されるだけ食べている。
ミィはアリサが奴隷にされていたと聞き同情したようだ。自分が奴隷だったので
ミィは自分の分までアリサに食べさせていたが、宿の料理はおかわり自由なのだから、自分の分を渡す必要はない。モリーが気を効かせてミィの分を取ってやるのだが、それをまたミィがアリサに渡してしまうという光景が何度か繰り返されていた。
聞けば、アリサには両親はおらず、暗殺者ギルドに戻らないなら、行く
アリサは無口で、あまり自分の身の上についても話をしたがらないが、徐々に打ち解けていけば、そのうち話してくれるだろう。
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アリサは、赤子の時から既にその稀有な
仕方なく、母はいつもアリサを肌身離さず抱いたまま世話していた。不自由ではあったが、決して母は嫌がらず、アリサを慈しんでくれた。
父は不在がちであったが、妻と娘のために稼ごうと働き詰めだったためであった。
だが、ある日、そんな親娘を不幸が襲った。アリサの両親がスケルトンに殺されたのだ。
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次回予告
アリサの身に何が起きたのか
乞うご期待!
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