第421話 ダンジョン偵察依頼
三日間は街に居なければならなくなったリュー。その間は、モリーやレスター・アネットと遊んだり街の観光したりして過ごそうか、などと思っていたのだが、翌日からギルドに詰めているよう言われてしまった。待機料を払っているのだから、ギルドに待機しているのが当然だと言うのだ。
金をもらってしまった手前、断るわけにもいかず、リューとランスロットは仕方なくギルド併設酒場でお茶を飲んでいた。
仕方なくリューとランスロットの二人でギルドの酒場で適当にお茶を濁していた。
リュー 「待機料なんて言ったのは失敗だったな」
ランスロット 「拘束されるのであれば、1Gは安すぎましたね」
リュー 「今から待機料いらないって言っても納得しないだろうなぁ。ところで、おまえ、お茶飲めたの?」
先程から、ランスロットがリューと同じくお茶を注文し、出されたお茶を口に運んでいるのを見て、リューが不思議に思ったのだ。ランスロットはスケルトンなのだから、飲食はできないと思っていたからである。
ランスロット 「飲んではいませんよ、フリだけです。まぁ人間ぽく振る舞ってみようかと思いまして」
リュー 「でも、お茶、減ってるよね?」
ランスロット 「カップの口の部分に亜空間を開いて、そこに流し込んでいます。そのまま飲んだら、顎から下に洩れてしまいますからね」
リュー 「そ、そうなんだ…。別に、ランスロットがスケルトンだって事は公然の事なんだから、人間のふりをする必要も無いと思うが」
ランスロット 「いやいや、私だって人間らしくお茶くらい味わいたいのですよ」
リュー 「フリだけだろ?」
ランスロット 「フリだけですけどね。今度、不死王様に頼んで、飲食ができるようにしてもらいましょうかね」
リュー 「そんな事できるのか?」
ランスロット 「不死王様に不可能はないかと。不死王様も気が向いたら人間に化けて街で食事などすることもあるようですよ?」
リュー 「マヂカ……」
ランスロット 「さて、お茶も流し込んだし、暇つぶしに訓練場で冒険者達相手に模擬戦でもやりますか? 金でも賭ければ盛り上がるでしょう」
G 「ああ、悪いがそういう事はやめてくれ」
背後からギルドマスターGが声を掛けてきた。
G 「スタンピードが起こるかも知れない時に冒険者達を痛めつけられても困るんでな」
ランスロット 「なるほど。ですが、痛めつけなければいいでしょう?」
リュー 「腕相撲大会でもやるか?」
G 「いや、暇なら、依頼を受けてくれないか? 内容は、ダンジョンの調査だ」
リュー 「ダンジョンが立入禁止で暇している冒険者が多いんだから、そいつらに頼めばよかろう?」
G 「もちろん、何人かには既に頼んでいるが、この街の冒険者のレベルでは、それほど深い階層まで潜れないんでな。せいぜい二階層の偵察までが限界なんだ。今は浅い階層の魔物が少なくなっているからと行って、無理して深い階層に行っていきなり強敵に出会って全滅されても困るんでな。だが、お前達なら問題ない、もっと奥まで偵察が可能だろう?」
ランスロット 「なんなら踏破してしまう事も可能ですが?」
G 「いや、今回はそこまでしなくていい、踏破となると時間が掛かる、三日では戻ってこれないだろう? それに、領主に相談もなく勝手にダンジョンを破壊もできんからな」
リュー 「踏破となるとダンジョンの深さにもよるな。とんでもない深さだったら時間が掛かるケースもないとは言えん」
本当は、ダンジョンコアの取得だけが狙いなら、リューの神眼で最下層を探知し、そこに一気に転移してしまう事も不可能ではないのだが、神眼の能力については秘密なのでそれは言えないのであった。
G 「ダンジョンの規模も深さも不明だな。
今の所、最高踏破記録は五階層までだ。今回はそこから何階層か先に進んで報告してくれるだけでいい。
お前達が掃討した四階層までは、僅かな魔物しか確認されていないと報告があった。だが、その先の階層にはたしてどのくらい魔物が居るか……。
深層から湧き上がる形でスタンピードが起きそうな状況かどうか、確認したらすぐに戻ってきてほしい。情報が早く欲しいんだ」
リュー 「まぁ、暇だし、引き受けてもいいか」
ランスロット 「報酬は頂けるのですか? まさか、待機料分の金額の中でやれ、などとは言わないですよね?」
G 「もちろんだ、大金は出せないが。通常の
ランスロット 「Sランクを動かすにしては十分な額とは言えない気もしますが…」
リュー 「まぁいいさ、金に困ってるわけじゃないし、何より暇だしな」
G 「ああ……そういえば、偵察を頼んだ冒険者の中には、“狩風” も含まれている。一応、今このギルドで一番優秀なパーティだからな」
リュー 「狩風…」
ランスロット 「ミィさんを騙したデボラの子飼いとかいう冒険者ですな」
リュー 「ああ…」
G 「その件は証拠不十分で不問となった。不満かも知れんが、中で会ってもトラブルを起こさんでくれよ?」
リュー 「別に興味はないさ。相手のほうから絡んでこない限りはな」
ランスロット 「そうですね。相手のほうから絡んでこない限りは」
G 「なんだか嫌な予感がするなぁ……」
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そんなリュー達とGのやり取りを影でこっそり聞いていたのは、狩風のメンバー、オックスであった。
Gからダンジョンの調査依頼を受けていた狩風だったが、準備のためにまだ街に居たのだ。
オックス 「おい、連中もダンジョンへ行くらしいぞ。チャンスだ」
マイオ 「そうか…ついているな」
ベニー 「しかし、大丈夫か? 相手はSランクだろ?」
マイオ 「まともに
オックス 「ダンジョンなら証拠も残らねぇしな」
狩風のメンバーは、デボラからリュー達を早急に消してしまうよう命じられていたが、街中ではさすがに手が出せなかったのだ。だが、ダンジョンの中で出会ったなら、殺してしまっても証拠は残らない、絶好のチャンスである。
リューとGの話を聞いた狩風のメンバーは急ぎ街を出発した。先にダンジョンに入り、中でリュー達を待ち伏せするためである。
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次回予告
ダンジョン内で狩風に襲われるリュー
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