第409話 ダンジョンサクサクリュージーン

一階層目の最奥まで進み、そのままボス部屋に入ったリュー達。ボスはオークキングであった。パーシヴァルが殺らせてくれと言うので任せたが、結局相手にもならず瞬殺で終わった。


そのまま二階層目に進む。


二階層目は、ゴブリンやオーク、コボルトなど一階層目の魔物に加え、それらの上級種が出てくる。さらに、リザードマンやトロールなど、一階層目には出てこなかった系統の魔物も出てくる。だが、やはりリューにとっては作業のように片付けていくだけなのは変わらない。(半分くらいは、スケルトン達のストレス解消? に任せたが。)


二階層目のボス部屋。


ボスはトロールキングであったが、こんどはエヴァンスが殺るが、同じく瞬殺。


エヴァンス 「弱すぎて、退屈しのぎにもならん…」


三階層目。


一~二階層の魔物に加え、さらにトロールやリザードマン等の上級種も出てくるようになる。だが、相手にならない事に代わりはない。


三階層目のボスはミノタウロス。


そう、ミィが死にかけた原因になった魔物である。正直、こんな浅い層に出てくるモンスターではないのだが…。


ミィの脳裏に、かつて仲間が殺されたシーンがフラッシュバックし一瞬緊張が走るが、光剣一閃、ランスロットが瞬殺してしまい拍子抜けするのであった。


四階層目に進む。


この階層は、これまでの洞窟系フィールドとは打って変わって草原フィールドであった。


これまで出てきた魔物も出てくるのだが頻度は減り、鳥系・獣系・植物系の比率が高くなった。


空からはキラービー、ハーピー、吸血コウモリ、ファイアーバード、ワイバーン等々…


地上ではサンダーベア、バイコーン、サーベルタイガー、ヘルハウンド、デビルヒッポ等々…


さらに、トレントや人食い花など、これまで見なかった植物系の魔物も出てくるようになった。玉ネギ系、長ネギ系、ナスビ系、キノコ系の魔物が、茂みの中から不意に飛びかかってきたりする。


なるほど、同じ植物系であるマンドラゴラが居そうな階層である。


植物系の魔物も、魔物である以上魔石を持っていて、それを破壊されたり抜き取られたりすると死ぬのは変わらない。つまり、リューの敵ではない。


ふと見ると、ランスロットがリューを真似して魔石を抜き取る技を試していた。


ランスロットはスケルトン用の亜空間を自由に出入りできるだけで、【転移】ができるわけではない。そこで、相手の魔物の体内に亜空間の出入口を開き、直接魔石を毟り取っているようだ。


ランスロット 「なるほど、これなら一瞬で斃せますな…」


パーシヴァルとエヴァンスも真似し始めた。ただ、ランスロット達はリューのように大量のターゲットから “同時” に魔石を抜くような芸当はできないので、順番に斃していくしかない。


しかし相手の数が数十程度であれば、高速な動きで一瞬の間にすべて魔石を抜き取ってしまえるので、リューがやっている事とほとんど変わらないようにも見える。


ランスロット 「今後、軍団レギオンの兵士の戦法に取り入れて行きましょう」


スケルトンの兵士達も同じ事ができるのだとしたら、魔物の大量殺戮も可能となりそうである。


リュー 「まぁ、スケルトン軍団が魔物の群れと戦うという事態が起きる事はあまりない気がするんだけどな…」






やがて、草原フィールドを彷徨う内、リューはマンドラゴラを発見する。


マンドラゴラの特徴的な根の部分は土の中なので見えない。そして、葉は周囲の植物の葉とそっくりで見分けがつかない。


リューはなかなか見つからないので、面倒になって神眼を使って土の中をサーチし、発見できたのであった。


リュー 「…これ、抜いちゃいけないんだっけ?」


ランスロット 「私やリューサマは大丈夫でしょうが、ミィさんなどは危険かも知れませんね」


マンドラゴラは土から引き抜かれそうになると、叫び声を上げる。それを聞いた者は死んでしまうという伝説がある。


ギルドで聞いた情報によると、どうやらマンドラゴラの叫び声は、咆哮ロア系攻撃の一種だと言う研究結果が発表されているらしい。なかなか確認が取れないので、仮説の段階だそうだが、多分間違いないだろう。


ロアであれば、障壁で覆ってしまえば遮れるような気がするが……。


リュー 「じゃぁ、これならどうだ?」


リューは、マンドラゴラを引っこ抜くのではなく、転移で地上に取り出してしまった。引き抜かれるようなストレスが掛かっていないので、案の定、叫び声を上げる事はなかった。


取り出されたマンドラゴラの根は、確かに人形ヒトガタになっている。


異変に気づいたマンドラゴラが目を開けた。自分が置かれた状況の把握に時間が掛かったようであるが、やがて、自分が土から取り出されている事に気づき、マンドラゴラは慌てて口を開き、叫び声を上げる。


だが、その瞬間には、リューはマンドラゴラを亜空間の中に突っ込んでいた。


マンドラゴラ用に専用亜空間を作り、そこに入れる。中にはなにもない、虚無である。亜空間の中で、虚空に向かって叫び声をあげていたマンドラゴラの叫び声は徐々に小さくなっていき、やがて消える。そして、マンドラゴラは力尽きて動かなくなったようだ。


リュー 「どうやらロアは一回しか放てないようだな」


再びの攻撃を警戒しながら亜空間から取り出してみたのだが、どうやら二度目の攻撃はないようだ。


ランスロット 「ロアを使う前に比べると、かなり弱って萎んでいるようですね」


リューが取り出した時にはまだかすかに息があるようだったマンドラゴラは、やがて、完全に息絶えた。


リュー 「なんか、萎びてしまったな。生きが良い・・・・・ほうがいいのだったら、ロアを使う前に倒すほうがいいのかも知れないなぁ…」


ヴェラ 「大丈夫だと思うわよ、マンドラゴラは納品される時は死んで萎びた状態なのが当たり前だから。生きの良いマンドラゴラってなんか凄そうだけど、使い方もまだ研究もされてないと思う」


さらにリューが神眼で周囲の土の中をサーチすると、少し離れた場所にもう一本? 一体? マンドラゴラを発見した。周囲に何本か巨大な人食い花が生えているが、その脇に生えている雑草の一本がマンドラゴラであった。


人食い花は、巨大な花の中央に大きな蕾があるような形状である。じっと動かないが、近づくと、蔓が動き出し獲物を搦め動けないようにして、蕾がガバっと開く。蕾の中には牙が並んだ口になっており、そのまま獲物をまる齧りして飲み込んでしまうのだ……。正直、見ていてあまり気持ち良い植物ではない。


一説によると、昔、リッチの魔法研究の邪魔をして恨みを買った冒険者が、人間に生まれ変われないよう人食い花に改造されたという伝説があるとか。


ヴェラがなんとなく嫌な顔をしながら、ファイアーボールで人食い花を焼き払った。(植物系モンスターは総じて火に弱い。)


人食い花が燃え尽きたところで、脇に生えていた一本の植物をリューが摘む。


リュー 「これも、マンドラゴラだな」


ミィ 「先ほどと違う形ですけど…?」


リュー 「ああ、どうやら周辺の植物に擬態する能力があるようだ。なるほど、見つからないわけだ」


どうやら、改めて広範囲に神眼で調べてみると、このフィールドの全域に渡って、ポツポツとマンドラゴラが他の植物に擬態しながら生えていたようだ。すべて、完全に周囲の植物に擬態して別の植物に見える。なるほど、これでは、並の冒険者ではなかなか発見できないわけである。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


マンドラゴラ上位種


乞うご期待!



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