第410話 スタンピードの兆候?

その後リューは、二十本ほどマンドラゴラを収穫したが、収穫作業はランスロット達に任せた。


一度周囲の土ごと亜空間に引き込んでから、亜空間の中で引っこ抜く。ランスロット達はマンドラゴラの叫びロアごときでダメージは受けないので気にせず引っこ抜いてしまい、死んだところでリューに渡すのだ。


リューの亜空間収納には、多種多様な魔物が万単位で保管されている状態になっていた。これだけ収穫できれば、もう当分狩りはしなくてよさそうである。(後で売る予定なので、スケルトン達の亜空間には置かず、すべてリューの亜空間に収納している。リューの作る亜空間は次元が違うのかセキュリティレベルが高く、スケルトン達の側からアクセスする事ができないのであった。)


この階層も魔物の数は多かったが、リュー達の 敵ではない。その “収穫作業” の様子を、ミィはただただ呆然と見ているだけであった……。


そして、ボス部屋。


この階層のボスモンスターはマンドラゴラの上位種、ドラゴラキング、ドラゴラクイーン、ドラゴラブラザーズであった。(キング・クイーン・ブラザーズと名がついているが、大小四体出てきて家族のように見えるのでそう名付けられただけで、全部同一種のようであったが。)


通常のマンドラゴラも多少は動きまわるのだが、土から抜かれた後はしばらくすると死んでしまう。


だが、上位種は土の外でも死なずに活動し続けられるようだ。しかも、叫びロアも一度だけでなく、繰り返し放ってくる。というか、とにかく入れ替わり立ち代わり間断なく叫び続けるので煩い事この上ない。並の冒険者が予備知識無しにこの部屋に入ったら、ロアの連発をいきなり浴びて全滅してしまうかも知れない。


ただ…ロアさえ防げれば、それほど強敵ではない。しょせんは植物系、火に弱いのである。


前に五階層目まで到達したパーティが居たという話であったが、このパーティには強力な魔法障壁の使い手がいたのだそうだ。障壁で完全にドラゴラキング種を囲い、ロアを防いだ上で、炎系魔法の遠隔攻撃で焼き払って倒したらしい。ただ、完全に焼き払ってしまったため、残念ながら上位種のマンドラゴラの素材を持ち帰る事はできなかったのだとか。


リューの場合も、マンドラゴラである事を認識した瞬間に次元障壁で囲ったので、ミィも無事であった。リューとランスロットはロアを受けても大丈夫である、ヴェラもおそらく大丈夫なのではないかと思うが、試してみるわけにもいかない。


ロアを防いでしまえば、後は大した攻撃力はないので、転移で魔石を抜いて終了である。


前のパーティと違い、完全に無傷でマンドラゴラの上位種を手に入れる事ができた。これは、マンドラゴラの上位種が確認された初の事例となった。


ボスを倒した事で、次の階層へ進む階段が現れたが、今回の目的であるマンドラゴラは確保できたし、“収穫” も十分過ぎる量が確保できたので、次の階層には進まずに、リューは地上に戻る事にした。




  * * * * *




一方その頃、ライムラの街の冒険者ギルド。


良くない知らせが齎され、ギルドは騒然としていた。ダンジョン「ソリン裂溝」に、大氾濫スタンピードの兆候があるという報告があったのだ。


生還した冒険者達の報告によると、ダンジョン内部に大量の魔物が現れるようになっていたという。あまりの数に力尽きて飲まれてしまった冒険者も多いとの事であった。


冒険者達の報告を受け、既にダンジョンの出入口の門は閉鎖され、入場規制が敷かれている。


(※門を閉じた後にダンジョンから出てきた冒険者達は、門の脇にある小さな通用口を通って外に出られるようになっている。)


ギルド職員 「マスター、出てくる冒険者はほぼ居なくなったとの事です」


通信用魔道具を使ってダンジョン入口の職員と話していたギルド職員が言った。


ギルドマスター・G 「そうか…。どれくらい戻っていない?」


ギルド職員 「四分の一ほどが戻っていないそうです」


G 「そうか…。四分の三残ったなら、思ったより少なかったと言うべきか? いや、スタンピードはまだこれからだから、どうなるか分からんな」


リズ 「あの…」


G 「なんだ? 今忙しいんだ、どうでもいい話なら後にしてくれ」


リズ 「ミィ達が、ダンジョンに向かったはずなんですが」


G 「そうなのか? おい、ミィ達のパーティ……名前はなんと言うんだ? ホネホネ団? ああおい、ホネホネ団というパーティはダンジョンから脱出しているか?」


ギルド職員 「……いえ、そのパーティは入場記録はありますが、出てきていないそうです」


G 「そうか……。せっかく生きて帰ったのに、また、ダンジョンで死んだのか、ミィもとことんついてない女だな…」


リズ 「そんな事ありません、彼らは生きてます、そのうち戻ってきますよ! だって、彼らはSランクのパーティなんですよ?」


G 「Sランク? 確かに、Sランクの冒険者パーティが街に来ているという報告は聞いていたが、まさか、ミィ達のパーティがそうだったのか?」


リズ 「そうですよ。Sランクですから、きっと大丈夫に決まってます」


ギルド職員 「あ、マスター、今連絡がありました! ホネホネ団がダンジョンから出てきたそうです」


リズ 「ほら! やっぱり!」


ギルド職員 「ただ……」


G 「ただなんだ?」


ギルド職員 「ダンジョン内に魔物は居ないと言ってるそうです……」


G 「……どういうことだ?」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


帰り道で気絶した少女


乞うご期待!



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