第407話 ダンジョンにいくぞ~

普通の冒険者っぽくダンジョンを楽しむ事にしたリュー。


まずは、ミィと一緒に準備の買い出しに出かけたが、結局、リュー自身の準備はほとんどなかった。リュー(とスケルトン軍団)には亜空間に無限に物資を収納できるので、必要なモノは日頃から全てその中にあるのだ。料理さえも時間を停止した状態で収納しておける。そのため、この世界ではリューはいつも手ぶらなのであった。


ただ、リューは新しいマジックバッグを道具屋で購入し、新たにパーティメンバーになったミィに貸し与えた。そして、必要最低限の回復アイテムと食材・道具を持たせた。それらはリューとはぐれてしまった場合の緊急用である。


そして、いよいよダンジョンへ向かう。


メンバーは、リュー・ヴェラ・ミィ、そしてランスロット・パーシヴァル・エヴァンスのスケルトン三人組である。


(リリィも、パーティメンバーには登録されたままであるが、リリィは王や宰相達の手伝いアドバイザーを頼まれたので王都に残っていて、奴隷ギルドの騒動が終息するまでは戻ってこられそうにない。)


冒険者らしい活動なんだからリューはスケルトン達はメンバーから外したかったのだが、ランスロット達もどうやらひと暴れしたいようで、一緒に行きたいと強く希望され同行を許した。そもそも、ランスロット達スケルトン軍団は、いつでも必要があれば基地となっている亜空間から出て来るだけなので、同行するもしないもないのであるが。


結局、ダンジョンまでは、転移を使わず馬車で移動する事にした。(そのほうが冒険者活動っぽい。)とは言っても、リュー達がいつも旅に使っている馬車である。大きめの馬車だが、バトルホースのランドルフが牽くので、ダンジョンまで徒歩で6時間ほどの距離も1時間で着いてしまうのであったが。


道中は、ランスロットが御者を務めた。どうもランスロットは、普通に人間と同じような不自由な生活や旅を楽しんでいるようにリューには思える。


パーシヴァルとエヴァンスは亜空間で待機していたが。(そもそも待機中に実際に亜空間の中にいるのかどうかは不明、もしかしたらどこか出歩いているのかもしれないが、リューの関知するところではない。)




  * * * * *




やがて到着したダンジョン。


聳え立つ岩山、その岸壁に巨大な亀裂がある。亀裂は巨大で、内部も広大な空間となっているので、馬車ごと侵入できるようだ。


入ってみると、中は明るかった。洞窟の上部に続く亀裂の先から光が降り注いでいる。亀裂は岩山の頂上まで続いており、上から太陽光が入ってきているようだ。


内部に入ってみると馬車置場があり、馬車が十数台停まっていた。看板にシステムが書いてある。払う金額によって保管期間が異なっており、期限を過ぎた場合はそのまま売られてしまうとの事だった。預り金も決して安くはない。まぁ、自動車の駐車場と違い、預かっている間、馬の食費等もかかるのだから仕方ないだろう。


ニタニタと微笑みながら馬車置場の管理人が近づいて来た。


管理人 「これは立派な馬ですなぁ? これは、料金も少し多めに頂かないと……」


リュー 「必要ない」


管理人 「へ?」


リューは馬車を収納できるので預かってもらう必要はない。馬も、リューの管理しているダンジョン内に作った牧場に転送して待機させている。


馬車と馬が一瞬で消えてしまい、管理人が驚愕の顔をしていたが、無視してリュー達は先に進む。


広場の奥に、頑丈そうな塀で囲われた一角がある。門は開け放たれており、中に階段が見えている。おそらくそれがダンジョンの本当の入口なのだろう。


少し離れた場所には小屋が建っており、兵士が何人か居た。おそらく、ダンジョンから魔物が出てきたら、門を閉じて外に出ないようにするのだろう。


門の脇には小さな机が置いてあり、冒険者ギルドの職員と思われる人間が、出入りする冒険者の名前をチェックしていた。


特に入場を規制しているというわけではなく、ダンジョンに誰が入ったのか、名前を記録しているだけだと言っていた。ダンジョンに入ったまま、出てこない(つまり中で死ぬ)冒険者も居るので、その確認のためだそうだ。


リュー達も名前を記入してから階段を降りる。


ダンジョンの中に入ってから、パーシヴァルとエヴァンスが姿を表した。入場の申告をしていないが、まぁいいだろう。


ダンジョンは洞窟型のようだ。


どんどん奥へ進むリュー。しばらく行くと、少し広い空間になり、複数の冒険者パーティが魔物とバトルしていた。


魔物は、ゴブリン、コボルト、一角ウサギ、毒ガエル。マッドハンドやマッドパペットなども見える。


情報通り魔物は多彩で数も多いようだ。通常、鳥系・獣系・水系・植物系・無機系など、ダンジョンのフィールドタイプごとに分かれて出現するモンスターが、このダンジョンではかなりごちゃまぜに出現しているのだ。


他の冒険者が戦っている魔物には手を出さないのがルールであるが、リュー達もすぐに魔物と遭遇エンカウントした。ゴブリンの群れである。数が五~六十匹も居る。


リュー 「ゴブリンは、何匹居てもほとんどは金にならないんだよなぁ…」


ボヤきながら戦闘開始。リュー達には特にパーティとしての作戦もない。個別撃破である。


ミィは剣を抜き、ゴブリンを次々と斬り飛ばしていった。ヴェラも魔法攻撃で次々にゴブリンを倒していく。ヴェラにしては小さめの火球であるが、的確にゴブリンを仕留めていく。攻撃が小さめなのは、魔力を節約しているのだろう。


リューも光剣を抜き、個別に斬り飛ばし始めた。リューならこの程度のゴブリンの群れは一瞬で殲滅できるのだが、まとめて殺るのは冒険者らしくない。


ランスロットも光剣を振り回している。リューとランスロット二人の光剣が振られる度、ゴブリンの身体があれよあれよと切り分けられ、地面にばら撒かれていった。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


リュー 「面倒になってきたなぁ…もういっかぁ」


乞うご期待!



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