第406話 Sランクの冒険者なんて実在しないでしょ?
ヴェラ 「リューは転移が使えるから、行き帰りに時間は掛からないのよね」
ミィ 「…そ、そうでしたね、さすがSランク。規格外ですね。
…でも、勝手にダンジョンに入るのはちょっと。ギルドに行って申告してからでないと…」
リュー 「ん? ここのダンジョンには入場制限とかあるのか? まぁあっても中に直接転移してしまえばいいだろ。冒険者ギルド通さなくても、狩ってきた魔物の素材を商業ギルドに売れば稼げるし」
ミィ 「…入場規制は、無いと思います―――以前はなかったです。ただ、ダンジョンがどんなタイプかとか、どんな魔物が出るかとか、注意事項とか、ギルドで情報を仕入れてから行ったほうが安全かと。私が居た頃と状況も変わっているかも知れませんし」
リュー 「どんなダンジョンだって問題無い。俺は既に3つほどダンジョン踏破してるし」
ミィ 「へ……そう、なん、デスカ……サスガSランクデスネ」
ミィ (もしかして、そうじゃないかとは思ってたけど……、アタシは、とんでもないパーティに参加しちゃったんでは……)
リュー 「ん~、でも、そうだな…。やっぱりちゃんと、冒険者らしくやろうか。そういう風にやってみたいと思ってたんだ。ミムルの街で3年くらい冒険者生活してたけど、薬草取り専門だったから、森の中歩くだけだったんだよねぇ。冒険者らしく準備してダンジョンに挑む。うん、いいね。それで行こう」
というわけで、リューはミィの主導で、普通の冒険者がやるように、一般的な冒険者風の冒険をしてみる事にしたのだった。リューも一人でダンジョンに入って無双した事なら何度かあるが、“一般的な冒険者らしい活動” についてはミィのほうが経験豊富な先輩である。
* * * * *
再び冒険者ギルド。
リュー達は掲示板に貼ってある依頼票をチェックしていた。
この街の冒険者ギルドは依頼が多い。主に商人から出される魔物の素材採集依頼である。やはりダンジョンが近くにあるので、魔物の素材目当てに商人が集まっているのだろう。
これなら別に冒険者ギルドで依頼を受けなくても、適当に魔物を狩ってきて商業ギルドに素材を売るだけでも儲けられそうである。
だが、冒険者らしい活動をすのが目的なので、やはりきちんと依頼を受ける事にした。
リュー 「さて、どの依頼を受けようか……」
リューであれば、極端な話、貼り出されている採集依頼を全部まとめて引き受けたとしても、簡単にこなせてしまえるだろうが、それも冒険者らしくない。
ミィ 「受ける依頼に迷った場合は、ギルドの受付嬢に相談すると良いですよ。そうすれば、冒険者の実力に合わせて適切な依頼を斡旋してくれます。それに、ギルドが持っているダンジョンの情報をコソっと教えてくれたりもしますからね」
そう言われ、リューはミィと一緒に受付に向かった。もちろん、ミィの親友リズが対応してくれた。
リズ 「ダンジョンは、ソリン裂溝と呼ばれています。岩肌に裂けたような巨大な亀裂があって、そこから中に入るのでそう呼ばれているんですよ。
特徴としては、階層ごとの難易度の上がり方が急で、特に三階層以降の難易度が急に高くなり、並の冒険者ではなかなか四階層以降に進めない状況です。
一階層目は、出てくるモンスターは初心者でも対応できるような種類ばかりです。ただし、種類も出現数も多いので、油断すると危険です。
二階層目は、出てくる
そんな状態なので、ほとんどの冒険者が一階層ないし二階層に留まって活動している状態ですね」
リュー 「…ダンジョンを踏破した場合、コアの破壊または持ち去りは禁止か?」
リズ 「はい? ええ、一応、コアの破壊や持ち去りは禁止されていますが……
そもそも、これまでの最高踏破記録は五階層までで、その先何階層あるかも分かっていない状態なので。
以前、五階層目に到達したAランクのパーティが一組だけ居りましたが、何度チャレンジしても五階層目のボスを倒す事ができず、結局、負傷のため引退しました。
なので、ダンジョン踏破なんて考える段階ではないかと思いますよ~?」
リュー 「多分問題ないだろ…まぁ行ってみないと分からんがな。まぁ、踏破したとしても、破壊や持ち去りはしないでおこう。この街はダンジョンからの素材で栄えているみたいだしな」
リズ 「目標を大きく持つのは良いですが、このダンジョンの難易度はかなり高いですから、自信過剰は危険だと思いますよ? 無理して命を落とす冒険者も多いです。そういうのは私達も見たくないですから」
ミィ 「ああ、違うの、リズ。彼らはSランクなのよ」
リズ 「…Sランク? 何言ってるのミィ、Sランクの冒険者なんて、ただの伝説よ、実在するわけないじゃない(笑)
というのは冗談としても、Sランクは国に数人というレベル……
…そう言えば、最近王都でSランクを認定された冒険者が出たなんてニュースが流れてきてたわね。まさか…」
ミィ 「それが彼らよ」
リズ 「本当に? デマだと思ってた。ミィの言葉を信用しないわけじゃないけど……あの、ギルドカード、見せて貰っていいですか?」
黒く光るギルドカードをリューは取り出す。後ろからランスロット・パーシヴァル・エヴァンスもカードを取り出して見せた。
リュー (なんだかんだいって、三人ともSランクのギルドカード見せたがるよな、気に入ってるのか?)
リズ 「またまたぁ、黒いギルドカードなんて見た事ないですよ~?」
いいから読み取ってみてとミィに促され、リズは半信半疑でリューのカードをギルドの魔道具端末にそれを差し込んでみた…
リズ 「…まさか! 本物だったー! 本当に?! しかも四人も?! 確かにそれなら、踏破階層の記録更新も…、いやそれどころか、最終層まで踏破できてしまうかも?」
リュー 「まぁ今回は素材を売って稼ぎたいだけだから。報酬の良い依頼を教えてもらえるか?」
結局、ダンジョンで採れる魔物の素材や鉱物・植物はほとんどが “売れる” ので、適当に採ってきたら、後でリズが依頼に当てはめて処理してくれると言う。
リズは、売り物にならない魔物や素材のリストを書いてくれた。例によって、ゴブリンは上位種であってもほとんど素材としての価値はないらしい。
高価な買取が期待できる素材についても教えてもらった。このダンジョンでは、四階層に生えているのが確認された “マンドラゴラ” が非常に高値で売買されるらしい。
マンドラゴラは魔物の植物である。その根の部分は薬の原料や魔道具の原料として珍重される。根は人間の形をしており、土から出ると動きまわるらしいが、一定時間土に戻れないと死んでしまうらしい。
注意点は、無理に引き抜こうとすると、
薬の素材としては非常に役立つ素材なのだが、生えている場所に行くのも大変で、さらに採集するのも困難であるため、非常にレアな素材となっているらしい。
とりあえず、リュー達はマンドラゴラ採集を目標にダンジョンに潜ってみる事にした。
― ― ― ― ― ― ―
次回予告
ダンジョン無双
乞うご期待!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます