第403話 酒場で飲んでたら狩風現る
訪ねてきたのはリズであった。一旦はミィと別れたものの、やっぱり気持ちが収まらず、飲みに行こうとミィを誘いに来たのだ。
リュー達も一緒にどうかとミィは誘ったのだが、リューは酒が好きではない(そもそも飲んでも酔わないし、味もことさら美味いと思ったことはない)ので断った。モリーも聖職者なので、禁止というわけではないのだが酒はほとんど飲まないし、子供達の世話もあるという事で断った。
実はリューとモリーは、ミィに水入らずで旧交を温めてほしいと遠慮したところもあったのだが……酒好きのヴェラだけは、配慮を分かってないわけではなかったが、あえて空気を読まずについて行ってしまったのだった……。
リュー 「酒好きは、転生しても変わらないんだなぁ…」
* * * * *
街の酒場でリズは酔って荒れていた。
ミィの身に起こった事に同情し。それをやったと思われるデボラに腹を立て。それを糾弾できないギルマスの態度に腹を立て。正義がないこの世界に腹を立て。急ピッチで酒を飲み泥酔してしまった。
リズ 「らいたいねぇ、ミィは人が良すぎるのよ! ハンスらってなによぉ! ミィというものがありながら、デボラなんかと……」
ミィ 「まぁ、私は死んだとハンスは思ってたんでしょう? 仕方ないわ」
リズ 「それにしらってよ! 他にもっろ良い娘はたくさんいるのに、よりによってレボラなんかと…アタシだって、ちょっといいなと思ってらのに」
ミィ 「え、ちょっと、リズ?」
リズ 「れもねぇ、あのギルマスの
ヴェラ 「そうよねぇ…」
リズ 「そうれしょ! ヴェラさんは話が分かる! それを、あの、狩風なんれ、連中を庇って! アイツラは、殺人犯よ、言ってしまえばよ! それを、野放しにしれるって、いいわけ?」
『おい、聞き捨てならねぇ事を言うなよ?』
その時、近くにの席で飲んでいた冒険者と思われる男が声を掛けてきた。
男 「今、狩風が殺人犯だとか言ったか?」
リズ 「なにおぉ? 言ったわよ? 言ったがどうしたってのさー」
ヴェラ 「…あなたは?」
男 「俺は、オックスさんに昔世話になった者だ。恩人が殺人犯呼ばわりされては黙ってられねぇ。証拠があって言ってるんだろうな?」
ミィ 「証拠は…ない…です」
リズ 「れも、本当の事らもん。ここに居るミィが生き証人らよ! だから取り消さな~い。狩風は殺人犯らよ~」
男 「貴様ぁ…」
『ハスタの兄貴、お二人が近くで飲んでるって聞いたんで呼んできやしたぜ!』
男(ハスタ) 「おお、オックスさん!」
オックス 「どうした? ハスタともあろう奴が、酒場の喧嘩の仲裁に俺を呼んだわけでもあるまい?」
ハスタ 「すいやせん、コイツらが聞き捨てならねぇ事を言ってたもんで」
オックス 「ん? リズじゃねぇか。それに、おまえ……ミィ!」
ハスタの舎弟が呼んできた男達は、狩風のメンバーのオックスとベリーであった。
ミィ 「オックス…」
オックス 「ミィ……本当に生きてやがったんだな…」
リズ 「あんた達が嘘つきなのは分かってんのよ、ここで会ったが百年目! 罪を認めなさいよ~そしてミィに謝って、そして、自首しなさ~い」
オックス 「ふん、何の事だか分からんな」
リズ 「とぼけんじゃないわよ、デボラに頼まれて、ミィ達をダンジョンで殺す手つらいをしたんでしょ~? 分かってるんらからね!」
ハスタ 「デボラって、デボラ姐さんの事か? お前、代官の娘である姐さんの事を殺人者呼ばわりなどして、タダでは済まないぞ?」
リズ 「デボラはハンスと結婚するためにミィを殺したんれす~。ミィのほうがハンスと先に結婚する約束してたんらからねぇ! ミィが邪魔だったから殺したんれしょ! でも残念らったわね! ミィたんは生きてました~。悪人はせいばいっ!」
オックス 「このくそ酔っ払いが・」
リズ 「ばーかばーか! ひろごろしー! ばーかばーか」
オックス 「黙りやがれ!」
オックスがいきなり剣を抜いてリズに斬りかかってきた。
ベリー 「おい馬鹿やめろ!」
だがベリーの制止は間に合わず。剣がリズを襲う。
しかし、剣がリズの身体に剣が触れたと思った瞬間、剣は弾かれ、オックスは吹き飛ばされて床に尻もちをついた。ヴェラが障壁を張ると同時に風魔法を放ったのだ。
オックス 「俺の剣を障壁で止めただと……? お前、
ヴェラ 「ただの旅の冒険者よ。酔って暴言吐いただけの相手に、さすがに斬りつけるのはやり過ぎなんじゃないの?」
オックス 「ちっ! 酔ったからって何を言っても許されるのか? 証拠もなしに人を殺人者呼ばわりしやがって」
ヴェラ 「ミィを騙した冒険者ってのはアンタ達なわけね? 証拠っていうけど、あんた達が正直に白状すれば済む話なんじゃないの? いきなり暴力に訴えるのは図星突かれたからなんじゃないの? 喧嘩売るならアタシが受けて立つわ」
立ち上がって臨戦態勢に入ったヴェラ。ヴェラは怒っていた。ミィを騙した連中なら、手加減無用である。少し痛い目に合わせて白状させてやろう……と思ったのだ、邪魔が入った。
酒場を巡回していた街の警備兵が騒ぎを聞きつけてやってきたのだった。
警備兵 「何を騒いでいる!? ん、お前はオックスじゃないか。こっちは冒険者ギルドの受付嬢のリズ? 一体どうしたんだ?」
オックス 「…くそ。なんでもねぇよ」
警備兵 「なんでもないと言われても、ってお前、剣を抜いてるじゃないか」
オックス 「コイツが人を殺人者呼ばわりしたんでついな。―――おいリズ、お前、デボラ姐さんの事を証拠もなしに殺人者呼ばわりして、タダで済むと思うなよ? 覚悟しとくがいい」
警備兵 「おい、待て! おい」
オックスは剣を納めると、警備兵の制止も無視して酒場を出ていってしまった。警備兵の一人がオックスを追って出ていき、残った一人がヴェラ達のほうに来て言った。
警備兵 「何があったんだ?」
ヴェラ 「なんでもないですよ、酔っ払いの放言を真に受けたその人が、剣を抜いて斬りかかってきたんです。でも、誰も怪我してませんし。大丈夫です」
警備兵 「見たところ冒険者だな。やれやれ、冒険者同士の喧嘩で街の住民を巻き込まんでくれよ…
…ああそれと、酔った勢いでもデボラさんの悪口とか言わんほうがいいぞ? 何かと
警備兵は領主の部下、つまり代官の部下に当たるので、その娘であるデボラとも関わりがあるのかもしれない。
面倒に巻き込まれたくないとでも言うような態度で、警備兵はそそくさと出ていってしまった。最初に絡んできたハスタという男とその舎弟もばつが悪そうに酒場を出ていった。
とりあえず、騒ぎが収まってほっとした一同。
だが、ふと見ると、リズがミィの袖を掴んでいた。よく見れば手が震えている。
ミィ 「リズ?」
リズ 「ごめん…酔はとっくに醒めてたんだけど、酔っ払ったフリを通したほうが良さそうだなぁと思って…てへ」
ミィ 「酔いが冷めたなら、もう帰る?」
ヴェラ 「何言ってるの、この店の酒、まだ全種類飲んでないわよ?」
結局、明け方までヴェラにつきあわされたリズとミィ。リズは翌朝、というかもう当日だが、二日酔いの頭痛を抱えながら出勤する事になったのであった……。
* * * * *
朝、頭痛を抱えながらもいつものように出勤したリズ。
だが、その日は着くなりすぐにギルマスに呼ばれ、リズは謹慎を命じられてしまった。
― ― ― ― ― ― ―
次回予告
怒りのリズ、デボラの屋敷に乗り込む!(謝りに)
乞うご期待!
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