ライムラ編

第397話 ミィ、はじまりの街に戻る

トナリ村に向かう道中。


リュー達はライムラという街についた。


ミィ 「久しぶり……この街で、私は冒険者をしていたのよ…」


ヴェラ 「ミィの生まれ故郷ってわけね?」


ミィ 「いえ、生まれたのはここからさらに北に行ったところにある小さな村なんだけどね。冒険者になるためにこの街に出てきたの。この街はダンジョンが近くにあって、冒険者活動が活発なのよ」


モリー 「一人だけで街に?」


ミィ 「いえ、幼馴染のハンスが成人して冒険者になると言うので、私は成人はもう少し先だったんだけど、くっついて来ちゃった。ハンスは私の兄みたいなものだったから」


(※この世界の成人は15歳である。)


ミィはハンスと一緒に冒険者登録をし、ハンスとパーティを組んだのだそうだ。


当時12歳だったミィ。冒険者になるには少し早い年齢であったが、この街は低ランク冒険者の仕事も豊富で、未成年冒険者も多かった。


また、ミィには剣の才能があり、冒険者になってからはメキメキと頭角を現していき、やがて美少女剣士として街では少し有名な存在になったのであった。


その後、4年ほどこの街で冒険者として過ごした。その間にミィも成人を迎えた。ある意味、この街で冒険者として過ごした時期は、ミィにとって青春であったとも言えた。


だが、やがてその生活は終りを迎えた。ミィは大怪我をし奴隷商に助けられて奴隷となった事件が起きたのだ。


ミィは、自分以外の仲間は全員死んだと聞かされていた。何年掛かるか分からないが、奴隷から解放されたら、ミィはこの街に戻ってパーティの仲間達を弔いたいと思っていた。ダンジョンで死んだ冒険者の死体はダンジョンに吸収されて消えてしまうが、せめて仲間たちの家族と、世話になった冒険者ギルドの職員にも報告と謝罪をしたいと思っていたのだ。




  * * * * *  




リュー達は先に宿に向かい、ミィは分かれて独りで冒険者ギルドへと向かった。


懐かしい冒険者ギルド。


受付には、ミィと仲が良かった受付嬢が変わらず座って居た。


受付嬢 「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこ…そ……


…ミィ?」


ミィ 「リズ! 久しぶりね、元気そうでよかった!」


リズ 「ミィ! あなた、生きてたの?! ああ、ミィ、本当にミィなのね!」


思わずカウンターから飛び出してミィを抱きしめたリズ。


何事かと周囲の冒険者や職員が驚いて見るが、中には何人か顔見知りの者も居り、皆ミィの顔を見て驚いていた。


リズ 「あなた、一体……死んだって聞いたのに! 一体何があったの? 今までどうしていたの?!」


仕事が終わった後、ゆっくり話をしようとミィは言ったのだが、リズは事情聴取する必要があるこれも仕事だと言って、受付を別の職員に変わってもらい、ミィとともに会議室に移動した。


積もる話を聞くリズ。


リズ 「そうだったの……大変だったのね。でもよく生きててくれた、ダンジョンで死んで帰ってこない若い冒険者は多いからね、嬉しいわ」


ミィ 「ターラ達(パーティの仲間)の家族にも会って謝りたい、ある意味、私のワガママで殺してしまったようなものだから……故郷の村にも戻ってハンスの両親にも謝らないと……」


リズ 「ハンスは生きてるわよ?」


ミィ 「え?! ……うそ? ハンス、生きてるの?」


リズ 「ハンスだけじゃない、デボラも生きてるわ」


ミィ 「デボラ! デボラも生きているの?! 良かった……てっきりデボラは死んだものと……ターラとミリンは?!」


リズ 「ターラは……ダンジョンの入口近くで遺体が発見されたわ。ミリンは行方不明のままよ」


ミィ 「そう……そうよね。ミリンは、生きてるわけなかった……私の目の前で、ミノタウロスに首を斬り飛ばされてしまったのを憶えている。だから、死体はダンジョンに吸収されてしまったのでしょうね。ターラは多分、私をダンジョンから運び出してくれたんだと思う。私が発見された時、隣に倒れていた冒険者はもう死んでたから放置して来たって言われたわ……


でも、デボラが生きていて良かった!」


リズ 「良かったって…アンタ、お人好しね。アタシはずっと、なんかおかしいと思ってたのよね。ミィ、あの日のこと、詳しく教えてくれない?」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


罠に嵌められたミィ


乞うご期待!



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