第394話 ハッタリだな? 騙されんぞ?

リュー 「ハッタリではない。現に解放されているだろう、なぁ、ミィ?」


ミィ 「はい、私はもう奴隷ではありません」


キロイバ 「いいや、騙されはせんぞ。できるわけがないのだ。


王が奴隷解放を許可したとしても、奴隷解放にはレアな能力が必要だし、その能力を持っていたとしても、隷属魔法の解除には、奴隷ギルドの人間しか知らない解除呪文パスワードが必要なのだ。


しかも、ギルドの専属奴隷には、ギルドの中でも限られた人間しか知らない、通常とは異なる秘密鍵が使われている。その解除呪文パスワードを知らぬ者が解放できるわけがない。


……まさか、解除呪文を解析クラックされた? いやいやそんなはずはない、解除呪文は適当に選んで当たるようなものではないし、総当たりで解除できるほど短くもないはずだ。


つまり……奴隷ギルドの許可なく隷属の魔法を解除するなど、ありえない事なのだよ」


リュー 「現実を直視しろよ。ミィはもう奴隷ではない。だから、お前達が行っていた非道・違法な契約魔法について証言してくれるそうだぞ」


ミィ 「…はい。思い出すのも悍ましい事ですが、私は、ノーリミットの隷属契約をされていました」


キロイバ 「馬鹿な……本当に隷属の魔法が解除されているというのか…?


…だが、本人が納得して契約したのなら問題あるまい? ミィとやら、お前は契約をする時にそれを受け入れたのではないのか?」


リュー 「そもそも、隷属の首輪を使わず、身体の見えない場所に隷属紋を刻むのは違法じゃないのか? え、それは違法ではない? あ、そうなのか。じゃぁそれはまぁいいや。だが、借金奴隷にノーリミットの隷属契約は違法行為、これは間違いないところだろう?」


ミィ 「私は、それが違法であると知らずに、借金が早くなくなるからと騙されていたのです」


リュー 「違法奴隷をそうと知っていて使った者は重罪、犯罪奴隷に落とされる事になっているそうだ。知っていたどころか、故意にそのような奴隷を生み出していた事、極めて悪質と言える。


今度はお前が犯罪奴隷として、辛い人生を歩む事になりそうだな」


キロイバ 「そっ、そんな証言、ソイツが嘘をついているだけだ! 確かに奴隷からは解放したのかも知れないが、だったらなおさら、ソイツが嘘をついていない保証がないではないか?


儂には懇意にしている貴族もたくさん居るのだぞ? ソイツ一人の証言と、ランドマスターである儂の証言、果たしてどちらが信用されるかな?」


リュー 「証人は他にも居る。ほれ」


リューがヒショーの首を持ち上げて見せる。


ヒショー 「すんませ~ん、全部正直に喋ってまいましたわ~胴体と切離されてまで秘密を守り抜くなんてできまへんてぇ」


リュー 「他にも証人はまだ居るぞ」


亜空間からさらに生きた首を取り出した。エージェントのランドである。殺さずに五体バラバラ状態で、証言するなら助けてやると言われていたのだ。


キロイバ 「そんな状態では、脅されて嘘の証言をしているだけだろう。証拠能力など認められんわ」


リュー 「重犯罪者の裁判では、証人は隷属の首輪を使って真実を話させられる事もあるんだろう? 証人も嘘をつけないし……もちろん、お前もそうなるわけだよな?」


キロイバ 「くうぅ!」


だがその時、キロイバが机の下のレバーを引いた。部屋の壁から何かが射出され、リューの首に巻き付く。


見れば、隷属の首がリューの首に嵌っていたのだった。即座にキロイバが命令を発する。


キロイバ 「動くな!


……はははっ馬鹿め。これでもうお前は逆らえないぞ。なかなか強力な力を持っているらしいじゃないか。ノーリミットの戦闘奴隷としてトコトンこき使ってやろうじゃないか」


リュー 「馬鹿だねぇ……」


キロイバ 「何?」


リューは首輪に手を掛けると、それを引きちぎってしまう。


キロイバ 「馬鹿なっ……何故動ける? それは古代遺物から出土した超強力な隷属の首輪だぞ?」


リュー 「貴重品を破壊してしまったのか? それは悪かったが、さっき言ったろう? 俺は、奴隷ギルドご自慢の、“高度なセキュリティの掛かった” 隷属の魔法契約をも、解除する能力があるんだよ」


キロイバ 「そんな能力、聞いた事もないが……」


リュー 「観念しろ。先程から闇属性の魔法で攻撃をしようとしてるようだが、まったく発動しないだろう? 俺が全て無効化しているんだよ」


キロイバ 「馬鹿な……そんな事、そんな能力、報告にないし…ありえない……」


リュー 「もうすぐ国からお前を捕らえるための騎士がやってくる。世の中を裏から支配しようとしてるとか? 相当悪い事してるらしいじゃないか。全て、洗いざらい白状してもらう事になるぞ。奴隷ギルドは解体かなぁ?」


キロイバ 「奴隷ギルドを解体などできるわけがない。奴隷ギルドは国に捉われない、世界を股に掛けた自由な組織だ。一国だけの判断でどうこうできるわけではない。それに、諸々の事はすべて、儂が命じたわけではない。儂も命令されてやっていただけなんだ。全ては、ワールドマスターの指示でやった事なんだ!」


リュー 「そうそう、それ。その、ワールドマスターについて、情報を教えてもらおうか? そのためにお前とくだらない会話を長々としていたんだ。国の方も、お前に色々と聞きたい事があるから、殺さないで捕らえてくれって話だったんでな」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


奴隷ギルド崩壊


乞うご期待!



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