第393話 お前がキロイバか?

とりあえず、決闘に勝ったという事で、果たし状に書いてあった約束通り、謝罪と賠償をしてもらおうと、リューとミィは奴隷ギルド本部に向かう事にした。


ヴェラはモリーと子供達が心配だという事で宿に帰った。パーシヴァル達から全く問題ないと報告を受けているが、暗殺者が来ていたと聞いたので、顔を見ないと心配なのだろう。


リリィは国に報告に行って応援を呼んできてもらう事にした。




   * * * * *




奴隷ギルドの本部。


受付嬢にマスターに会いたいと伝えるが……


受付嬢 「お約束はお有りですか? マスターは非常にお忙しい方なので、お会いする事はできません」


『いいから、居るのは分かってるんだ。俺が許可するから早く案内しろ』


受付嬢 「いえ、そう言われましても……って、え?! ヒショーさん?!」


最初、リューが言ってると思っていたのだが、その声がリューではない事に受付嬢は気づいた。


声も最初のリューの声とは違うし、声がリューの腹のあたりから聞こえてくる。


見れば、リューに抱えられた袋から、マスターの秘書のヒショーの顔が覗いているではないか!


ヒショー 「マスターには言ってあるから問題ない! 早くしろっ!」


袋に入れられている? それにしては袋が小さ過ぎるが、マジックバッグになっているのだろうか? とにかく、受付嬢はヒショーの首に急かされるままにランドマスター・キロイバの執務室へとリュー達を案内する事にしたのであった。


   ・

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   ・


ヒショー 「すいやせんマスター~~~、失敗してしまいました~~~てへ」


そこに居た人物にヒショーの首を掲げて見せるリュー。袋から出されたヒショーに胴体はついていなかった。


喋っているのを見れば分かる通り、首だけになったが死んではいない。首の断面には魔法陣が浮かんでいる。身体は別の場所にあって亜空間を通じて繋がった状態である。


リュー 「お前がキロイバか?」


キロイバ 「…い、いかにも、儂がこの国の奴隷ギルドを統べるランドマスター・キロイバだ。お前は誰だ?」


リュー 「俺はリュージーンだ。自分が果たし状を出した相手の顔も知らんのか?」


キロイバ 「そうか、お前がリュージーンか。果たし状は儂が出したのではない、秘書が勝手にやった事だ。儂は知らん、よって関係ない」


リュー 「やれやれ、どこかの政治家みたいな事を言うな。秘書がやった事については、その雇用主が責任を取るべきじゃないのか?」


キロイバ 「知らん、そこに居る秘書が勝手にやった事なのだから、ソイツに責任を取れば良い事だ」


ヒショー 「そんなぁ、お前に任せるって言ったじゃないですか! やり方も任せるって。任せたからには任命責任ってものがあるでしょ~に~」


キロイバ 「果たし状を出すとか思わんかったわ。しかも、まさか負けるとは。奴隷ギルドが誇る最強の戦闘奴隷を連れて行ったはずじゃなかったのか?」


リュー 「やっぱり知ってたんじゃないか。有罪だな」


キロイバ 「果たし状には負けたら謝るとか書いてただけだろうが。儂が謝ればいいのか?」


リュー 「謝るだけじゃなく、賠償もすると書いてあったが?」


キロイバ 「何についての賠償だ? 儂が何かお前にしたか?」


リュー 「俺を探ろうとし、俺を力づくで奴隷にしようとした。しかも、俺の仲間に暗殺者を差し向けただろう」


キロイバ 「だからそれはその秘書が勝手にやった事だ」


リュー 「お前がやれって命令したんだろう?」


キロイバ 「作戦の詳細までは知らんかったんだ、本当だ。果たし状を出した事も、事後承諾で聞かされたくらいだ」


リュー 「やれやれ。お前は責任者なんだろう? 責任を取るのが仕事だろうが。部下が勝手にやりましたって言っても、お前の管理不足なんじゃないのか? というか、事後承諾にせよ内容を知ってたようだし、有罪だろう。


まぁその話は後でいい。今日は別の話をしに来たんだ」


キロイバ 「別の話……?」


リュー 「奴隷ギルドが使っている違法奴隷についてだ。お前達はギルドで直接奴隷を使っているが……どうやら違法な隷属契約をしているらしいな?」


キロイバ 「…なんの事だか分からんなぁ」


リュー 「違法奴隷だと知っていて使った者は重罪だそうじゃないか? 俺はこの国の王から違法奴隷の調査と解放を行う権限を与えられている。お前は違法奴隷を扱っていた罪で奴隷落ち確定って事だ」


キロイバ 「何を言ってるのやら。奴隷ギルドが扱っている奴隷はすべてまっとうな奴隷だ。違法奴隷などおらんよ」


リュー 「ミィが居る前でよく言えるな? この娘は違法な奴隷契約で縛られ働かされていたんだが?」


キロイバ 「なぜ違法だと分かる? 本人がそう証言したとでも? そんなはずはないよなぁ? 守秘義務によって奴隷は自分の契約内容を人には話せないようになっているのだからな」


リュー 「お前は馬鹿だな。さっき俺が言った事を聞いていなかったのか? 俺は違法奴隷を解放する権限を持っていると言ったよな?」


キロイバ 「まさか……奴隷から解放したのか?!


…いや、そんな事ができるはずはない。つまり、ハッタリだな。騙されはせんぞ?」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


罠?


キロイバ 「お前も奴隷にしてやる~!」


乞うご期待!


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