第384話 奴隷ギルド本部、ついに動き出す

キロイバ 「正面から力で攻めるが、その隙に裏から搦手で攻める。奴に戦闘部隊を当ててそっちに引き付けている間に奴の仲間を落としてしまえ、毒でも薬でもいい、誘拐でもいい、手段は問わん」


秘書 「うわぁ、えげつな」


キロイバ 「ふん、奴隷ギルドを舐められては困るのだよ! 侯爵邸にすらも、使用人や部下の中に奴隷工作員を紛れ込ませてある。もちろん、王宮にもだ。今や奴隷ギルドは裏から世界を支配しているのだ。その力を思い知らせてやろうではないか! 儂はいずれ奴隷ギルドのワールドマスターになるつもりじゃ。こんなところで躓いてはおれんのだよ」


秘書 「あまり背伸びはせんほうがいいんちゃいますか? ひっ! そんな睨まんといて下さい~分かりました! では優秀な戦闘奴隷部隊を手配いたしまひょ。あと、裏工作部隊もですね、暗殺が得意な連中を集めるよう指示しときますわ」


キロイバ 「ときますわ~じゃない、指揮はヒショ―、お前が直々に執れ」


ヒショー 「ええ~わいがでっか?」


キロイバ 「ああ、お前だよ。他の者は信用ならん」


ヒショ― 「はぁ、もう、しゃーないですなぁ……


あ、そうえば、エージェント・ゼロ号、使ってもええですよね?」


キロイバ 「アレか……まぁ、構わんが」


ヒショー 「なぜ、ゼロをみんな使わないです? 優秀だって話なのに」


キロイバ 「む……何故だろうな。なんとなく、あまり使ってはいけないという暗黙の了解のような事になっていてな。もしかしたら上からの意向なのかも知れん」


ヒショー 「ランドマスターより上というと、ワールドマスター?」


キロイバ 「……いや、ワールドマスターの意向など儂らには計り知れんよ。まぁ別に使ってはいけないと言う理由も思い当たらんから、いいんじゃないか?」


ヒショー 「らじゃ。では、暗部に連絡を取らせます」




   * * * * *




『ゼヒロ、仕事だ』


かつて、Sランク冒険者として名を馳せた男、ゼヒロ。冒険者時代は真面目な男だったが、よりによって引退後にギャンブルにハマってしまった。Sランク時代に莫大な財産を稼いだゼヒロだったが、調子に乗ってそれを全てギャンブルに注ぎ込み、そして失ったのであった。


最初、その程度の額はまた自分が冒険者に復帰すれば簡単に稼げるとゼヒロは考えていた。しかし、タイミング悪く他の支払いも重なり、借金はゼロどころかマイナスになってしまい、即座に身売りするしかなくなってしまったのだ。


そのくらいの金額はすぐに稼いで返すから少し時間をくれとゼヒロは債権者達に言ったのだが、それを認めない者がおり、稼ぐ間もなくゼヒロは捕らえられ奴隷にされてしまったのだ。最終的にそれを買い取ったのが奴隷ギルドであった。もしかしたら、奴隷ギルドがゼヒロを奴隷にするために仕組んだ事だったのかも知れないが…。


だが、ゼヒロの能力は戦闘特化であり、その大雑把な性格と相俟って、細く気を配る必要があるような任務には向いていなかった。そのため、奴隷ギルドでもエージェントや工作員として使う事ができず、ここぞと言う時の戦闘奴隷として使うしかなかったのであった。


しかし、奴隷ギルドが戦闘員を必要とするシーンというのは意外と少なく、なかなか出番がない。暇を持て余したゼヒロは狩りに出掛けてせっせと高ランクの魔獣を狩り、それを売り飛ばしては金を稼いでいたので、借金はあと少しで完済となる見込みである。


おそらく、奴隷ギルドの奴隷として、これが最期の任務になるだろう。


ゼヒロ 「もうすぐだ。借金を完済すれば俺は自由の身だ。そうしたら……


…また思い切りギャンブルを楽しんでやる」


ゼヒロは奴隷落ちしてからはギャンブルは禁止されていたので、欲求不満だったのである。何も学んでいないようなので、またすぐ奴隷落ちしそうに思えるが…。


ゼヒロ 「今度は、借金がマイナスにならない程度にやろう。全財産賭けたのは失敗だった」


多少は学習した部分もあったようだ。果たしてそれが実行できるかどうかは分からないが。






ゼヒロの他にもう一人、元Sランクの戦闘奴隷が呼ばれた。コリンという男である。コリンは、自身はそれほど戦闘能力が高いタイプではなかったが、Sランクのテイマーであり、危険度Sランクの魔物を使役することができるのだ。


他にも腕に自信のある戦闘奴隷が集められた。元Aランクの冒険者やかつて名の売れた騎士だった者、中には指名手配されていた凶悪な盗賊なども居た。


さらにヒショ―は、正面攻撃部隊とは別に、奴隷ギルドの中でも暗殺等の裏の仕事を専門とする暗部のメンバーを招集した。




  * * * * *




ヒショ― 「と、こんな感じですが、いかがでっしゃろ?」


キロイバ 「結果が出せればなんでもよい。で、どうする? いつ仕掛けるのだ?」


ヒショー 「そうでんなぁ、まずは連中の行動パターンを分析して、襲うタイミングを図るのが定石でっしゃろか」


キロイバ 「馬鹿モン、それではこれまでと変わらんでわないか! そんなチンタラした事やっとらんで、多少強引なやり方でも構わんからすぐにでも結果を出せ!」


ヒショ― 「しかし、ターゲットのリュージーンって奴は、王都でも有名な高級宿に泊まっとりますからな、いきなりそこを襲撃すんのはさすがにマズイんちゃいますか? 集めた戦闘部隊は脳筋の奴ばっかりなんで、町中で暴れさせると騒ぎが大きくなりまっせぇ?」


キロイバ 「だったら街の外におびき出せばよかろう」


ヒショー 「どうやって?」


キロイバ 「知らんわ、それを考えるのがお前の仕事だろうが。なんなら手紙でも書いたらどうだ? “お話があるので街の外に来て下さい” とでも書けば案外出てくるかも知れんぞ?」(笑)


ヒショ― (手紙か…案外、いいかもしれまへんなぁ!)



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


リュー、果たし状に応じる


乞うご期待!


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