第385話 果たし状を貰ったので行ってみた

夜、宿で食事をしているリュー達の所に冒険者ギルドの職員が訪ねてきた。誰かから手紙を預かっているという。しかも、返事を持って帰らなければならないのでその場で読んで返答してくれと言う。


手紙を見ると、差出人は奴隷ギルドのようだ。


リュー 「なんで冒険者ギルドの職員が奴隷ギルドの手紙を届けに来るんだ?」


職員 「さぁ、私は上司に頼まれただけなので。正直迷惑なんですけどね、帰りに届けてくれとか言われて。そもそも方向逆だし! しかも、返事をすぐに貰って持って帰ってこいとか、つまり帰る途中じゃないじゃないですか! まぁでも、普段はすごく良い上司なので、仕方なく引き受けたんですけどね。何か事情があるのでしょうが、深入りしないのが面倒に巻き込まれないコツですからね。そんなわけで、すぐに返事を下さい、早く帰りたいんで」


もしかしたら、その上司というのが奴隷ギルドの隠れ工作員なのかも知れない。あるいはその上司も誰かに頼まれただけかも知れないが。


とにかく職員が早くしろと言うので手紙の内容を読んでみた。


ヴェラ 「何が書いてあるの?」


リュー 「いや、よく分からん内容なんだが……詫び状のような果たし状?」


ヴェラ 「どいう事??? 誰かが決闘を申し込んできたって事?」


リュー 「差出人名は、奴隷ギルドのマスター・キロイバと書いてあるな。なんか、これまでの事を謝罪したいから、街の外の森の向こう側にある草原に来てくれと」


ヴェラ 「謝罪したいのに、街の外に来いって?」


リュー 「ああ。そして、そこで決闘して、負けたら謝罪と賠償してやる、と……」


ヴェラ 「そ、そう…意味不明ね。どうするの?」


リュー 「いつもなら断るところだが、面白そうだから行ってやるかな」(笑)


リューは行くと返事を伝えると、メッセンジャーのギルド職員はそそくさと帰っていった。




  * * * * *




そして、手紙にあった指定の日。


奴隷ギルド本部、マスターの執務室にヒショ―がやってきて言った。


ヒショー 「じゃぁマスターはん、いきましょか」


キロイバ 「? どこへだ?」


ヒショ― 「リュージーンはんとの待ち合わせ場所にですがな」


キロイバ 「なぜ儂が?」


ヒショ― 「そら、リュージーンはんを呼び出すのにマスターはんの名前で手紙をだしましたからでっせ。呼び出した本人が居なかったらまずいんちゃいますか?」


キロイバ 「なんじゃとぉっ! 一体なんと書いたんだ?」


ヒショ― 「決闘がしたいから街の外に出て来い、と。あ、それだと来ないかもしれないんで、『もし儂に勝ったらこれまでの事を謝って賠償もしてやる』と付け足しておきました。どうなるかと思いましたが、どうやら食いついてきましたでぇ」


キロイバ 「何を…馬鹿かお前は!!」


ヒショ― 「まぁまぁ、戦闘奴隷を使って仕留めるか、連れを人質にとって脅すか、どっちにしろ、ココで首根っこ押さえてしまえば大丈夫ですってぇ」


キロイバ 「儂は行かんぞ! お前達だけで行ってこい!」


ヒショ― 「ええ~でもぉ~」


キロイバ 「奴には儂の代理だとでも言えばよかろう!」


ヒショー 「ほうでっか? ほな、そう言っときますかぁ」




  * * * * *




そして、決闘に指定された草原。場所は、街から出て、東にある森の向こう側になる。街からは森があって見えない。当然、そこまで行くためには森の中を抜けていかなければならない。とはいえ、王都の周辺はそれほど危険度の高い魔物や獣は出ないので、冒険者であれば特に問題はない。


リューの他にヴェラとミィ、リリィもついてきた。何があるか分からないのでリューは一人で行くつもりだったのだが、パーティのメンバーなのだし、別に一人で来いとも書いてなかったから一緒に行くと言い出したのだ。


例によってレスターとアネットとモリーは宿に居残りであるが、荒事になる可能性が高いので仕方がない。宿には子供達二人の両親(スケルトン)とパーシヴァルとエヴァンスを護衛に残してあるので問題ないだろう。


ランスロットの姿が見えないが、亜空間に控えていて状況を見ているので、必要であればいつでも出てくるそうだ。リューが一人居れば必要になる事などまず無いだろうが。


草原に着くと、奴隷ギルドの者たちであろうが、十数名が既に待っていた。


ヒショ― 「仲間を連れてきましたか。手紙には一人で来いと書いておいたはずですが」


リュー 「いや、書いてなかったぞ?」


懐から(と見せかけて亜空間から)手紙を出して見てるリュー。


ヒショ― 「あれ? 書き忘れたかな? まぁいいでしょう」


リュー 「いいでしょうって、そっちも随分大人数じゃないか?」


ヒショ― 「ええ、そりゃ、大勢で一人をボコったほうが効率がいいですから」


リュー 「卑怯な事を臆面もなく言うなぁおい」(笑)



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


戦闘奴隷 「もう勝った気でいるのか? 舐めるなよ?」

リュー 「もう始めていいのか? じゃぁ、遠慮なく」


乞うご期待!



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