第376話 ヴェラのお仕置き

続いて、ヴェラとミィ、ランスロット達がゲートから出てきた所でリューは転移ゲートを解除した。そのままにしておくとギルドから出てくる者が全員ダンジョンに来ることになってしまう。


ランド 「馬鹿な……これはまるでダンジョンの転移トラップに掛かったみてえだ……まさか? 転移魔法が使えるのか? いや、そんなのありえねぇ」


リュー 「ありえない事があるのが世の中さ」


リューは先程発行されたギルドカードを手に持ったままだったので、それをランドに見えるように掲げてやった。


ランド 「なんだ? ギルドカード? だが、そんな色のギルドカード見たことねぇぞ?」


ランドはそのギルドカードを覗き込むようにして見て、表面に描かれたSの文字を読み取り、驚愕の声をあげた。


ランド 「…Sランクぅぅ?!」


ランスロット 「ちなみにアナタのランクは?」


同じくSランクのカードを見せつけながらランスロットが尋ねる。パーシヴァルとエヴァンスもギルドカードを掲げて見せた。


ランド 「嘘だろ……Sランクが四人も?! 


……は、はは~ん。


あやうく騙されるところだったぜ。伝説級がそうそう揃うわけがない、偽造カードだな?!


奴隷ギルドに作ってもらったのか?! 本部もよくやるなぁ」


ランスロット 「これは冒険者ギルドで発行された本物のギルドカードですが? 失礼な方ですねぇ」


ヴェラ 「私がやる・・わ、リュー達は黙って見てて」 

 

ランド 「なんだ姉ちゃん? お前も偽造Sランクか?」


ヴェラ 「私はDランクよ」


ランド 「なんでぇ、俺はAランクだぞ? 格下が偉そうにしてんじゃねぇよ」


ヴェラ 「…あんた、ミィに随分酷い事したらしいわね?」


ランド 「酷い事? 記憶にねぇなぁ? かわいがってやった事はあったけどな。ミィも楽しんだだろ? アクセサリまでプレゼントしてやったのに。まぁ、外からは見えないけどな」


リュー 「そのアクセサリってのはこれのことか?」


リューが空中で何かを摘むような仕草をすると、指の間に宝石があらわれた。


ミィの肉体の時間を巻き戻した時、宝石の存在にリューも気づいていたのだが、何か意味があるのかと思い、そのまま残してあったのだ。なんとなく、デリケートな部分の問題なので、リューも気を使って訊かずに居たのだったが、それが本人の意図したモノでないなら残しておく理由はないので、転移で取り出したのである。


ミィは自分の乳房に違和感を感じ、胸に手を当てて驚いた表情かおをした。胸のなかにずっとあった堅いシコリがなくなっている。(宝石が収まっていた場所にできた空洞・・も、リューは時間を巻き戻してちゃんと元の状態に戻してやった。)


ランド 「お前が取り出したのか? また・・切り開いたのか、酷いやつだな。さてはお前、俺と同じ趣味だな?」


リュー 「一緒にするな。転移で取り出しただけだ」


ヴェラ 「何がアクセサリよ、本当に下衆な男ね」


ヴェラの前に火球が浮かぶ。


ヴェラ 「女を甚振るのが趣味の最低な男は、簡単なお仕置きでは済ませる気はないわよ」


ランド 「へっ、Dランクごときが俺とやろうってか? ……なんだ、動けねぇ!」


黒い触手がランドの両手両足そして首に巻き付いていた。ヴェラが闇属性の魔法を発動し、ランドを拘束したのだ。


ヴェラは人間の女性の姿に化けてはいるが、その正体は、全属性の魔法を高度に使いこなす種族、ケットシーである。魔力量が有限である事と時空属性の魔法が使えない事を除けば、本気になった時の魔法の実力は、全属性魔法を制御する仮面を付けた状態のリューにも迫る。未だDランクなのは本人がランクアップを望んでいないだけで、その実力は十分Aランクに合格するレベルなのである。


そして放たれる火球。さらに二発、三発、ごく小さい火球だが、連続してランドの顔に直撃する。火傷の痛みで悲鳴をあげるランド。


ランド 「ぎゃっ、ぎゃぁぁぁっ、やっやめろ~! ソイツは奴隷だぞ! 奴隷に何をしようが自由だろうが!」


ヴェラ 「リュー、教えて構わないわよね?」


リュー 「構わん。どのみち、コイツはもう帰す気はない」


ヴェラ 「ミィはもう奴隷じゃないわ。解放されたのよ」


ランド 「まさか! …借金を返し終わったのか? いや、ソイツの借金はそう簡単に返せる金額じゃなかったはずだ。まさか勝手に解放したんじゃないだろうな?」


ヴェラ 「そうよ? 勝手に解放させてもらったわ」


ランド 「馬鹿な奴だな、借金奴隷が逃亡したら、次は極刑が待ってるだけだぞ!」


ヴェラ 「いいえ、解放は合法よ。ミィの隷属契約こそが違法だったのだから。違法な隷属契約を強要した奴隷ギルドは責任を取る必要があるわよね?」


そう言いながら今度は風刃ウィンドカッターを飛ばし、ランドの太ももを斬り裂いた。


ランド 「うぎゃあぁぁやめろ! ミィが違法奴隷だったとしても、それはギルドがやった事だ、俺は関係ないだろうが」


ヴェラ 「関係あるわよ。あなた、知ってたんでしょう?」


ランド 「何をだ?」


今度は氷槍アイスランスがランドの肩を貫いた。


ランド 「うぎゃぁわ、分かった、何でも話す! 何を喋らせたいんだ?」


ヴェラ 「ミィが違法奴隷だって知ってたんでしょ? って言ってるの」


ヴェラは持っていた短剣を鞘から抜くと、刃をランドの顔に強く押し当て引いた。ランドの頬が切れ血が吹き出す。


ランド 「やめっ! ああ、知ってた、知ってたよ! エージェントならみんな知ってたよ、奴隷ギルドが違法な隷属契約をしてるってな」


ヴェラ 「知っていながら、それを看過し、一緒になって奴隷を弄んでた。つまり、あなた達も有罪よね?」


ヴェラは短剣を胸に突き刺す。肋骨に当たって止まった刃を、そのまま押し付けながら引き下げる。肋骨の表面は傷つき、大胸筋は切り裂かれ血が吹き出す。


ランド 「うぎっ、ぎぎっ、悪かった、謝る! 俺は甚振るのは好きだが甚振られるのは嫌いなんだよ~」


ヴェラ 「最低のクズね……ミィ、こっちに来て、恨みを晴らすといいわ」


ランド 「おい、離せ! 動けない俺を甚振るのは卑怯だぞ! 正々堂々とやれ!」


ヴェラ 「逆らえない女を斬り刻むのが趣味の男がそれ言う?


でも、そうね、いいわ。ミィは正々堂々、自分で乗り越えるべきね」


そう言うと、ヴェラはランドに治癒魔法を掛けて傷を治してやった。


ランド 「お…? おお!」


自分の身体を見て喜ぶランド。


ヴェラ 「さぁ、ミィ、剣を抜きなさい! そして、その手で恨みを晴らしなさい!」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


ヴェラのお仕置きぱーと2


乞うご期待!



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