第357話 口約束ではなぁ…

リュー 「そりゃ言葉くらい喋るさ、でなければ冒険者登録などできまい?」


ロウフ 「そっ、それで、本日は、どのようなごにょっ…御用件で?」


ランスロット達は再び仮面を装着し、威圧感は完全に収まっているが、思わず丁寧に話してしまい噛んでしまうロウフ。


受付嬢 「ランクアップ試験のために来られたとか」


ロウフ 「ランクアップ試験?」


リュー 「ああ、紹介状もある」


やっと、ダヤンの冒険者ギルドのギルドマスター・キングの書いてくれた紹介状を渡すことができた。


徐々に調子を取り戻してきたロウフは、もう一度四人のギルドカードに記録されている情報を確認した後、紹介状に目を通したのだが……


ロウフ 「ほう、全員Bランクか。ダヤンの街ではそれ以上のランクを認定できる者が居ないため、王都で試験をしてほしいと、なるほどな……何?! Aランクを通り越してSランクの試験を受けさせろだと? 何言ってんだ?」


紹介状にはSランクの認定のためを試験をすべきだと書いてあるようだ。


ロウフ 「なになに、経歴や推薦状等、条件も揃っていると……。だが、後ろのスケルトンはともかく、お前がSランク?」


下から上にリューを舐めるように見るロウフ。


リュー 「王都の冒険者ギルドの職員でもそんな程度か。見かけで判断すると痛い目を見るかも知れんぞ?」


少しムッとした顔でロウフが答えた。


ロウフ 「…別に見掛けで判断はせん。大事なのは魔力だ、この魔法王国においてはな。


たとえ見た目が子供であっても、膨大な魔力量を持つ危険な者も居る。だがな……


…お前からは魔力をまったく感じないぞ? 俺もそれなりに見る目はあるつもりだがな。


強者には強者の魔力というものがある。たとえ魔力量は隠蔽していても、漏れ出てくる魔力に雰囲気というか、凄みというものが感じられるものなんだよ。だが、お前からはそれを感じない」


ランスロット 「あまり失礼な事を言わないほうが良いですぞ? リューサマは世界最強です。不死王様のお墨付きですぞ」


ロウフ 「不死王? 誰だ? 知らんな」


ランスロット 「アンデッド界でその名を知らぬ者のない不死王様を知らないとは!」


ロウフ 「なんだそのアンデッド界ってのは! 俺は人間だ、そんなの知るわけ無いだろが!


……ま、まぁ、それだけ凄みを感じるスケルトンを従えているんだ、テイマー、いやネクロマンサー? としての能力は一流なんだろうな。


だが、それだけではSランクどころかAランクも与えられんぞ。Aランク以上というのは、本人にも高い能力が求められるんだ」


ランスロット 「リューサマは戦闘能力も超一流ですぞ?」


リュー 「それで、試験は受けられるのだろう?」


ロウフ 「ふん、まずは事前確認をさせてもらおうか。それ次第では……


推薦状には全ての条件はクリアされていると書いてあるが、インチキかも知れんからな。念の為、こちらでもすべて確認させてもらう」


ロウフ(受付嬢に向かって) 「おい、冒険者としての経歴・実績を確認し、紹介状の内容と付き合わせろ」


ロウフ 「あとは魔力の測定だな。ついてこい、ちょうど今なら空いている」


リュー達はロウフを追って奥の部屋に入った。中央に巨大な水晶玉が設置されている部屋であった。


ロウフ 「この王都にしかない特別性の魔力測定器だ。誤魔化しは効かないぞ?」


リュー 「…高そうだな……」


ロウフ 「触れてみろ。どうした? インチキがバレるから触れたくない、というわけじゃないよな?」


リュー 「以前、限界を超えた魔力を注ぎ込んで測定器を壊してしまった事があってな。この測定器にはリミッターはついているか?」


ロウフ 「ふふん、なかなか “吹く” じゃないか。測定器を壊してしまうほどの魔力量など、魔神でもない限りありえん、さすがに大ボラが過ぎるぞ。別に測定したくないならそれでも構わんが、ランクアップ試験も受けさせんぞ?」


リュー 「一応念のため確認だ、後で弁償しろと言われても困るんでな。もし壊れてしまっても責任はアンタが取る、って事でいいんだな?」


ロウフ 「言っておくが、故意に破壊するような真似をしたら罰せられるぞ? 普通に測定しただけで壊れたなら、いいだろう、その責任は俺が取る」


リュー 「口約束ではな。そんな事言ってないとか言い出すかも知れんし」


ロウフ 「なんだと! いい加減にしろ! 誤魔化しはもういい! 試験は終わりだ!」


苛ついたロウフは測定を打ち切って部屋から出ようとしたが、その前にランスロット達が立ち塞がった。仮面を着けていても漏れ出すスケルトンの無言の圧力にロウフが少しビビる。


そこに受付嬢が入ってきた。ほっとした顔のロウフ。妙な雰囲気に少し首を傾げる受付嬢。


受付嬢 「あの…?」


ロウフ 「リンダ、どうした?」


リンダ 「書類の確認終わりました。紹介状の通り、一切問題ありません」


ロウフ 「間違いないか? 経歴詐称とかないか、ちゃんと調べたのか?」


リンダ(少しムッとして) 「ちゃんと調べました!」


リュー 「丁度いい、その受付嬢に証人になってもらおう、構わんだろう?」


リンダ 「?」


ラスロット 「リューサマが魔力の測定をして、測定器が壊れてしまった場合、責任はこちらにいるロウフ殿がとってくれると言っているのです。ロウフ殿がそう言っていたと、証人になって頂ければと」


リンダが首を傾げながらロウフを見た。顔を顰めながら、しかし横目でランスロットをチラ見し、ロウフは黙って頷いた。それを見てリンダも頷いた。


リュー 「ではやってみるぞ」


リューが巨大な水晶に近づき触れた。しかし巨大な水晶だ、直径は1メートルもあろうか。これは一体どうやって作ったのだろうか? この世界ではこのサイズの水晶が採れるのか? そんな事をリューが思っていると、ロウフが後ろから声を掛けてきた。


ロウフ 「どうした! 何も起きないじゃないか! インチキがバレたな!」


ロウフの肩にパーシヴァルが手を置き軽く握った。パーシヴァルにとっては軽くであっても人間にとってはかなりの強さである、ロウフは硬直して黙った。


リュー 「まだ何もしてないよ。じゃぁこれから魔力を注ぐぞ」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


測定器はブツンと音を立てて沈黙する


乞うご期待!



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