第358話 やあっちまったなぁ!
ロウフ 「これから注ぐ? 何を言ってるのか、普通は触れただけで自動的に測定されるん…」
だが、リューが魔力を注ぎ始めると、水晶が光り始める。
ロウフ 「そんな馬鹿な……」
注ぐ魔力をどんどん増やしていくリュー。
水晶の光がどんどん強くなっていく。ブーンという振動音がし始める。
やがて、目を開けていられないほど眩しい光をが放った後、水晶は ブツン という音とともに光を失った。
リューはデフォルトで装着している銀の仮面の防御効果と竜人の視神経の強さで平気であったが、ロウフと受付嬢リンダは眩しい光に目が眩んでしまい、水晶が光をうしなった事にしばらく気が付かなかった。(ランスロット達も特に問題ないようである。そもそもスケルトンに眼球があるのかどうかよく分からないのだが。)
やがて、目が慣れてきて、水晶が完全に光を失っているのを見たロウフ。
水晶の台座に嵌っている宝石類は測定中でなくとも僅かに光を放っていたのだが、それも完全に消灯状態である。
ロウフ 「おい、まさか……」
慌てて測定器に駆け寄るロウフとリンダ。
リンダ 「機能が停止しています」
ロウフ 「や……」
リンダ 「?」
ロウフ 「やあっちまったぁ~~~!」
リュー 「ふ、男は黙って責任を取れよ」
『何の騒ぎだい?』
そこに、男女二人の人間が入ってきた。
ロオフ 「マスター! それが、その、……コイツが! そう、コイツが! 測定器を破壊しやがったんです! コイツガー!」
入ってきた二人のうち男性はユーセイ、女性のほうはウテナと名乗った。ユーセイはまだ若いがこのギルド(冒険者ギルド王都東支部)のマスターで、ウテナがサブマスターだという。
測定器の故障の責任はリューにあるかのように報告しようとしたロウフであったが、リューが否定するまでもなく、すぐにリンダがちゃんと否定してくれた。
ユーセイ 「つまり、責任は全てロウフにある、という事だな?」
ロウフ 「そんなっ!」
ウテナ 「大丈夫よ、これは限界を超えた魔力を注がれたのでブレーカーが落ちただけのようだわ。再起動すれば直る」
装置をチェックしていたウテナが言った。
ロウフ 「えっ! 本当ですか!」
ウテナが裏に回って何か操作したところ、ブーンという音と共に測定器の台座に光が戻った。
ロウフ 「良かった~」
ウテナ 「だけど、ちょっと信じられない。この測定器は特別なのよ、各ギルドにある測定器よりはるかに上限も高いはずなのに……アナタ、本当に魔力を注いでコレをやったの? 何かトリックを使ってブレーカーを落としただけではないの?」
ランスロット 「コレ! そこの女、失礼な事を言うものではないですよ?」
ユーセイ 「待て! …君、リュージーンと言ったな? 中央本部のほうに、Sランク認定の要請が来ていたという、リュージーンか!」
ロウフ 「へ、中央に?」
リンダ 「直接中央に連絡が行っていたので、
ウテナ 「宮廷魔道士長や、周辺国の国王らの推薦まで複数あると言ってたわね」
リンダ 「それは確かに、記録にありました」
ロウフ 「何?! それをなんで先に言わない?!」
リンダ 「話すタイミングもなかったじゃないですか!」
ユーセイ 「それだけじゃないぞ、後からエドワード国王の推薦状も届いたそうだ。それで、対応を協議するために今日呼ばれたのだよ」
ウテナ 「なるほど、そんな人物なら、道理で……
…と言いたい所だけど、でも、正直言って、測定器をダウンさせるほどの魔力っていうのは信じられないのよね」
ユーセイ 「そうだな、もう一度やって見せてもらえないか? できるならだが」
ウテナ 「え?」
ランスロット 「できるなら、とは、ギルドマスターもお疑いという事のようですなぁ」
ユーセイ 「ああいや違うんだ、スマン。先程の測定で魔力を使い切ってしまってる可能性もあるかと思ったんだ」
ランスロット 「なるほど。別に問題ないですよ?」
リュー 「なんでお前が答える。問題ないけど」
ユーセイ 「それならウテナも納得するだろう?」
ウテナ 「うーん、でも、壊れないかしら……」
ユーセイ 「ブレーカーが作動するから大丈夫なんだろう?」
ウテナ 「そう、なん、だけどね……」(そんな事何度もやって、本当に大丈夫かしら……?)
ユーセイ 「じゃぁ、やってみせてくれるかい?」
リューは黙って測定器に近づき、水晶に触れた。再び魔力を流し始めると水晶が光り始める。
リューが注ぐ魔力を増やすほどに光がどんどん強くなり、目を開けていられないほど光が強くなった後、水晶はブツンという嫌な音とともに再び光を失った。
ユーセイ 「……」
ウテナ 「……」
眩んだ目が治るのを少し待ってから、黙って測定器に近づき、点検を始めるウテナ。
一通り点検した後、再び起動すると、測定器は無事に起動した。
ウテナ 「良かった、壊れてはいないわ」
測定器の裏から出てきたウテナ。
ウテナ 「…見たところ、特にトリックを使ったようにも見えなかった。
だけど……
もし本当に、測定器の上限を超える魔力を注いだのだとしたら、国が、いえ、世界が崩壊するようなレベルの話だと思うんだけど……?
あなた、一体どれだけの魔力を持ってるというの?」
リュー 「さぁ? 上限はとくにない、かな」
ランスロット 「無限と言って差し支えないでしょう、リューサマ、魔力切れとか経験した事ないですよね?」
リュー 「ないな」
ユーセイ 「ない? 魔力を使って疲労感くらいは感じるだろう?」
リュー 「そう言えば、そういうのも感じた事ないな……」
それはそうであろう、リューは自身の体内に魔力をほとんど持っておらず、外界から魔力を生成して使っているのだから。
顔を見合わせたユーセイとウテナであった。
― ― ― ― ― ― ―
次回予告
魔導師ランクの認定証があるなら最初から見せてよ~~~
乞うご期待!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます