第356話 スケルトンを見た職員漏らす

決して大柄とは言えない体格のリューである。


その、一見華奢な少年という風貌のせいで、初めて行く冒険者ギルドではいつも舐められ絡まれる事になるのだが……


今回は少し雰囲気が違った。


ランスロット・パーシヴァル・エヴァンスがリューの後ろから入ってきたからである。


冒険者ギルドに入ったリューとランスロット・パーシヴァル・エヴァンスの四人。


昨晩、普通に人間として溶け込めると言い切っていたランスロットであったが、実はそうでもなかった。


たしかに、ランスロット達は仮面の認識阻害の効果によって、魔物スケルトンがギルドに入ってきた、というような認識のされ方はしていない。禍々しい魔物の “気” はちゃんと抑えられており、一応、人間だとは思われている。


思われてはいるのだが……


仮に、スケルトンではなく本当の人間であったとしても、ランスロット達が目立ってしまうのは仕方ないだろう。


なにせ、三人とも2m近い高身長である。それだけでも目立つ。


加えて、骸骨の仮面を着け、ローブを纏いフードを目深に被っているのだ。たとえ中身が人間であったとしても、暗がりで見たらリッチロードと見紛うコスプレ状態である。


いくら『仮面はただの趣味です、普通の人間です』と言い張っても、その異様な雰囲気は “普通” だとは思ってもらえないだろう。


必ず、新人や余所者に絡む冒険者がお約束の冒険者ギルドでも、さすがにランスロット達を見て絡もうとする者は居なかったのであった。






不気味な迫力のある者達が入ってきた事で静まり返ってしまったギルドの中、リューは受付に向かった。


受付嬢 「い…いらっしゃいませ! 冒険者ギルドへようこそ! 本日はどのようなご用件でしょうか?」


受付嬢は話しかけて来たのが小柄なリューだったのでちょっとホッとした様子だった。


リュー 「ランクアップ試験を受けに来たのだが」


受付嬢 「それでは、冒険者ギルドカードを見せて頂けますか?」


リュー 「ああ。それと、ダヤンの街のギルマスからの紹介状を持ってきているのだが」


リュー達はギルドカードを渡す。リューは続けて紹介状を受付嬢に見せようとしたのだが、受付嬢はランスロット達のギルドカードを見て動きが止まった。


受付嬢 「種族:スケルトン?!」


リュー 「ああ、彼らは確かに魔物だが、俺の従魔として登録されている。従魔を連れている冒険者など珍しくもないだろう?」


受付嬢 「ああ、確かに、従魔登録されていますね……。しかも、冒険者登録もされている…?」


リュー 「ああ、冒険者でもある。それが可能だと、ダヤンのギルマスが本部に確認しているはずだが?」


受付嬢 「し、少々お待ち下さい……」


受付嬢は慌てて奥に走っていき、少しして誰かを連れてきた。背のあまり大きくない男である。


ギルマスにしては迫力がないなと思ったら、受付嬢はその男を「チーフ」と呼んでいた。


チーフ 「スケルトンを従魔にしている冒険者というのはお前か?」


リュー 「あんたは?」


チーフ 「おれはロウフだ、ギルド職員のチーフをやってる。悪いな、今日はギルマスもサブマスも “中央” に行ってて居ないんだ」


そう、ここは王都東支部なのであった。やはり中央に行くべきだったのか?


ロウフ 「それで、スケルトンというのは後ろの三人か? 本当にスケルトンなのか? 骸骨のお面を被ってからかってるだけじゃないだろうな? ちょっとそのふざけた面を取って、フードもとって顔を見せてみろ?」


言われるままに仮面を取り、フードを下ろすガイコツ達。


現れた金・青・黒のメタリック骸骨頭。そして、一気に解放される禍々しい威圧感。


空気が一瞬で氷点下になった。


『スケルトン!!』


冒険者達に緊張が走る。中には剣に手を掛けている者や呪文詠唱を始めた者も居た。


リュー 「おっと、手を出させなるなよ? もし下手に手を出したら五体満足で居られる保証はしないぞ?」


ロウフが手をあげて冒険者達を宥める。


ロウフ 「…本当に、スケルトンなのか……」


リュー 「ランスロット、ちょっと素を出してみせてやれ」


リューにそう言われ、ランスロット達が、それでもそれなりに押さえていた “気” を全て開放する。


撒き散らされる理不尽なほどの禍々しい気、威圧感。


その場に居た者達は全員圧倒されてしまう。受付の中で事務仕事をしていた女性職員の中には小便を漏らしてしまった者も居たようだ。圧倒的強者の威圧を前にした時、恐怖心というのは肉体が感じる本能的反応なのだ、仕方がないだろう。


リュー 「ランスロット、もういい」


リューは悪い事をしたと思い、漏らしてしまった女性職員にそっと【クリーン】を掛けてやった。


リュー 「彼らは俺の従魔であり、冒険者登録もしている、危険はない。手を出さなければ、な」


ロウフ 「アンデッド系の魔物を従魔になんて聞いた事ないぞ…」


ランスロット 「従魔というより従者と言ってほしいですな」


ロウフ・受付嬢・冒険者達 「シャベッター!」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


え、魔力測定やんの?

水晶壊れたらオマエのせいって事でいい?


乞うご期待!


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