第351話 いや、あれやると、なんか気持ち悪いなぁって
リュー 「…と言って退くわけがないか。仕方ないな」
ランスロット 「リューサマ、殲滅しますか?」
リュー 「いい、俺がやる」
光剣を抜いたリューが兵士達に向かってゆっくり歩き始めた。
リュー 「降りかかる火の粉ならば払わせてもらうだけだ。退くなら今のうちだぞ?」
リューの警告も無視して、一人の兵士がリューに向けて火球を放ってきた。
それを皮切りに他の兵士達も一斉に火魔法を放つ。
だが、放たれた火球は全て分解されて消失してしまう。そしてリューは兵士達の背後に転移。光剣が舞い踊り、次々と兵士達全員の腕や足が地面に撒き散らされていくのであった。
倒れて呻く兵士たちを見ながらレンツォが慄く。
レンツォ 「き…さま、こんな事して、許されると思うのか?」
リュー 「俺は、襲われたから身を守っただけだが?」
ランスロット 「その割には自分から近づいて行ったような気がしますが」
リュー (余計なことは言わんでいい)
レンツォ 「命は取らなかっただと? 手足を失って、コイツラは騎士としては死んだも同然だ」
リュー 「いや、安心しろ、ちゃんと治してやる。それを見れば、疫病が解決したって話を信じる気にもなるだろう? ヴェラ、モリー、頼む」
え、アタシ達がやるの? という顔をしているヴェラがリューに近づいて囁いた。
ヴェラ (ちょっと、こんなにたくさん、いくらアタシでも魔力が持たないわよ)
リュー (手足を集めてくれればいい。治療は俺がやる)
ヴェラ (なんで自分でやらないのよ?)
リュー (手足集めてきて誰のか確認するのが手間なんだよ。ランスロットの部下にやらせてもいいが、スケルトンが出てきたらそれはそれで色々ややこしい話になりそうだろ?)
ヴェラ (昨日は腕、生やしてたじゃない?)
リュー (あーいや、あれやると、斬り落とした腕が残るだろ? なんか気持ち悪いなぁって思って……)
ヴェラ (ため息)
やや呆れた顔をしながらも、仕方なく手足を拾って誰のものか確認を始めるヴェラとモリー。
光剣で斬られると一瞬で焼き切られ焼灼されるので傷口から血が流れないため、血の海というような有様にはなっていない。
手足の持ち主の確認ができた者からリューが近づいて行き、繋ぎ合わせてヒールを発動する。
兵士 「おお! ただのヒールなのに治った! 斬られた腕が
切れた腕を接合するには通常なら【ハイヒール】以上が必要なのだが、膨大な魔力をつぎ込む事ができるリューならば単なるヒールもハイヒールもその上のエクスヒールも区別する必要がない。
それを見て、他の兵士達も切られた自分の手足を自分で拾って素直に治療を受け始めた。完全に戦意は喪失している。
レンツォはただそれを見て唸っているだけであった。
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そこに、黒塗りの馬車がやってきた。
中から男が降りてくる。それを見たレンツォが駆け寄って声を掛ける。
レンツォ 「これは、オリゴール様!」
オリゴール 「レンツォよ、スラムの焼却処理はまだ終わらんのか?」
レンツォ 「それが、邪魔が入りまして」
オリゴール 「抵抗する者はすべて殺して構わんと言っただろうが。はやくしないと疫病が街に広がる。ジャスティン様が罹患してしまったと聞いて、お館様は酷く心を傷めておいでだ」
レンツォ 「それが、コイツラが、疫病は既に解決したと言うのです」
オリゴール 「そんな戯言に耳を貸してどうする? 黙って排除せよ、そのための兵士達であろうが」
レンツォ 「それが、全員返り討ちにあってしまいまして、今、治療をしてもらっているところでして……」
オリゴール 「……何を言っとるのだ?」
レンツォ 「その、あそこに居る連中が、疫病をすべて完治させた、解決したと言っておりまして」
オリゴール 「グリンガル領中の腕の立つ治癒士を集めても治療不可という結論だったものを、そう簡単に治療できるわけがないだろう」
レンツォ 「それが、兵士達全員の手足を切り飛ばしておいて、それをすべて再び接合してみせたのです。その
オリゴール 「なんだと……?」
テレス 「レンツォ殿! 待って下さい」
そこに、テレス子爵が馬で駆けつけてきた。
テレス 「スラムの焼き討ちは中止せよと、ジャスティン様が仰せです!」
レンツォ 「テレスか、言っただろう、我々はオリゴール様の、つまりお館様の命令で来ているのだ、ジャスティン様が何と言おうと……って、ジャスティン様は生きているのか?」
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次回予告
きっと、多分、聖女……
乞うご期待!
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