第334話 信じて下さい
リリィ 「アンタ、奴隷だろ?」
ミィ 「…!
……ナンノコトデスカ?」
リリィ 「惚けなくていいよ、アタイはなんとなく分かるんだよ、所作を見てるとな。お前の言動には奴隷の特有の
ミィ 「………」
リリィ 「隷属の首輪をしていないという事は、隷属紋を刻まれているのだろう? 奴隷である事を隠して冒険者として活動してるってわけだ。
だけど、奴隷は奴隷だ、奴隷が主人と喧嘩できるわけがない。
ならば、わざわざ嘘をついてアタイのところに来た理由はなんだろう? と思ってね。
アタイを罠に嵌める気だってんなら、容赦はしないよ?」
ミィ 「ちっ、違います、リリィさんを罠に嵌める気なんてありません、本当です!」
リリィ 「…」
ミィ 「……」
リリィ 「……そっか、じゃぁいいや!」
ミィ 「え?」
リリィ 「アタイの敵になるなら容赦はしないが、そうでないなら詮索はしないよ。口外もしないから安心しな。何か事情があるんだろう? 別に奴隷である事が違法ってわけじゃないしな」
ミィ 「………どうやら隠しても無駄のようですね……そうです、私は奴隷です。借金がありまして、奴隷に身を窶しました。ただ、それ以上の事情はちょっと、言えません」
リリィ 「なるほど、話すのを禁じられているわけか。まぁ、いいよ別に。
言えない事のひとつふたつみっつよっつ、いつつむっつ。生きてりゃぁ色々あらぁなぁ!
ましてお前みたいな美少女じゃぁ、言い寄ってくる男が多くてトラブルも多そうだしな」
ミィ 「でも、リリィさんを騙したり危害を加えたりする目的は一切ありません、それは本当です、信じて下さい。
それと、私がリリィさんを心配している気持ちは本当です。もちろんリリィさんが私なんかより強いのは分かっていますが、それでも、女性一人では、何があるか分かりませんから。
相手が多かったりしたらどうなるか……私もこれでもCランクですから、多少は戦力になると思いますので、利用して頂ければ…」
リリィ 「かわいそうに……」
ミィ 「え?」
リリィ 「随分、酷い目に遭ってきた、そんな目をしているよ……。
苦労してきたんだろう?
頑張ったね」
その言葉を聞いて思わず目に涙が溢れそうになってしまうミィ。とっさに顔を背け俯いて、必死で涙を堪えるミィであった。
リリィ 「…ま! 旅は道連れって言うしな。のんびりマルタンの街まで歩いて行くだけだ。じゃぁ行きますか」
ミィ 「……はい!」
歩き出した二人であったが、その時後ろから馬車の音がした。リュー達の乗った馬車である。
・
・
・
リリィ 「うぉ、バトルホースだ、すげぇな」
ミィ 「バトルホースで馬車を牽かせているなんて、どこかの上級貴族でしょうか?」
(※ミィはリュー達が乗っていることを知っているが惚けて言っている。)
リリィ 「それにしては馬車がしょぼいけどな。一発当てた冒険者ってところか?」
リリィとミィは道の端に寄って馬車をやり過ごす。
通過して行く馬車を見送った二人。
馬車は大型の幌馬車で、側面の帆布を巻き上げてオープンになっていたため、乗っている者達の姿が見えた。
ミィ 「よかったんですか?」
リリィ 「何がだ?」
ミィ 「馬車を止めて、乗せてもらえないか頼んでみたらよかったのではないかと。結構大きめの馬車でした、まだ十分乗せてもらえる余裕がありそうでしたが?」
リリィ 「別にいらんさ、歩いても隣町には着く。それに、もう行ってしまった」
だが見ると、馬車は少し先で停車していた。
ミィ 「ほら、止まってくれたようですよ、行ってみましょう!」
リリィ 「あ、おい! 待てよ!」
ヒッチハイク作戦がアッサリ失敗に終わってしまいそうでミィは内心焦っていたのだが、なんとかなりそうだ。このチャンスを逃さじと、強引に事を進めるミィであった。
* * * *
街道を進むリュー達の馬車。
途中で、壊れて打ち捨てられている小型の馬車を見かけた。減速して様子を見てみるが、周囲には誰も居ないようだ。
地面に血の後があるが、人間も魔物も死体はない。魔物にやられたなら、人間の死骸や装備品が散乱しているはずだが、それもない。
つまり、人間の被害はなく、魔物はきちんと解体されたという事だろう。地面に流れた血の跡までは処理しきれていないのはまぁ仕方がないだろう。
リュー 「魔物に襲われたが撃退、しかし馬車が壊れてしまったので歩きで街を目指して移動していった、といった感じか?」
ランスロット 「そんなところでしょうね。商人にしては馬車が小さいので、少数精鋭の冒険者といったところでしょうか」
リュー 「魔物は撃退したようだ。それだけ腕が立つ冒険者なら、心配する必要もないな」
再び走り出したリュー達の馬車は、途中で冒険者が二人歩いているのを発見した。おそらく先程の馬車の持ち主だろう。ランスロットが停まるかどうか尋ねたのだが、リューはそのままスルーしていいだろうと言った。
二人の冒険者は道の端に寄ったので、そのまま馬車は通過していく。だが、通過しながら荷台にのっていたレスターとアネットが、二人の冒険者が女性である事に気付いて声をあげたのだった。
アネット 「女の人が居たよ?」
モリー 「ええ、女性でしたね、今の二人組の冒険者」
レスター 「助けなくていいの?」
リュー 「助けを求められたわけでもなし。特に困っているようにも見えなかった。マルタンの街まで歩いても十分辿り着ける距離だしな」
アネット 「助けてあげようよ!」
ヴェラ 「アネットは優しいわね。リュー、事情くらい確認してもいいんじゃない?」
リュー 「まぁ……別にいいけど…」
馬車を止めると、二人の女が小走りで近づいて来た。
ミィ 「すみません、馬車が壊れてしまって。乗せて頂けませんか?」
ヴェラ 「魔物に襲われたの?」
リリィ 「ああ、そうだ。魔物は全部退治したんだけどな、ちょいと油断しちまって、馬車を壊されてしまったんだ。馬も逃げてしまった、戻ってこないから、どこかで魔物に食われてしまったかもな」
リュー 「ん? お前……
…今朝の娼婦?」
ミィ 「だから私は娼婦ではありません!」
モリー 「お知り合いですか?」
ヴェラ 「娼婦? リューったら時々散歩に行くと言って出かけてたのは、そういう事だったのね? まぁリューも若い男の子だから仕方ないかぁ」
リュー 「いや、違うっての…」
― ― ― ― ― ― ―
次回予告
リュー、初めてモテる?
乞うご期待!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます