第326話 代官屋敷終了のお知らせ

正面から向かってくる一団に、今度は手加減なしの電撃を放つリュー。騎士達は一瞬にして黒焦げになってしまった。肉の焼ける臭いが充満する。


リュー 「面倒になってきたな、後はまとめてダンジョンに捨ててしまうか」


以降、向かってくる騎士達は、次々と魔法陣に飲まれていく。もちろん行き先はダンジョンであるが、今回は身体を二つに分けて別々の場所に転移させてしまった。つまり、ダンジョンに移動した時点で、身体が二つに切り分けられた状態となっている。騎士達は、突然ダンジョンに転移させられ、わけも分からずに死んでいく事になるのであった。


パーシヴァル 「リュー様の力であれば、我々の出番はないですなぁ……」


リュー 「まぁ、俺は一人しか居ないからな。手が回らん事もある、そういう時はフォロー頼むよ。


とりあえず、キロンの歓迎を容赦なく徹底してやるよう指示しておいてくれ」


パーシヴァル 「御意」


後で、スケルトンのホームとなっている亜空間の中に引き込まれたキロンがその後どうなるのかをリューは尋ねてみたのだが、長い時間、拷問を受けながら(しかし決して死ぬ事も許されずに)過ごす事になるらしい。


いつ解放されるかはスケルトン達に任せて、リューは忘れて良いと言う事であった。


仮に許されて? 解放される時が来ても、それはすなわち殺してもらえるだけらしい。ただその場合も、再び人として転生する事は許されず、アンデッド化された上でスケルトン兵の見習いとして一から修行に入る事になるらしい。


そして、数百年か数千年かの修業を経て、一人前のスケルトンになれたならば、軍団レギオンの兵士となれるそうだ。


スケルトンになった後、いつか、何らかの理由でスケルトンとしての存在を終了する時がもし来たとしたら、その時は解放され、旅立つ事ができるらしいが、そんな時が来るのは、数千年か数万年か……気が遠くなる先の話となりそうである。(もしかしたら、この世界が、スケルトン達が存続し続ける限り、そんな時は来ないのかも知れない。)


ただ、もし万が一、あまりにクズ過ぎて魂の質が劣化してしまっていた場合は、スケルトンとなる事もできないという。


そのようなケースでは、死んだ後、魂は細かく分裂してしまい、地を這う醜い虫に転生する事になるのだそうだ。


台所などを素早く這い回る、小さく黒い虫を嫌う人間が多いのは、無意識に、その魂の悍ましさを感じ取っているせいなのかも知れない……。


果たしてキロンがスケルトンとなれる魂なのか、虫けらに転生するしかない魂なのかは分からないが、いずれにしても後はスケルトン達に任せるだけである。


ちなみに、処刑場で簡単に殺してしまった騎士の隊長べムリも、回収してスケルトンにしておいたとパーシヴァルが言った。べムリも、何百年か、何千年か、あるいは何万年か? 見習い兵士として扱かれる人生がまっているそうだ。


簡単に殺してしまってリューも失敗したと思っていた。なかなか気が利くスケルトンである。





モリーにも、キロンの魂の末路についてボカしながらだが説明した。リューは、キロンは十分に罰を受けるし、二度と遭うこともないので忘れてしまって良いとモリーに言ったのだが、話を聞いたモリーは、キロンの魂の汚れが浄化され、平穏が訪れる日が来ることを祈ると言うのであった。


本当に酷い事をされたはずだが、そんな相手を赦し、魂の平穏を願う事ができるとは……。


モリーは自分などとは違い、本当に心が優しく美しい人間なのだなぁと思うリューであった。



   **  *  **  *



門番A  「痛ぇな、くそっ、なんなんだアイツ!」


門番B 「交代要員も来ないな、俺達、いつになったら医者に連れて行って貰えるんだ?」


門番A 「アイツラが中に入って行ったからな。少し時間が掛かるんじゃないか? ただ、護衛騎士団全員招集が掛かっていたから、まぁアイツラも終わりだろう」


門番B 「だけど、後で俺らもきっと怒られるんじゃないか? アイツラを通してしまって。降格処分プラス罰金・減俸かな」


門番A 「…考えたくない。それより折れた腕が痛い。お前は治癒魔法は使えないのか?」


門番B 「そんなの使えたら治療師の仕事についているよ……」


そこに、ルガルほか街の警備兵達が駆けつけて来たのであった。


門番A 「うん? 警備兵がなんだ? 今は取り込み中だから、何か用があるならまた後日にしろ」


ルガル 「…その腕は……どうかされたんですか?」


門番A 「ああ、ちょっとな……」


タスー 「それってまさか、リューさんにやられたんじゃ」


門番A 「!」


門番B 「お前ら、アイツを知ってるのか…? まさか、グルか!」


門番A 「騎士爵を持つ我々に、平民がこんな事してタダで済むと思ってるのか?」


ルガル 「我々はあの少年を追ってきたのです(嘘は言っていない)、その少年はどうしました?」


門番A 「お前らは関係ないのか? あの野郎は中に入っていったよ、俺達は……俺達はあれだ、不意打ちを受けたんでな、怪我をしてしまって止められなかったんだ」


タスー 「本当かな……?」


門番B 「生意気な事を言ってると、お前らも牢に入れるぞ、アイツのようにな!」


ルガル 「あの少年は牢に入れられたのですか? ほれ見た事か……」


門番A 「いや、知らんが、まぁ、屋敷の護衛を総動員して捕らえに行ったはずだ、今頃は捕らえられてるに決まってるだろうさ」


ベリン 「だったらまだ分からないね」

ヨリン 「騎士たちのほうが返り討ちになってるんじゃない?」


門番B 「代官の屋敷を守る精鋭騎士達だぞ? 俺達門番などとは違う、多少腕が立ったところで歯が立つわけ無いだろうが」


タスー 「あれは!」


見ると、屋敷から使用人達が大勢飛び出してくる。かなり慌てた様子である。


リュー 「なんだ、来たのか?」


いつの間にかルガル達の背後にリューとモリーが居た。


ルガル 「おお、無事だったのか!」


ベリン 「やっぱりねー」


門番A 「お前……、屋敷の中の騎士達はどうしたのだ?」


リュー 「全員殺したよ。無駄にしつこく襲ってきたのでな。大人しくしていれば死なずに済んだものを、キロンに義理立てして死んだんだ、愚かな事だ」


門番B 「ころ……しただと?!」


門番A 「全員? キロン様はどうなったのだ?」


リュー 「ああ、キロンは捕らえて、とある場所に行ってもらった。二度と戻れないから死んだと思ってくれていい」


門番A 「貴族を傷つけるなど……許されんぞ、お前……」


リュー 「屋敷も破壊する事にしたから気をつけろ、破片が飛んでくるかもしれんぞ?」


そうリューが言った次の瞬間、屋敷が轟音を立てながらあれよあれよと崩れ落ちていく。


やがて立ち込める砂埃で何も見えなくなったが、リューが風属性の仮面を着け、旋風を起こして埃が周囲に撒き散らされないように上に吸い上げ、人の居ないであろう森のほうに送った。


敷地の中に山となっている瓦礫を見て、呆然とする門番とルガル達であった。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


俺は自分に降りかかる火の粉を払うだけだ


乞うご期待!



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