第313話 復活?!

ワミナ 「あのガキィ~~~この私に舐めた態度をとって! 絶対許さないわよ、思い知らせてやるわ! 今に見てなさいよ~!


ベルト!! 店に戻ったら通信機を貸りるわ! この事を本部に報告して、戦闘奴隷を送ってもらう!」


ベルト 「へ? まさか、リュージーンを力づくで従わせるつもりですか? いやいやいや、おやめになったほうがよろしいかと。あの者は、この街の警備隊を一人で壊滅させたって話ですよ?」


ワミナ 「は? 何を言ってるの? 警備隊全滅とか、そんな事できるわけないじゃない。いい加減な噂を鵜呑みにしてどうすんの?」


ベルト 「いえ、あの者に絡んだ街のゴロツキ冒険者達も全員歯が立たず、手足切り詰めの刑にされたとか……私の親しい知人が証言しております。


何より、スケルトンを従魔にしてる時点で普通じゃないですから」


ワミナ 「スケルトン? アンデッドモンスターの? そんなの従魔にできるわけないじゃん?」


ベルト 「いえ、先程も居たでしょう? お茶を出してくれてた……」


ワミナ 「は? あれがスケルトンだったっていうの?」


ベルト 「ええ、服を着て仮面を被せて分かりにくくしたようですが、私の店に着た時は何も着ていない、もろ出し骸骨でしたから、間違いありません」


ワミナ 「馬鹿言わないでよ、喋ってたわよ?」


ベルト 「ええ、喋るんですよ」


ワミナ 「シャベルの?」


ベルト 「ええ……」


ワミナ 「……」


ベルト 「……」


ワミナ 「んな話信じられるわけねぇだろ!!」


結局、ベルトが何を言ってもワミナは聞く耳を持たず、本部に応援を要請してしまったのであった……。


そもそもワミナは、奴隷ギルド本部から、もし件の冒険者が隷属の魔法を扱える能力がある者であった場合、奴隷ギルドに所属させて従わせるように命じられていたのだ。


奴隷ギルドはこれまでも、隷属の魔法を使える者はすべて高待遇で(時には脅して)取り込んできたのだ。そうやって、奴隷売買の独占を守ってきたのである。


もし、従わないと言う事であれば……


自分たちの商売・利権を守るためであれば、非合法な手段を使うことも辞さない、そのような組織なのである。


もともとは、奴隷ギルドというのは奴隷たちの権利を守り、隷属の魔法を悪用させないために発足された機関であったはずなのだが……


発足から長い時が流れ、隷属の魔法を使い、奴隷売買を行うという、極めて非人道的な事を当たり前に行い続けてきた結果、構成員の多くが初期の志を忘れ、自分達が世界を裏から支配しているかのような錯覚に陥っているのであった。



   *  *  *  *



その日の午後、「用がある」と行ってリューは出かけていった。


ランスロットはダヤンの街のスケルトン達の取りまとめがあるので街に残る必要があるので、今回はパーシヴァルに同行してもらった。


スケルトンの誰かに同伴してもらうのは、リューの希望である。



   * * * * *



リューがパーシヴァルを連れて向かったのはサビレタ村である。 二人はレスターとアネットの両親の墓の前に立っていた。


なぜここに来たのか?


リューは二人の両親を復活させるつもりだったのである。


ランスロット達を見て、リューはふと思いついたのだ。死んだままアンデッドでよければ、もう一度、会わせてやる事はできないだろうか? と……


とは言え、もう死んでからかなりの時間が経っている。二人の魂はすでに “他界” してしまっている。生き返らせてやる事はできないはずだが……。


リューがランスロットに尋ねたところ、可能性はあると言うことだった。


基本的には、魂が既に “他界” して、この世界から旅立ってしまっていたらアンデッドにはならない(なれない)。だが、無念や執着が強い残留思念として残っていれば、それを元にして、アンデッドとして復活する可能性があるというのだ。


リューは昨晩、レスターとアネットに、たとえ化け物の姿であったとしても、もう一度両親に会いたいか尋ねてみた。


アネット 「おとうとおかあに、もう一度会えるの?」


リュー 「元の姿ではないぞ。肉体も朽ちてしまっているから……ゾンビ、はマズイだろうから、おそらくスケルトンとしてなら復活できるかも知れない」


アネット 「すけるとん?」


リュー 「ランスロット達みたいな骸骨の魔物だよ」


アネット 「骸骨のおじちゃん達……」


骸骨のお化けと聞いて少し怯んだアネットであったが、ランスロット達の事をじっと見た。ランスロットはあえて、仮面を取って見せる。(骸骨の仮面なので大差ないのであるが。)


骸骨なので表情はないのだが、ランスロットが優しく微笑んでみせたような気がした。


アネットは、すぐに意を決した表情で言った。


アネット 「骸骨でもいい、もう一度、おとうとおかあに会いたい!」


レスターを見ると、こちらも頷いていた。


それを受けて、リューはサビレタ村に来たのである。


墓の前で、リューは黒い「闇の仮面」を装着する。この仮面を使えば闇属性の魔法が使えるようになる。当然死霊術も使えるはず。


残留思念からアンデッドを生み出すのはかなり難しいが、リューの無限の魔力供給と闇の仮面が合わされば、おそらく成功するだろう。


リューが魔法を発動する。


しばらくすると、二体のスケルトンが墓の下から這い出してきたのであった。


両親の残留思念は相当に強く残っていた事も幸いした。子供たちを拐われ死ぬ事になったレスターとアネットの両親の無念は強かったようだ。


誕生したスケルトンは、ちゃんと両親としての意識はあるようだ。だが、ランスロット達のように話したりはできないため、パーシヴァルが通訳してくれた。(スケルトンについて色々助言・助力してもらうために、パーシヴァルを連れてきたのだ。)


リューは両親のスケルトンに用意していた服を着せ、ダヤンの小屋に戻る。


最初は戸惑っていた子供たちであったが、ランスロットが通訳になり、色々話をしていくうち、二人が父と母である事を確信し、再会の涙を流したのであった……。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


ついに街を出る事に


乞うご期待!



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る