第314話 ダヤン出発

翌日、ついに王都からの応援部隊が到着した。


今後、街の行政を取り仕切る代官と行政官達、そして、警備隊・騎士隊に代わる新しい兵士達が補充されたのである。


それにより、アンデッド軍団レギオンの兵士達はお役御免となった。


ランスロットの指示で、街の内外に居たスケルトン兵達は、一斉に薄くなって姿を消してしまったのである。


ただ、一部、街の仕事を手伝っていたスケルトンについて、街の住民から引き続き残ってもらって一緒に働きたいという要望が出た。


そんな事が可能なのかリューはランスロットに尋ねて見たら、可能だという返事であったため、街の生活に馴染んだ数体のスケルトンはそのまま街の住民として残しておく事を許可したのであった。


フェルマー王国ではアンデッドはかなり忌み嫌われていた雰囲気があったが、魔法王国ガレリアではそれほどではないようであった。


これでやっと街を出られる。すぐにリューは旅立つ事にした。


街の外に置いていた小屋を収納し、領主の館でブリジット達に別れを告げる。


ブリジットはもう数日間は、引き継ぎのため残る必要があるという。


また、ドロテアも王都に帰る事になった。実質的にこの国の官僚トップであるドロテア、そしてランバートとガーメリアという四天王と呼ばれる各部門のトップの内の二人までもが王宮を離れていては、仕事が回らなくなると、残った二人の四天王から泣きの連絡が入ったのである。


ドロテアはそんなヘルプ要請は無視してリューと旅をしたかったのだが、ギャスラ・グリンガル侯爵が王に謁見するために王宮にやってきたと聞き、帰らざるを得なくなった。


グリンガル侯爵は手強い。反エドワード派の貴族たちをまとめるトップであり、人気・実力ともに国内最高峰の老舗有力貴族なのである。そんな人物が、あわよくばエド王を亡きものにして再び戦争を始めたいと目論んでいるのだ。


まだ若いエド王がいくらしっかりしているとは言え、老獪なグリンガル相手では何があるか分からない。ガーメリア達だけではまだいまひとつ、王の側近として不安が残る。ドロテアとしては任せてしまいたいのだが、王の命に関わるとなると、そうも言ってはいられないのであった。





街を出ようとするリュー達の見送りにヤンがやってきたので、今後はまっとうに暮らせとリューは釘を刺しておいた。「もちろんでさぁ」と安請け合いするヤンに少し不安もあるが、まぁ、そこまで心配してやる事でもないかとリューは思い直した。


後は、新しい代官が街の治安をきっちり守れば良い事である。それが本当に実行されるのを確認する義理も暇もリューにはない。





街を出たリューは次の街を目指す。


ドロテアとガーメリア、ランバートは転移で王宮に送り届けてやった。だが、リュー達は転移は使用せず、普通に旅をする事にした。


リュー達の旅の目的は、そもそも、世界を、色々な場所や文化、人々を見て回る事なのだから、転移で用事を済ませたのでは意味がないのである。


(逃げた元勇者を捕らえるという仕事も忘れたわけではないが、それはあくまで旅のついで・・・に可能であれば、という程度の話で、そのために旅をしているつもりはないのである。)


そういう意味では、特に急ぎの目的があるわけでもなし。


ある意味、今の旅は、リューにとってこの世界での人生の目的を探すのが目的でもある。行き先は決まってはいない。


まぁ、冒険者の旅を楽しみたい、というのがすべての原点・出発点なのであるが。





ダヤンの街を出て、目指すは王都。普通に旅して五日という距離であるが、つまりそれは、途中に街が五つあるということである。


魔物が彷徨くこの世界では野宿は危険なので、だいたい一日で移動できる範囲に防壁を備えた街ができているのが普通なのである。


一日以内の距離に街が築かれていない地域もあるが、そのような辺境の場合は護衛を雇っていなければ旅はできないということになる。


比較的王都に近い地域であれば、だいたい一日以内に移動できる範囲に街があるのは普通であった。


ダヤンの次の街は「ジャール」


この街は、モリーが住んでいた街である。つまり、モリーを冤罪で奴隷に落とした貴族が居る街である。


リュー 「モリー、きっちり落とし前をつけさせてやるから安心しろ」


不安げなモリーに対して、リューはそう言ってニヤリと笑ったのであった。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


馬車を買ってみた


乞うご期待!



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