第311話 困るんですよ勝手な事をされてはっ!

お待たせいたしました。更新再開です。しばらくはこちらの作品がメインで、新作のほうは少しペースを落としながらポツポツと続けていく予定です。


◇前回までのお話


街の郊外?でカレーショップを開店したリュー

(※開店はしていない)

匂いに誘われてか、いろいろな客が来ます。


今日来たのは、奴隷ギルドからのお客様のようです。

はたして彼らの用件は……?


― ― ― ― ― ― ―


ワミナ 「あの~……」


リュー 「ああ、済まなかった、で、話とはなんだ?」


ワミナ 「ええ、そうですね、それでは、え~オホン!


…リュージーン殿は、先日、こちらのベルトの店で奴隷を買われそうで?」


リュー 「ああ、そうだな」


ワミナ 「それを、その場で開放されたとか?」


リュー 「ああ、そうだな」


ワミナ 「ご自分で? 隷属の首輪のプロテクトを? 解呪なされた……?」


リュー 「ああ、そうだな」


ワミナ 「困るんですよねぇ、そのような勝手な事をされては!」


リュー 「んん? 何故だ?」


ワミナ 「なぜって! 当たり前じゃないですか!」


リュー 「奴隷を所有者が開放するのは別に違法行為でもなんでもないんだろう? そこにいる奴隷商にも確認したと思うが?」


ワミナ 「確かに、それ自体は、違法行為というわけではありません。ありませんが! 奴隷というのは、奴隷ギルドで一括管理しておりますので、勝手に奴隷にしたり開放したりする事は認められていないのです」


リュー 「認められていない? 違法行為ではないのだろう? 誰が認めないというのだ?」


ワミナ 「奴隷ギルドのルールです」


リュー 「ああ、なるほど。奴隷ギルドの定めたルールに反する、と」


ワミナ 「ご理解頂けて嬉しいです。今後はそのような事は~」


リュー 「それは奴隷ギルドの独自ルールだろう? 俺が従う義務はないんじゃないか?」


ワミナ 「……はい?」


リュー 「だから、それはお前たちが勝手に決めたルールで、国の法律でもなんでもないんだろう? だったら、奴隷ギルドの構成員でない者が従う義務もないだろう、違うか?」


ワミナ 「そ、それは……奴隷というのは、我々奴隷ギルドが一括管理すると、国も認めてくれている事で、つまり法律と同じなんですよ」


リュー 「管理を任せたからって、勝手に新しい法律ルールを作って好き勝手していい権利を得たわけじゃないだろう?」


ワミナ 「そ、それは……っそもそも! 勝手に解呪はできないようになっているはずなのに、一体どうやって解呪したのですか? 解呪方法は奴隷ギルドのトップシークレットとなっている技術です、それを盗み出すのは犯罪行為ですよ?」


リュー 「失礼な奴だな、俺が盗みを働いたと言うわけか」


ワミナ 「いえ、それは……でも……」


リュー 「でもなんだ? 俺は盗みなどしていないぞ」


不機嫌そうなリューから発せられた圧に少し気圧されるワミナ。


ワミナ 「そっ……それは申し訳有りません……


ですが、盗んだのでないとすると……


…リュージーン殿は、もしかして以前、奴隷ギルドで技師をしていた経歴なんて事は……」


リュー 「そんな経歴はないよ」


ワミナ 「では、一体どうやって解呪されたのですか? 隷属の首輪には非常に高度なプロテクトが掛かっているのです。これを解呪できるのは、奴隷ギルドで訓練を受け、資格を認められ解呪キーを授けられた技師のみのはずです。つまり、解呪できたという事は、解呪キーを盗み出した可能性が疑われるのです」


リュー 「いいのか? 俺を泥棒呼ばわりするんだな? 確かな証拠あっての事なんだろうな?」


ワミナ 「し、証拠? 証拠は、あなたが隷属の首輪を解呪した事、それ自体が証拠でしょう!」


リュー 「別に、その解呪キーなどというものを知らなくても解呪できる方法があるなら、俺が盗みを働いたという事にはならんだろう?」


ワミナ 「そんな事はありえない、できない事ですから」


リュー 「現にできている。なんなら試してみてもいいぞ? だがもし、解呪キーを知らなくとも解呪する方法がある事が証明されたら、人を泥棒呼ばわりした事について、謝罪を要求する事になるぞ?」


ワミナ 「いいでしょう、そんな事できるわけがないのだから。私は奴隷ギルドの技師も兼ねていましてね。ここに隷属の首輪があります。しかもこれは、通常の奴隷の首輪とは解呪キーを変えてあります。解呪キーは私以外誰も知りません、今朝、新たに決めたものですから。これを……ではこのベルトに着けましょう」


ベルト 「えっ!?」


ワミナ 「(おとなしくしなさい、大丈夫だから! 後ですぐ外してあげるわよ!)」


急に隷属の首輪を着けられる事になってベルドは焦ったが、結局ワミナに逆らうこともできず、そのまま首輪を装着されてしまったのであった。


隷属の首輪の効果がちゃんと出たかどうか、ワミナが命令を下してみる。


ワミナ 「立て! 座れ! 立て! 回れ! 三回まわれ! 三回まわってワンと鳴け!」


ベルト 「わん!」


ワミナ 「よし、その場でいいと言うまで回りなさい!」


グルグルとその場で周り出したベルトは、やがて目をまわして倒れてしまった。


ワミナ 「よし、もういいわよ」


ベルト 「酷いですよ~~~」


ワミナ 「ごめん、ちょっと面白くなっちゃって。


…さぁ、これを解呪してみてもらおうじゃないですか、できるもんならですが!」


リューは目をまわして座り込んでいるベルトに近づくと、徐に首輪に触れ、そのままあっさりと外してしまったのだった。


ワミナ 「そっ、馬鹿な……アリエナイ。一体どうやったの? 解呪キーは絶対に誰も知らないはずよ……」


リュー 「だから言ったろ、解呪キーなどなくても解呪は可能だと」


ワミナはリューの手から首輪を奪い、調べてみた。すると……


ワミナ 「これは……どういう事?! 首輪は解呪されているのではない、組み込まれているはずの術式がすべて失なわれてしまっている?! これは、解呪ではなくて、まるで、魔法そのものの無効化……? 一体どうやったの?」


リュー 「それは企業秘密、教えるわけにはいかないなぁ。それより、先程俺を泥棒呼ばわりした事については、どう落とし前をつけてくれるんだ?」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


ワミナ 「私に言われても! 私には何も権限は……わかりました、上に言っておきます(聞いてくれるか分からないけれど…)」


乞うご期待!



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