第310話 千客万来?

ヴェラ 「ちょっとマテ」


ランスロット 「?」


ヴェラ 「何その言い方は? なぜ知ってる???」


ランスロット 「? お仕置きするときはそう言えと、リューサマが」


リュー 「ドクロがお仕置きする時は、やっぱそういう言い方しないとダロ」


リューが日本に居た頃、子供の頃に見た再放送アニメのネタをランスロットに教えていたようだ。


ヴェラ 「ま、まぁいいけどね……」


などと言ってる内に、ガンツは大勢のスケルトンに身体中を掴まれていた。体中の関節を強烈な力で掴まれて身動きできないガンツ。よく見れば、骨ばった手の一つがガンツの股間もしっかりと握っている。強く握られているのか、ガンツは苦悶の表情で呻いていた。


スケルトン達が薄くなって消えていく。ガンツも一緒に消えていく。スケルトン達の居住している亜空間にガンツは引きずり込まれていったのであった。


そして、ガンツの悲鳴が響き渡る。姿は見えなくなったが悲鳴だけが亜空間から聞こえている。ランスロットがわざとそうしたようである。


亜空間の中。スケルトン達は、掴んだガンツの身体を端のほうから順に握りつぶし、引きちぎり始めた。先端部分から徐々に体を千切られていく痛みにガンツは身動きできず悲鳴を上げ続けた。強い握力で抓られただけでも死ぬほど痛いが、それを千切れるまでされるのである、ガンツは泣きわめきながら許しを請うが、すのうちやがて、その声も聞こえなくなったのであった。。。


リュー達の居た場所から少し離れたところからも悲鳴が聞こえていた。ガンツ乗ってきた馬車が停めてあったが、そこに待機していたガンツの従者達をスケルトンがお仕置きしていたようであった。


リュー 「アイツらは命じられて従ってただけじゃないのか?」


ランスロット 「雇い主の蛮行を知っていて仕えていたのなら同罪でしょう。まぁその辺は、本人たちに事情聴取して、情状酌量の余地があるなら、手心は加えましょうぞ」


ガンツの従者達は亜空間の中でスケルトンの尋問を受ける事になるようだ。


ふと、スケルトン達の亜空間の中はどうなっているのだろう? リューは思ったが…


ランスロット 「見てみますか? なんならごうも、いえ尋問も一緒にやってみますか?」


リュー 「いや、また今度にしておこう……」



  *  *  *  *



翌日の朝。


昨日は、カレーの匂いに誘われてか、おかしな連中を呼び寄せてしまった。カレー恐るべし。だが、カレーの鍋は亜空間に収納したのでもう大丈夫だろう。


ただ、子供達が食べたがったため、しばらく食事はカレーライスが続く事になったのだったが(笑)


日本に居た頃、一度作ったら三日連続カレーなど当たり前だったリューとヴェラである。それを思い出し、微笑んで子供達を見ていたのであった。


ドロテアとガーメリア、そしてモリーも喜んで食べている。このペースだと、せっかくストックしたカレーもすぐに底をついてしまいそうである。また近い内に大量製造が必要かも知れないと思うリューであった。


朝食のカレーライスを食べていると、小屋の扉をノックする音がした。





皆食事中だったのでランスロットが出てくれたが、ドアの前に居たのは妙な男女二人連れであった。


ランスロット 「何か御用ですか? おや、そちらの方は確か、奴隷商のベルトさんでしたね?」


チラと見えた男のほうはどこかで見た顔だなぁとリューが思っていたら、奴隷商のベルトであった。


一瞬、リューはカレーの匂いが漏れてまた誰か呼び寄せてしまったのかと思ったが、そうではなかったようだ。


もう一人の女はワミナと名乗った。なんでも、奴隷ギルドの幹部だと言う。ボディガードであろう、少し離れて屈強な体格の、しかし首に隷属の首輪を着けている男達が数人立っていた。


ワミナ 「こちらに、冒険者のリュージーン殿がいらしゃると聞きまして」


ランスロット 「ご主人様達は今、朝食の最中でして。お急ぎの御用でないならば、遠慮して頂けますかな?」


ワミナ 「これは失礼いたしました。では、お食事が終わるまで待たせて頂きます」


リュー 「待たれても落ち着いて食事ができない。一体何の用だ? 急ぎの用でないなら出直してくれ」


ワミナ 「これは申し訳ありません、少々リュージーン様とお話したい事がございまして……それでは、お邪魔にならないよう、一時間後に再度お伺いいたしましょう」


リュー 「いや、それも悪いからこちらから出向こう、奴隷ギルドの場所はどこだ?」


ワミナ 「いえ、この街には奴隷ギルドはありませんので。事務所のようなものは構えていないのですよ」


リュー 「ああ、もういいよ、もう食べ終わるから、少し外で待っててくれるか?」


結局、急いでカレーを掻き込んでリューは小屋を出たのであった。


    ・

    ・

    ・


リュー 「で、話とは? 何だ?」


ワミナ 「ええっと、このままここで立ち話もなんですので、できたらお部屋の中に入れて頂けたりは……」


リュー 「小屋の中には家族か友人しか入れない事にしているんだ。話ならここでできるだろう?」


ランスロット 「それでは、こちらでいかがですか?」


いつのまにか、小屋から少し離れた場所にテーブルとベンチが並べてあった。カレーを作る時に作ったものだ。


ランスロット 「お茶をお持ちいたしましょう、少々お待ち下さい」


ワミナ・ベルトは用意されたベンチに移動、リューとテーブルを挟んで向き合うように座った。


すぐにランスロットが戻ってきた。何故か執事のような格好をしている。そんな服、いつの間に用意したのだろう?


手に持っているお盆トレーにはカープとティーポットを載せている。カップをテーブルに並べると、ランスロットはお茶を注いでくれた。白い手袋をしているため、骸骨の手は客には見えていない。


リュー 「なんか色々突っ込みたいが、またにしておいたほうがいい気もするな……」


ふと見ると、お盆トレーは単なる板ではなく、きれいな装飾が彫り込まれた見事なものだった。


リュー 「それは、もしかして?」


ランスロット 「はい、作りました」


リューの口は口笛を吹くような形になった。(音は出さなかったが。)


リュー 「その服も?」


ランスロット 「はい、配下の兵の中で、裁縫の経験のある者に作らせました」


リュー 「服買う必要なかったんか」


ランスロット 「現代の服がどのようなものか研究する必要がありましたので、参考になりましたよ。我々が生きていた時代とは大分文化も違いますからな」


リュー 「執事の服は買った覚えはないが」


ランスロット 「街にスケルトンを派遣して研究させたりもしました」


リュー 「やっぱ買う必要ないんじゃないか? お前達に作れないものはないのか?」


ランスロット 「子供は作れません」


リュー 「そりゃそうだな……」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


奴隷ギルドの使者の用件とは?


「困るんですよねぇ、勝手ナ事ヲサレテハ!」


乞うご期待!



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