第307話 貴族「お前達は全員奴隷にしてやる!」

ガンツ 「この者ポンチョは私の従者ではない。何かと纏わりついてくるので仕方なく雑用係として雇ってやったのだがな。何か無礼な事をしたか?」


ポンチョ 「そんなぁ、一応これでもアッシは護衛として雇って頂いているつもりなんですが…」


ガンツ 「ふん、私はAランクだぞ? 私よりずっと弱いDランクのお前が、私の護衛など務まるのか?」


ポンチョ 「う、それを言われると……だからせめて、雑用もがんばってこなしているんじゃないですか。今も、うまそうな匂いをさせている飯屋を発見したので、ガンツ様の昼食にどうかと思いまして、店の者に指示していたところでして」


リュー 「ちょまて。飯屋ってなんだ?」


ポンチョ 「違うのか? さっき冒険者が金を払っていたのを見たぞ?」


どうやらポンチョはセミ達が食事していったのを見ていたようだ。


リュー 「ここは別に飯屋を開いてるわけじゃないんだが……俺達は単に自分たちの昼飯を食っていただけだ」


ポンチョ 「だ、だが……」


ガンツもポンチョも周囲を見回しながら胡乱げな反応をしている。


見回して見ると、城壁の外とは言え、小屋が建っており、屋外部分にも巨大な布張りの屋根がかかっていて、テーブルと椅子が並べられている。なるほど、冒険者相手に料理を出して商売していると思われたのも仕方ないかも知れないとリューも思ったのであった。


リュー 「ああ……。勘違いさせて悪いが、別にここで食堂を開いているというわけじゃないんだ。飯を食っていたらたまたま腹を空かせた冒険者が通りかかってな。懇願されたので仕方なく飯を喰わせてやっただけだ」


ポンチョ 「だ、だったら、俺達にも喰わせてくれてもいいだろうが!」


リュー 「さっきも言ったろ? 頭を下げて頼むなら別に食べさせてやってもいいが、上から目線で命令される謂れはないっての」


ポンチョ 「馬鹿者め、ガンツ様は貴族様だぞ! 平民に頭を下げて頼むなんてさせられるわけないだろうが」


ランスロット 「あなたは貴族ではないですよね? 少なくともあなたが威張る必要はないわけでは?」


ガンツ 「馬鹿者はオマエだポンチョ。勝手に私の威を借りて偉そうな態度をするんじゃない」


ガンツに叱られてシュンとなってしまうポンチョ。ガンツはリュー達に向き直って言った。


ガンツ 「私の雇った者が失礼な態度を取ったようだ。ところで、昼食を取っているだけというのは理解したが、先程からなにやらうまそうな匂いがしておる。私にも食べさせてくれないか? もちろん金は払う」


言ってる側からガンツの腹がグルグルと鳴った。


リュー 「どうやら腹を空かせているようだな、ああ、構わんよ。一皿銀貨一枚だ」


ガンツは結局頭を下げるような態度はとらなかったが、まぁ貴族なので平民に対する態度はそんなものだろう。素直に食わせてくれと頼んできただけでもこの世界では十分凄い事なのである。


もしかしたらこのガンツと言う男は、それほど悪い貴族ではないのかも知れないとリューは思った。


席に着き、出されたカレーライスを一気に平らげたガンツ。


ガンツ 「うむ、これは美味いな。なんと言う料理だ?」


ヴェラ 「カレーライスです」


ガンツ 「ほう、異国でそんな名前の料理があると聞いた事があるぞ、一度食べてみたいと思っていたのだ。そうか、これが……


よし、気にい行ったぞ! お前達、私の屋敷で料理人として雇ってやろう!」


リュー 「いや、そういうのは遠慮しておくよ。俺達も冒険者なんだ、料理人じゃない。ましてや貴族の料理人になぞなる気はない」


ポンチョ 「おおああ?! お前達のキモチなんぞどうだっていいんだよ! ガンツ様が雇うと言ったら黙って従えばいいんだ。ガンツ様に雇ってもらえるなんて、ありがたい事なんだぞ?」


リュー 「お・こ・と・わ・り。別にありがたくもない」


ガンツ 「……先程から少々目に余るな……」


ガンツが小さな声で呟く。表情は先ほどとは打って変わってあからさまに曇っていた。


ガンツ 「……平民ごときが貴族に対しあまり生意気な態度を取らんほうがいいぞ? そういえば……」


リュー 「?」


ガンツ 「お前達も冒険者だと言ったが、聞こえていたぞ、ランクはBだと言っていたな」


リュー 「ああ、昨日Bランクを認定された」


ガンツ 「そうか、なるほど、Bランクに昇格して気が大きくなっていると言うわけか。


確かに、Bランクと言えば達人級と言われるようなレベルだ。一般の人間からすれば超人的な強さを持っている。だがな、上には上が居るものなのだよ。私の冒険者ランクは “A” だ、残念だったな、まさか自分達より上のランクにそうそう出会うとは思っていなかったのであろう?」


リュー 「残念? 何が残念なんだ?」


ガンツ 「AとB、ランクはたったひとつしか違わないと思っているのだろう? しかも自分たちのほうが人数が多い、とな。


だが、たったランク一つでも、AとB、その間には隔絶した実力差があるのだよ。Aランクの冒険者は十人のBランク冒険者を圧倒できる実力ちからがあると言われている。


しかも、私は貴族だ。この意味が分かるかね? 平民の身でBランクまで上り詰めたのは立派と言えるが、しょせんは平民。貴族の才能には敵わないのだよ。


つまり……


私一人でお前達を圧倒する事ができると言うことだ!」


リュー 「まぁ、ランクがそのまま戦闘力を現していれば、そうなるかも知れんがな」


ガンツ 「なんだと? ふん、強がりか、内心ではビビっているんだろう、分かっているぞ?


まぁ、安心しろ、命まで取る気はない。全員気絶させてから、奴隷商に連れて行って隷属の首輪をつけてやる。次に目が覚めた時には立派な奴隷として、私に仕えてもらうぞ。


これは決定事項だ、もう逃れられない運命というわけだ!」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


ランスロット 「コイツ、殴っていいですか?」


乞うご期待!


― ― ― ― ― ― ―


新作公開しました。どうぞよろしく。

https://kakuyomu.jp/works/16816700426726189148



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