第303話 それって意味あんの?

三体のスケルトンの冒険者登録とランクアップ試験が終了し、リューもスケルトン達―――ランスロット・パーシヴァル・エヴァンスも全員Bランクとして認定された。


ドロテアはどうせなら冒険者ランクも魔導師ランクと同じくSランク認定させたかったようだが、田舎の街のギルドでは限度があるのは致し方ない。


冒険者ギルドを出たリュー達は、次に街で買い物をする事にした。スケルトンの三人の服を買うためである。


武器と防具もとリューは言ったのだが、どうやらスケルトンは魔力によって作り出されるオリジナルの武器・防具を持つので不要と言うことであった。


ただ、服はそうはいかない。リューは、スケルトンが街を歩いている違和感を消すべく、ランスロット達に服を着せ、なるべく人間らしい格好に変装させる事にしたのである。


ついでに、子供達とモリー、ヴェラにも気にいった服があったら買っていいと言ったのだが、モリーはリューが留守の間にかなり買い込んだそうで、もうよいと言っていた。遠慮しなくて良いと言ったが、もう十分だと言うので、モリーとヴェラには子供達の服を選んでもらう事にした。


ランスロット達スケルトンに服を着せ体を隠し、カツラを被せ髪を前に垂らし、目深にフードを被せてしまう。これで遠目なら人間と区別がつかないだろう。


近くに寄ると骸骨の顔が見えてしまうが、それについては仮面を装着すればよいのでは? とリューが提案、仮面を購入する事になった。


ランスロット 「私達はコレがイイデス」


カツラを売っていた装飾品の店でランスロットが選んで持ってきたのはなんと、骸骨の仮面であった……。


リュー 「いや、まぁ、イインダケドネ……」


やっぱりスケルトンは骸骨が好きなのだろうか?


ランスロット 「ちゃんと考えての事ですよ。何故なら、日頃からドクロの仮面を被って入れば、外した状態を見られても、仮面を被っているのだなと思って貰えるではないですか」


リュー 「おお、なるほど!」


ヴェラ 「ねぇ、リューが着けているような仮面があればそこまで気を使わなくても良いんじゃないの?」


リューはこの国に入った時から、素顔を知られないようにずっと仮面を着けている。それほど大きくはない、目鼻を覆うだけの仮面であるが、それには認識阻害の効果が掛けられており、周囲の人間は仮面を着けた状態がリューの素顔の状態であると認識し、誰も疑問を抱かないようになっている。認識阻害に耐性を持つ者も居ないわけではないのだが、そこは不死王が造った仮面である、その効果は非常に強力で、今の所、破られた事はない。


だが、ランスロット達が着けた仮面は、店で売られていたただの装飾用の仮面なので、仮面自体にはなんの効果ももない。仮面を着けているのを見れば違和感を感じる者は多いだろうし、当然、顔を見せろと言われる状況になる可能性はある。仮面を外して骸骨の顔を見てしまえば、相手は腰を抜かす事になるだろう。


どうせならリューが持っているような “認識阻害” の効果のある仮面を不死王に作ってもらうのは良いアイデアである。


ランスロット 「それについては私から不死王様にお願いしておきましょう。それまでは、とりあえず、このドクロのお面を着けておくと言うことで……」


まぁ、ドクロの仮面は見るからにお面を被っているのが分かるので、まさかお面を取ったその下にまた骸骨の顔があるとはよもや誰も思わないだろう……


買い物も終わり、もういい時間なので、そろそろ帰ろうと言うことになった。


また街の外に出してある小屋に戻る事になるが、その前にリューは市場に立ち寄った。ヴェラがどんどん食材を選び買っていく。それに付き合い、買った食材や料理をどんどん収納していくリュー。


ドロテアとガーメリアも二人で市場の中の興味のある店を見て回っていた。案外、親子の時間を楽しんでいるのかも知れない。


子供達とモリーには金を渡して、屋台で好きなものを食べて良いと言ってある。どうせなので今夜の食事はそれで済ませてしまおう。


スケルトンは食事は不要なので何も食べられないが、ランスロット達はそれが残念そうであった。


ドロテア達にもスケルトン兵に伝言を頼んだ。(この町ではスケルトン兵を見かけることが多くなったため、市場の人間もスケルトンが現れても特に騒ぐこともなくなっている。)


やがて、買い物が終わり合流し、門を出た一行。そこに数騎の騎士が走り込んできた。


騎乗から一人がドロテアの事を見つけて声を掛けてくる。


ランバート 「先生? ドロテア先生ではないですか?」


ドロテア 「おお、ランバートではないか」


ランバートはドロテアの弟子の一人で、宮廷魔道士四天王の一人である。四天王は国政を担う官僚のトップのような立場であるが、取り急ぎ、ダヤンの街の応急対応のために駆けつけてきたらしい。


王都からダヤンの街までは急いでも五日かかる距離であるが、強化魔法によって移動速度を上げる事で、三日でランバートは到達する事ができたのである。


(ドロテアの強化魔法であればもっと速いのだが、ランバートは内政には強いがあまり強化魔法が得意ではなく、二倍程度の強化が限界であった。)


ランバート 「先生、どうしてこんなところに……? 確か王宮にいらっしゃったはずなのに、私より先にダヤンの街にいらっしゃるとは??? そうか、後から出て、いつの間にか追い越されたのですね? さすが、我が敬愛する師匠、私はまだまだ遠く先生には及びませんね……」


ドロテア 「落ち着けランバート。私はリューの空間魔法で連れてきてもらったのだ」


ランバート 「リュー?」


ドロテア 「一度会っただろう、リュージーン殿だ」


ドロテアの後ろにいる者達の中に、いつぞやドレッソンの街で見かけた冒険者が居る事に気づいたランバートであった。


ランバート 「ああ、いつぞやの……


…そちらの方々は?」


ランバートはリューと共に居る者達に鋭い視線を送った。ヴェラでもなく、子供達でもモリーでもなく、三人のスケルトンに対してである。


服を着て仮面を着けているので一見してスケルトンであるとは分からないはずだが、ランバートは三人が発する禍々しい魔力を感じ取ったのであった。


魔力を感じずとも、ドクロの仮面を被っている三人は十分怪しい風体であるのだが……


ドロテア 「ああ、そちらの三人はスケルトンのランスロット殿、パーシヴァル殿、エヴァンス殿だ、リューの従魔で冒険者でもある」


ランバート 「スケルトン?!」


するとランスロットが仮面を外し、挨拶をした。


ランスロット 「ハジメマシテ、ランスロットと申します。どうぞよろしく」


ランバート 「本当にスケルトン!? しかも喋った!?」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


リュー 「カレーが食いたい! ヴェラ、作ってくれ!」


乞うご期待!



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