第300話 スケルトンのチート冒険者生活

祝! 300話 \(^o^)/

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スケルトンの三人も十分過ぎる実力がある。だが、魔物であると言う事でどうしても目立つ存在になるだろう。そこで、余計なトラブルを避けるためにも、さっさとランクを上げてしまおうという事になったのであった。


ただ、過去の実績があったリューと違い、三人は冒険者としては完全に新人である。まずは、Eランクの受験資格を得るところからスタートしなければならない。


まだ王都から応援の部隊は到着しないので、街を離れるわけにもいかないので、暇つぶしにも丁度良いであろう。


Eランクの基準は―――

1.百点以上のギルドポイント

2.薬草の採集依頼を十回以上

3.薬草以外の素材の納品を三回以上

4.依頼達成件数が三十回以上


である。まずは、薬草の採集依頼から始めなければならない。


ランスロットは依頼の掲示板から薬草の採集依頼を剥がして受付に持っていった。


ランスロット 「ちょっと質問なのですが」


受付嬢 「はい?」


骸骨に話し掛けられてちょっと引き気味の受付嬢であったが、なんとか平静を保って受け答えしていた。


ランスロット 「先程聞いた話では、Eランクの受験資格には薬草の採集依頼を十回以上こなす必要があるそうですが」


受付嬢 「はい」


ランスロット 「この回数というのはどのようにカウントされるのですか?」


受付嬢 「はい? カウントとは???」


ランスロット 「例えば、こちらのゴブリンの討伐依頼ですと、ゴブリン五匹以上と書いてありますが、一五匹仕留めたなら、依頼三回分達成とカウントされるのではないですか? あるいは、どれだけ倒しても、一回の依頼報告につき一回とカウントされるのですか?」


受付嬢 「ゴブリンの討伐は常設依頼ですので、その場合ですと三回分として処理する事が多いですね。その他の魔物の討伐依頼の場合は条件より多く狩ってきても一回の依頼達成としか認められないケースが多いですが。そういう場合も、状況と獲物の価値によって報酬が上乗せされたりはあります」


ランスロット 「薬草採集も常設依頼ですよね? ならばゴブリン退治同様、多く採集してきたら、その分回数としてカウントしてもらえますか?」


受付嬢 「そうです、薬草の場合は十本で一回とカウントする事になっています」


ランスロット 「では、百本採集してくれば、一度で十回分達成と認めてもらえるわけですね? 三百本持ってくれば、私とほか二人(パーシヴァルとエヴァンス)の分も、条件達成と」


受付嬢 「初心の冒険者の場合は、経験を積ませると言う意味があるのでそのようなやり方では困るのですが……あなた方の場合は普通ではありませんからね……いいでしょう、今回は、特例として認めましょう。いいですよね、マスター?」


キング 「ああいいよ、その辺の細かい判断は受付嬢に任せている」


ランスロット 「では! 薬草の採集依頼を1人につき十回分、受注いたしますので手続きをお願いします」


受付嬢 「いえ、常設依頼はいちいち依頼の受注手続きをしなくても構いません、薬草を採集してきたら持ってきて頂ければその数に応じて依頼を受注し達成したとカウントさせて頂きます」


ランスロット 「そうですか、では。ちょうど今採集が終わったようなので、提出致しますので数えてもらえますか? ああ、あちらの素材納品カウンターに出したほうが良いですね?」


受付嬢 「…は?」


ランスロット 「今、部下のスケルトン兵士達に命じて、森の中で薬草を採集させておりまして、ちょうど終わったと報告が来たのです」


それと同時に、ランスロットの隣に半透明のスケルトンの兵士が見え始めた。やがて実体化したスケルトンは、手にサンタクロースのような大きな白い袋を持っていた。


ランスロットが袋を受け取ると、またスケルトン兵士は薄くなって消えてしまう。


ランスロット 「では、カウントをお願いします」


受付嬢 「……はい?」


ランスロット 「いえ、ですから、部下に命じて採集を完了いたしましたので……」


受付嬢 「百歩譲って、部下の、眷属の魔物に採集を任せたのは良いとしましょう、本当はダメな気もしますが、まぁ良いとして。一体いつから命じていたのですか?」


ランスロット 「命じたのはつい先程、数分前ですが?」


受付嬢 「それで採集がもう終わったのですか? 速すぎませんか?」


ランスロット 「私の部下は万単位でおりますので、とりあえず、1万人ほど森に投入いたしました。さほど時間はかからなかったようですね。我々は亜空間を通って移動できますので、移動時間もゼロですし」


受付嬢 「いち、まん、にん? あの……部下の方が一万人もいらっしゃるのですか?」


ランスロット 「いえ、正確に数えたことはありませんが、その百倍くらいの数はいますぞ?」


受付嬢 「それは、すべて、その、スケルトンの方々なのですか?」


ランスロット 「スケルトン以外の種もおりますが、大部分がそうですね」


受付嬢 「普段、その方たちはどちらにいらっしゃるので……?」


ランスロット 「亜空間の中に控えておりますのから、いつでも呼び出すことが可能ですぞ?」


そうランスロットが言うと、冒険者ギルドのロビー中にぎっしりとスケルトン兵が実体化した。突如顕れたスケルトンにあちこちから悲鳴があがる。慌てて剣を抜き、斬りかかっている冒険者も居たが、あっさり往なされ取り押さえられていた。


受付嬢 「分かりましたから、止めてください、消してください!」


するとスケルトン兵達はすぐに全員薄くなって消えて行ったのだが……


ランスロット 「あぁ、お前達、冒険者は置いていきなさい」


先程斬りかかって取り押さえられた冒険者が、そのままスケルトン達に連れて行かれそうになっていたのをランスロットが止めた。助かったその冒険者は、尻もちをつき涙目になっていた。


ランスロット 「…では、カウントをお願いできますかな」


結局、薬草は五百本近く採集されていたので、ランスロット・パーシバル・エバンスの薬草採集依頼達成数が一人十回以上と認められたのであった。


リュー 「ランスロット、これだけ一気に乱獲してしまうと、薬草が根絶やしになってしまうのではないか?」


ランスロット 「大丈夫です、ちゃんと一箇所につき一株以上は残して全て取り尽くさないように命じてありますから。言ったでしょう、私は常識的なスケルトンだと。人間の冒険者のようなミスはいたしませんぞ」


リュー 「そ、そうか……ならいいが……」


ランスロット 「さて、次の要件は、薬草以外の魔物の素材の納品、三回以上ですな。それも、先程同時に済ませておくよう指示してありますので、カウントして下さいますかな」


再び、スケルトン兵が現れては素材をカウンターに置いては消えていく。素材はゴブリン・オークを始め、この周辺に生息している魔物が盛りだくさんであった。中には雷熊サンダーベアのようなAランクの魔物の素材も混ざっていた。


その日、ダヤンの街の近くにあった森は、突然現れた1万人のスケルトン兵によって、森の中の魔物が狩りつくされてしまった。薬草に関しては取り尽くさないように気をつかったが、魔物に関しては手加減なしである。それは、基本的にはダンジョンの中で自然発生するものなので、取り尽くしても絶滅する心配はないからなのだそうだ。


(というか、人間の側からすれば、魔物は絶滅して欲しいと思う者も多いだろう。人間の社会も魔物の素材で潤っている部分があるにはあるが、なければないで、家畜や野生動物でなんとか工夫していくようになるだけである。)


大量の獲りたての素材を提出したランスロット。


だが、ギルドの素材買取カウンターは、突然持ち込まれた大量の素材にパニックになってしまった。しょせん、田舎の街でしかないダヤンの冒険者ギルドにはそれほどのキャパはないのであった。



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次回予告


スケルトンの昇格試験・模擬戦編


乞うご期待!



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