第296話 スケルトン、冒険者になる

すいません、ワクチンの副反応で倒れてました(笑)


―――――――――――――


奴隷商を出て、次にリュー達が向かったのは冒険者ギルドである。


キングが呼んでいるとヤンの部下が知らせて来たのだ。キングって誰だ? と一瞬思ったリューであったが、そう言えば冒険者ギルドのマスターがそんな名前だったとかろうじて思い出した。


冒険者ギルドへ向かう道すがら、リューはドロテアに尋ねた。


リュー 「そう言えば、この国は随分戦争を行っていたようだが、戦争奴隷というのは居ないのか?」


ドロテア 「戦争で捕虜になった者は、軍のほうで一括管理している。捕虜交換で返したりもあるし、軍としても奴隷はいくらでも使い道はあるからな、まれには軍から払い下げられる事もあるが、市井にはあまり出回らないだろうな」


リュー 「そうか……使い途は色々あるだろうしな―――新兵器や新薬の実験台とか?」


ガーメリア 「そんな事はしない! 軍の施設の建設工事などに従事させているだけと聞いているぞ」


ドロテア 「まぁ、確かに、戦争となれば、綺麗事ばかりではないがな。戦争奴隷や犯罪奴隷は、盾代わりに使ったり、爆弾を抱えさせて敵軍に突撃させたりなどもできない事はないからな」


ガーメリア 「そんな…酷い…我が国の軍がそのような事を?」


ドロテア 「そんな戦い方は先王も嫌ってはいた。だが、捕虜が大量に死んだという報告があった事も何度かあったようだ。最前線で戦っている貴族も必死だろうからな、余裕がなくなれば、どんな手段を取るか……」


ガーメリア 「そんな……」


リュー 「ガーメリアは知らなかったのか。だが、まぁ、奴隷の扱いなんて、どこの国もそんなものなんじゃないのか? 犯罪奴隷は死刑よりも重い罪なのだろうから、仕方がないところはあるだろうな…」


ドロテア 「私もガーメリア達も先王が死んでからの登用だからな。特にガーメリアは……私は、先王が続けていた戦争を終結させる為、現王と共に戦争に参加せざるを得なかったのだが、ガーメリアはその後の登用だから、戦争に参加した経験はないのだ。


まぁ、色々な “噂” が流れるものだが、実際に戦場で何があったかなど、真相はその場に居なかった者には分からん。案外、噂など、間違っている事も多いしな。それに……


…エド王はもうこれ以上戦争はしない方針なのだから、そんな事態は起きないさ」


ガーメリア 「でも、攻め込まれたら?」


ドロテア 「その時は戦うしかないだろうが……防衛戦は得意だからな、私が居る限り負ける気はない。私は伊達に【不滅の要塞】と呼ばれているわけではない」


ガーメリア 「確かに……!」


ドロテア 「私だけじゃない、今はお前達四天王も居る。王の力になってやれ」


ガーメリアは黙って頷いた。



  **  *  **



やがてギルドに到着したリュー達。


ギルドの扉を開けると、視線が集まるのはいつもの事であるが、今日はリューとヴェラの他に、ランスロットと、子供二人にモリー、さらにドロテアとガーメリアまで一緒の大所帯なので、一段と目立ってしまうのであった。


だが、さすがにリューの知名度も上がってきており、ちょっかいを出してくるような者は居なかった。


リューは警備隊と揉め、この街の裏社会のボス(ヤン)とも揉め、領主とも揉め、それらの問題全てを力づくで解決してしまったのである。


さらに、金・黒・青色のスケルトンを連れている。(今日は黒と青は姿を見せていないが。)その印象は強烈過ぎて、忘れようもないというものである。


ヴェラとモリーは子供達を連れてギルド併設の食堂(酒場)に行き食事をする事にした。


リューは受付に行き、ギルドマスターに呼ばれたと伝えると、すぐにキングがギルマスの執務室から飛び出してきた。


キング 「おお、来たな、待っていたぞ」


リュー 「何かあったか?」


キング 「おいおい何かじゃないだろう、お前の連れている金色の骸骨の件だよ」


リュー 「ああ、冒険者登録の件か? 許可が下りたのか?」


キング 「ああ、結論から言えば、許可は下りた」


リュー 「回りくどい言い方をしているという事は、無条件で、というわけではないのか?」


キング 「ああ、一応、お前の従魔として登録をしたままで、という条件付きだ。つまり、冒険者としてスケルトンは登録されるが、同時にお前の従魔でもあり、何か問題が起きた場合はお前が責任を取るという事になる。それでよければ、冒険者として登録を認めて良いそうだ。どうする?」


リュー 「責任は俺に掛かってくるのか……」


リューはランスロットの顔を見て一瞬考えた。


リュー 「やめておこうかな」


ランスロット 「リューサマ? 私は極めて常識的なスケルトンですよ、問題など何も起こしたりは致しませんぞ?」


リュー 「はは、ソウダトイインダガナ。では、登録をお願いしようか…」


ランスロットが受付嬢の前に進み出てきた。受付嬢はかなりビビって逃げ腰になっているが、なんとか登録の手続きを行ってくれた。


書類に名前その他を書き、魔道具の水晶玉に骨の手を乗せると、登録が無事完了し、ギルドカードが発行されたのであった。


いつの間にか、金属光沢のある黒と青のスケルトン、パーシヴァルとエヴァンスも姿を現しており、ランスロットに続いて登録作業を行った。


ランスロットは嬉しそうにギルドカードを持ち上げて見ている。骸骨なので表情はないはずだが、不思議な事にランスロット達の表情は見ているとなんとなく分かるのであった。


キング 「本当に、スケルトンの冒険者が誕生しちまうとはな。前代未聞の珍事だな。ついでにパーティ登録をしておけ、どうせリューの従魔扱いなのだから、一緒に行動するんだろう?」


ランスロットが任せろというので、リューはパーティ登録の手続きを任せてしまった。リューがリーダーで、ヴェラとランスロット、パーシヴァル、エヴァンスの五人パーティである。実はランスロットが勝手にパーティ名を「ホネホネ団」にしてしまったのだが、それにリューが気づくのは大分後の事であった……。


リュー 「さて、次の用件だが……昇格試験を受けたいのだが、ここで受けられるか?」


キング 「ああ、お前はまだFランクだったな。構わん、と言うかむしろ受けろ。こんな化け物達を従魔にする冒険者がいつまでもFランクでいられても困る」


リュー 「一気にSランクまで挑戦したいのだが、できるか?」


キング 「ばっ、何を言ってる? そんなのは無理に決まってるだろうが。自信過剰も甚だしい。あまり調子に乗っていると痛い目を見るぞ?」


ランスロット 「主は十分Sランク以上の実力があると思いますぞ?」


キング 「Sランクってのは試験だけじゃあなれねぇんだよ。実績が十分に認められる必要があるし、貴族か王族の推薦も必要だ」


ドロテア 「それなら私が推薦しようか。リューの実力は私が保障する」


キング 「あん? あんた誰だ……どっかで見た事があるような……って! あなたは! 英雄ドロテア!?」


ドロテア 「ああ、いかにも。宮廷魔道士長をしているドロテアだ。私は王から公爵位を貰っているので、推薦する資格はあるだろう? ついでに言うと、リューには私が正式に魔道士ランク『SS』を認定した。もうしばらく実力を確認してからになるが『SSS』認定の可能性もある」


(※冒険者ランクとは別に、魔法王国ガレリアには独自の “魔道士ランク” というものがある。)


キング 「なっ、SSランクゥぅぅぅ~?!」


受付嬢 「確か、Sランクもこの国には1人しかいない、そのSランクこそドロテア様。リュージ―ンさんは、ドロテア様より実力は上だと言うのですか?」


ドロテア 「そうだ。私ごときではリューには歯がたたないよ。あ、渡すの忘れてた、これ、SSランクの認定証ね。王様の魔力紋入りだよ」


ドロテアがリューに認定証を渡してきた。ガーメリアが悔しそうな顔をしているが、特に口は出してはこない。


キング 「ありえねぇ、【不滅の要塞】英雄ドロテアが歯が立たないとか、どんだけ……」


リュー 「その魔導師ランクってのはよく知らないが、じゃぁ冒険者ランクはS認定って事でいいのか?」


キング 「それは無理だ。魔導師ランクは魔導士ランク、冒険者ランクとは別だ。冒険者のランクを上げたかったからちゃんと条件を満たして試験を受けて合格してもらわないとダメだ」


リュー 「ま、そりゃそうだよな。じゃぁ、試験をさっさとやってくれ」



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次回予告


ランクアップ試験を受ける


乞うご期待!



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