第290話 それは言わないはずだったのに
宰相 「なんですと?!」
王 「この国には、私が信用できる人間は少ない。情けない話だが、私を快く思っていない貴族のほうが7~8割と行ったところだろう。
負けるつもりはまったくないがな。だが…
…国を糺すには長い時間が掛かるだろう。
正直、一度国をぶち壊してしまわなければ、国のあり方、貴族のあり方を糺すには早道ではないかと思う事がよくあるのだよ。
ふふ、実はな、リュージーンについては、ドロテアの報告を受けてすぐ、国内の貴族全てに、『一切手出し無用、敵対する事ならぬ』と通達を出してある。まともな貴族であれば手を出してくる事はないと思うがな」
宰相 「王様、それは言わないはずだったのに……」
事実上の無法行為の許可となりかねないので、本人に知らせる必要はないとドロテアと宰相と話していたはずだったが、王はあっさりバラしてしまった。それは、そのほうが正しいと王の直感が告げているからである。
直感的に正しい選択を選べるというエドワード王のスキルは、人々を導く力としてこの国の王家に受け継がれた能力なのだ。それゆえ、ガレリアの王族は国の舵取りを任されるようになったのだ。
そして、先代の王は、その能力を主に戦に勝つ事に使ってしまったが、エド王は国を豊かにする方向で使いたいと思っているのであった。
王 「だが、逆にその通達を受け、リュージーンの実力を知れば、ちょっかいを出してくる貴族も出てくるであろう。はからずも、私の命令に従わない貴族をあぶり出すのにちょうどよい試金石にリュージーンがなると言うわけだ」
リュー 「えー? なんかちょっと迷惑ナンデスケド?」
王 「別に私が通達を出さなくとも、いずれリュージーンの実力は知れ渡っていくだろうから一緒だろう。報告がたくさん入っているぞ? 自重する気もなく、随分とあちこちで力を見せつけているようではないか? そう言えば、恐ろしい魔物を従魔とし、冒険者登録まで認めさせたとか? 今日は連れてきていないのか?」
リュー 「そこまで報告が入っているのか。
…彼らはいつでもどこでも自由に呼び出せる、なんならこの場に呼んでみせようか?」
王 「おお、ぜひ頼む」
すると、いつの間にかパーシヴァルとエヴァンスの二人がリューの傍らに立っていた。
リュー 「
抑えてはいるが、それでも禍々しい雰囲気がスケルトン達から滲み出る。子供達はもうすっかり慣れてしまったので気にならないようだが、その場にいる王や宰相、護衛の騎士達は硬直してしまった。
王 「これは……なんと……」
宰相 「すっ、スケルトンではないかっ! そんな危険な化け物を従魔などと認められるか!」
リュー 「人間のほうがよほど危険だと思うがな。なぁ、パーシヴァル・エヴァンス」
パーシヴァル 「御意」
王・宰相 「しゃべったー!」
リュー 「元は人間だった者達だ、言葉が通じるのは当然だろう? 生身の人間でも言葉が通じない奴は多いからな。彼らのほうがよほど信頼できるぞ?」
王 「
リュー 「ああ、人数は……どれぐらい居るのだ?」
パーシバル 「機密事項なので公にはできませんが、スケルトン兵が万単位で用意できますぞ」
王・宰相 「万……」
宰相 「万単位のスケルトン軍団など、国が攻め滅ぼされかねないですぞ!」
王 「だから
リュー 「国を作るとか面倒くさい事、興味ないがな」
宰相 「こ、このような者を国内に留めて自由にさせていたら、いずれ国を乗っ取られるのではないですか?」
リュー 「安心してくれ、国を滅ぼしたり乗っ取ったりも興味ない。俺はただ、自由気ままに静かにのんびり生きていきたいだけさ。ちょっかい出して来ない限り、何もせんよ」
王 「リューには何でも自由にしてよい権限を与えるわけではない。鑑定士として違法奴隷を解放する権限と、民のためにならない腐った貴族を粛清する権限だけだ。それ以外の理不尽な不法行為を許す気はないぞ。リューもそれは分かっているだろう?」
リュー 「もちろんだ。基本的には、この国の法に反する事をする気はないよ。まぁこの国の法律を熟知しているわけではないから、他の国にないようなおかしな法があれば破ってしまうかも知れないが、その時はまた王に話をしに来るよ」
王 「そうしてくれると助かる。もし、リューが民のためにならない無法者となるならば、国が総力をあげてリューを捕らえ罰する事になる。まぁリューが滅ぶか国が滅ぶかという総力戦になってしまうかも知れんが、リューはそんな事をする人間ではない。そうだろう?」
リュー 「俺は、俺と俺の友人・家族を理不尽に害する者とは遠慮なく戦うが、関わってこないなら、俺から関わる事はないさ。俺は目立たず静かにのんびり暮らしたいだけだ」
ドロテア 「嫌でも目立つと思う……」
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次回予告
レスターとアネット、故郷の村に帰るが……
乞うご期待!
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