第279話 奴隷商「私は知らなかったから無罪デス!」
ヴェラ 「レスリーとアネットじゃない! どうして…?」
リュー 「…なぜこの子達がここに居る?」
ジロリと奴隷商を睨むリュー。ヴェラも厳しい視線である。その雰囲気に奴隷商がしどろもどろになりながら言葉を発した。
奴隷商 「え? …いえ、その、困りますよ、勝手に開けられては」
リュー 「
奴隷商 「そ、その子供は最近仕入れた当店の商品ですが……入手経路等は店の企業秘密となりますのでお教えする事はできないのですよ」
奴隷商に向かってヤンが渋い表情で首をゆっくり横に振っている。誤魔化さずに正直に答えたほうがいいという意味である。
奴隷商 「う、売りに来た者が居たので買い取っただけです、当店としては何もやましい事はございません……お、お知り合いでしたか?」
リュー 「ああ。…この子達は金で売られたと言う事か? 借金奴隷という事になるのか?」
奴隷商 「契約奴隷です、借金奴隷の一種ですね」
リュー 「……確認なんだが、この国では、人を攫って無理やり奴隷にするような行為は認められているのか?」
奴隷商 「いえいえ、そんな事は許されていません。そのような違法奴隷は売買だけでなく所持しているだけで重罪となります」
リュー 「ではお前は重犯罪人だな」
奴隷商 「はい?」
リュー 「この子達は攫われて奴隷にされたのだ。その奴隷商が盗賊に襲われ、結局盗賊の奴隷にされていた。それを、俺が盗賊を討伐した時に保護したのだ。この街で奴隷から解放し、両親を探して帰す事になっていたはず。そのような者をお前は商品だと言ったじゃないか。違法奴隷を扱ったら重罪だろう?」
奴隷商 「いえ、それは! 私共はそんな事情は存じませんでしたからっ! 売った者は罪に問われるかも知れませんが、知らなかった私共には罪はありません!」
リュー 「知らなかったで済む話なのか? 売買する時にどのような
奴隷商 「いえ、そのような義務はないのですよ。いちいち素性を調べるのは大変ですし、そもそも、素性を喋るなと命じられていれば、奴隷も何も語りませんから、分からないですから」
リュー 「【鑑定】すれば分かるのじゃないか」
ヴェラ 「リュー、私やあなたと違って、そこまで詳しく分かるようなレベルの高い鑑定士は少ないし、料金も高いのよ…」
リュー 「そうなのか……。だが、キチンと調べれば分かるはずではあるのだよな? 違法奴隷を扱う事を重罪とする法律がありながら、それをちゃんと調査して守らせる法律がないというのは片手落ちだな?
知らなければOK。調べる義務もない。そんな言い分が通るなら、奴隷商は人攫いから奴隷を買い放題じゃないか?」
奴隷商 「そう言われましても、奴隷商側に調査の義務を課す法律は存在しませんので……私共に言われても困ります、法律の不備は国王に訴えて下さい」
リュー 「そうか、ならばこの国の国王に訊ねてみるか」
“できるものならやってみろ” という言い方に、思わずリューも意地になって言い返してしまった。
奴隷商 「は? 国王様にそんな事で会えるわけないじゃないですか。お客様は平民ですよね?」
リュー 「会おうと思えば会えるさ。それより!
この子達は違法奴隷だと判明したのだから、解放してもらおうか!」
奴隷商 「……それは……できかねます」
リュー 「なぜだ? 違法奴隷は所持しているだけで重罪なのだろう?」
奴隷商 「その通りでございますが、それは、この子達が違法奴隷であるという証拠があれば、です。お客様がおっしゃられているだけでは、ちょっと……」
リュー 「なるほど。俺がいくら口で言っても証拠がないと言うわけか。そして値段が高い優秀な鑑定士を雇って調べる気もない、と」
奴隷商 「申し訳有りませんが。そういう事になります」
リューは神眼で奴隷商の心を読んでみたが、どうやら嘘は言っていないようであった。
このように正規でないルートから持ち込まれる奴隷は、そのほとんどが違法奴隷である可能性が高い事は認識しているのだが……
法律がないと言う事で、あえて確認せずに購入しているのだ。
リュー 「確信犯というやつか……。だが、法的には違法ではなくとも、道義的には許されない事なんじゃないのか?」
奴隷商 「そう言われましても、私らも商売ですのでねぇ……」
リュー 「…そうだ、本人達に確認してみたら良いのではないか? 隷属の首輪がついているのだから、嘘はつけないはずだろう?」
奴隷商 「……良いでしょう、確かめてみましょうか。おい、その二人をこちらに連れて来い」
店員が牢を開け、二人を連れてきた。
奴隷商 「お前達は攫われて無理やり奴隷にされたのか?」
だが、子供達は答えない。
奴隷商 「答えなさい。どうなんだ?」
兄 「ち…が…います……」
妹 「……違います」
ニヤッと嫌らしく笑ってみせる奴隷商。
奴隷商 「ご納得頂けましたでしょうか?」
ヴェラがリューの耳元で囁く。
ヴェラ 「本当の事を言わないように命令されているのよ」
リュー 「なるほど、上手く命令すれば嘘をつかせる事もできるわけか……
奴隷の
それにしてもガーメリアめ、無責任な!
まさかガーメリアが奴隷を売り飛ばしたんじゃないだろうな?」
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次回予告
リュー、奴隷の子供達を買う
乞うご期待!
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