第277話 たかがFランクがチョーシコイテンジャネェゾ?
リュー 「なぜだ? 別に人間以外は冒険者になれないというルールはないだろう? 獣人やエルフやドワーフだって登録してるじゃないか」
キング 「魔物は別だ」
リュー 「以前、魔族で冒険者になった例があると聞いたことがあるぞ?」
キング 「そんな話は聞いた事ねえ」
受付嬢 「いえ、遠い国での話ですが、確かそういう例はあったはずです」
キング 「なに? マジカ!」
リュー 「そもそも冒険者登録ができる資格・条件というのはなんなんだ? ちゃんと人間の言葉を理解し意思疎通ができて、ルールを守れるなら問題ないんじゃないのか? とりあえず、禁じる規則がないなら認めるべきじゃないのか?」
キング 「う……グイグイ来るな。ううむ、仕方ない。本部に問い合わせしてみる。明日また来てくれるか?」
リュー 「ああ、そうしてくれ。良い結果を期待している」
受付から離れたリュー。
リュー 「さて、
周囲の気配を伺ってみるリュー。みんなランスロット達スケルトンを遠巻きに見まがら、その表情には恐怖が浮かんでいる。
リュー 「やはり骸骨の化け物はみな怖いのか。この様子では、テンプレ展開はなさそうだな……」
ランスロット 「テンプラ? 何ですか?」
リュー 「それはだな……」
その時、遠巻きにしていた冒険者の一人が、意を決してリューに近づいてきた。
男 「おい、てめぇ、新入り! たかがFランクがチョーシコイテンジャネェゾ?」
リュー(ランスロットに向かって) 「こういう展開の事だよ」
・ ・ ・ ・
声を掛けてきた男は、かなり大柄な冒険者であった。周囲の冒険者からは「おいやめとけよ」という声も聞こえているのだが、男は、ランスロット達の存在に多少ビビりながらも、勇気を出してリューに声をかけてきたのだ。
リュー (ビビりながら無理する必要はないのに。テンプレは絶対やらないといけないルールでもあるんだろうか?)
男 「どこで冒険者してたのか知らねぇが、新しい街に来たら、まず先輩達に挨拶が必要じゃぁねぇのか? 礼儀知らずには世間は冷てぇぞ?」
ランスロット 「おお、これは失礼いたしました。私はランスロットと申します、以降お見知りおきを」
男 「じゅっ、従魔には、訊いてねぇ、黙ってろ」
だが、それを聞いたランスロットから禍々しい気配が湧き上がってくる。
思わず後退ってしまう男。
だが、それでも踏みとどまって喋り続ける。
リュー (その根性はどこか別の場所で発揮したほうがいいんじゃないか……?)
男 「ばっ、化け物連れてイキガッテルようだがな、本人の実力が一番大事なんだよぉ、冒険者ってのはな! 分かってんのかぁ? おめぇ自身の強さがねぇなら、結局命を落とす事になるぞぉ?」
リュー 「それはご丁寧に忠告ありがとう。まぁ俺自身も実力は十分あるから心配せんでもいいよ。それに俺はこの街で冒険者活動をする気もない。先輩方と上手くやる必要もないんでな、絡んでこないでくれるか」
男 「ってやんでぇ、自分は強いと勘違いしてるおめぇみてぇなガキが、ダンジョンでアッサリおっ死ぬんだよぉ」
リュー 「そういうお前は俺より強いのか? 試してみるか?」
男 「なんだてめぇやるってのか? い、言っとくが、従魔が誰かを傷つけたらそれは飼い主の冒険者の責任になるんだぞ、分かってんのか?」
リュー 「(ビビってるなら絡んでこなければいいのに……)安心しろ、やるのは俺自身だ。勝負は、そうだな……」
男 (ゴクリ……)
リュー 「腕相撲でどうだ?」
男 「は、はぁ? 腕相撲だとぉ?」
だがそれを聞いた男はほっとした表情をし、今度は悪そうに笑みを浮かべた。
男 「お前みたいな細い腕で、俺に勝てると思うのか?」
男は急に元気になって腕を上げ力こぶを作り太さを強調し始めた。
男 「今更逃げるのはなしだぜ?」
リューは黙って酒場のほうに行き、空いている席に座って男に手招きをした。
男 「てめぇ……思い知らせてやるぞ」
どうやら魔物が暴れる事はなさそうな展開にほっとした周囲の冒険者達が、今度はどっちが勝つか賭けを始めるのであった。
ヴェラ 「私はリューに金貨百枚賭けるわ」
もちろんヴェラも乗る。
リュー (ヴェラは意外とギャンブラーなのか?)
どうせまたリューに賭けるのはヴェラだけだろうと思いきや、意外にもリューに賭ける人間が結構たくさん居た。
リュー 「そう言えば先日ここでヤンとか言う奴とやらかしたんだったな」
先日のリューの立ち回りを見てリューの底知れない実力を見た何人かがリューに賭けたのだ。
冒険者 「おおっ! じゃぁ俺はビマレに賭けるぜ! ビマレ、負けんじゃねぇぞ!」
絡んできた男はビマレというらしい。
冒険者達がヒートアップしていき、リューの強さを知らない連中がビマレにどんどん賭けていく。腕の太さ勝負ならビマレの圧勝であるのだから仕方がない。
ビマレ 「おい、おめぇ、負けたら土下座で謝って俺の舎弟になれよ!」
リュー 「じゃぁ、俺が勝ったらお前は何をしてくれるんだ?」
ビマレ 「俺が負ける事はありえねぇんだよ」
リュー 「一応条件を決めておかないと勝負する意味がないだろう?」
ビマレ 「俺が負けたらおめぇの舎弟になって雑用をこなしてやるよ! まぁ負けることはありえねぇけどな!」
リュー 「舎弟なんかいらんよ! 他にしてほしい事もないし、困ったな。仕方ない、じゃぁ金でも賭けるか? 負けたほうが勝った方に金貨百枚払う、それでどうだ?」
ビマレ 「ひ、百枚だとぉ?! そんな金は……」
リュー 「金がないなら奴隷商にでも身売りしてでも払ってもらおう。……絶対負けないんだから問題ないだろ? 俺は、ほれ」
リューはテーブルの上に大金貨十枚を積んで見せた。大金貨は一枚で金貨(小金貨)十枚分である。四角い形状=薄型のインゴットで、表面には金貨同様、金額や美しい文様が彫り込まれている。
ビマレ 「大金貨だと……本物か?」
大金貨を一枚手に取り、シゲシゲと眺めるビマレ。
リュー 「鑑定できる者に確認してもらったらどうだ?」
すぐに冒険者に呼ばれたギルドの鑑定人がリューの大金貨を鑑定し、本物である事を確認してくれた。
そもそも、この世界の金貨には一枚一枚偽造防止の紋様が刻み込まれているので、偽造は意外と難しいのだそうだ。
リュー 「勝てばこの大金貨は全部お前のモノだぞ、どうする?」
輝く大金貨に目を奪われ、欲をかいたビマレは勝負を受けた。人間、欲をかいた時に判断力が鈍るものだ。もし負けら、ビマレは金貨百枚など払えないのだが、ビマレは負けなければいいと判断を誤ったのだ。
さて、テーブルに向かい合わせに座り、お互いの手を握った二人。
握った瞬間からビマレは違和感を感じていたが、それが何か分からなかった。
実は、リューの竜人筋肉は鍛えてパワーアップしており、人間の六十倍もの力を発生するまでになっている。特に何もしなくても並の人間に負ける要素はない。さらに、その筋量に振り回されないために、重力魔法で体重を二十~三十倍にも増加させている。
そのような状態では、ビマレは握った瞬間に岩を相手にしているような錯覚に陥るのは当然であろう。
だが、そんなはずはない、目の前に居るのは自分に比べれば華奢な小僧に過ぎない。大丈夫だとビマレは自分に言い聞かせた。
人間の感覚は視覚によるものが九割である、見た目に騙されてしまうのは仕方がないのだろう。
「始め!」
腕相撲勝負の開始の合図が発せられた。
― ― ― ― ― ― ―
次回予告
ビマレ、金が払えず奴隷商に売られる
デュエル スタンバイ!
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