第276話 アンデッドを従魔にって、ゾンビとかもあり?

リューは、街の警備がスケルトン兵によってとりあえずなんとかなりそうであるのを見届けた後、暇になってしまった。


王都からの応援が来るまでの間、いつものように街を観光でもして暇を潰すかと思っていたが、その前に、ランスロットを冒険者ギルドに連れて行き従魔登録をしておかなければいけない事を思い出した。


どうもランスロットは姿を隠す気はないようなので、正式に登録しておく必要がある。きちんと冒険者ギルドで従魔登録してしまえば、堂々と街を歩ける事になる。(アンデッドの従魔というのが普通ではない事には変わりないのだが。)


ランスロットは、それならば、自分の他に、隊長格二名のスケルトンも登録しておいて欲しいと言い出した。


現れた二体のスケルトン。一人はパーシヴァル、もう一人はでエヴァンスと名乗った。二人ともランスロットと同じスケルトンの上位種、メタルスケルトンナイトであるが、ランスロットが金色なのに対して、パーシヴァルは漆黒、エヴァンスは青みがかった色をしていた。


ランスロット 「エヴァンスは魔法が得意です。パーシヴァルは闇に紛れての隠密活動が得意ですぞ」


リュー 「あーランスロットと違って色が黒いからねぇ…」


ランスロット 「地味なのと無口なのはこの二人の欠点ですな」


パーシヴァル 「ランスロットが喋りすぎなんだ」


リュー 「お、喋った」


ランスロットを含めて三人とも、スケルトンの上位種であるだけでなく、非常に高いレベルまで成長しているため、魔物の危険度ランキングで言えばSランク、あるいはSSランク相当となるようだ。


パーシヴァルは忍者タイプ? エヴァンスは魔法使いウィザードタイプということであったが、二人とも、特に不得意な事があるわけではなく、オールラウンドに何でもこなせるという。


ランスロットのように余計なおしゃべりをしない分、パーシヴァルとエヴァンスのほうが頼りになりそうな気がするリューであった。



   *  *  *  *



冒険者ギルドに到着すると、ランスロットはリューより先に扉を開けて中に入っていってしまった。


ランスロット 「頼も~!」


リュー 「道場破りみたいだな……」


当然、突然入ってきたスケルトンに冒険者ギルドの空気が凍る。


冒険者達はランスロット達の禍々しい迫力にビビりながらも、慌てて武器に手を掛けた。それを見てリューも慌てて声をかける。


リュー 「危険はない! こいつらは俺の従魔だ!」


冒険者 「じゅうま…だとぉ?」


ランスロット 「ああ、どうか緊張なさらずに、危害を加えるつもりはありません」


ランスロットは首に下げた従魔の印を持ち上げて見せながら言った。


冒険者達 「シャベッタ―!」


ざわつく冒険者達を他所に、リューは受付に向かう。


リュー 「従魔登録を頼む。スケルトン三体だ」


受付嬢 「従魔…登録ですか? アンデッドモンスターをですか?」


リュー 「別に従魔を連れている冒険者テイマーなんて珍しくははないだろう?」


受付嬢 「普通、テイマーというのはもっとモフモフした感じの魔物を連れている事が多いんですケドネ……」


リュー 「たしかにちょっと骨っぽいが、手触りはどうでもいいだろ? 人間と同じように知能が高く会話も普通にできる。下手な魔物より安全だろう?」


受付嬢 「し、少々お待ち下さい……」


だが、受付嬢は手続きをしてくれず、奥に入っていってしまった。


そして、奥からギルドマスターと思われる男を連れて戻ってきた。


ギルドマスター 「スケルトンを従魔にしている冒険者が居るだと? おおっ、本当だ! スケルトンがいる! ……それも上位種か。三体も居るとは……おい、お前!(リューの事) ソイツらは大丈夫なんだろうな?!」


リュー 「何も危険はない」


ギルドマスター 「お前はテイマー、いや、ネクロマンサーなのか? ギルドカードを見せてみろ!」


リュー 「どっちでもないがな」


ギルドカードを出したリュー。だがそれを見たギルマスは怪訝な表情をした。


ギルマス 「Fランク…?」 職業クラスもなし? おい貴様、一体どうやってテイムしたんだ? それとも死霊術ネクロマンスで作り出したのか知らんが、無職ではできんだろうが?」


ランスロット 「別にテイマーの職能クラスを持っていなくても、テイムの魔法が使えればテイムは可能でしょう。死霊術もしかりですな。ネクロマンサーの職能クラスがなければネクロマンスができないという事でもないわけです」


ギルマス 「… … … …


…………スケルトンがしゃべったー!」



ランスロット 「ハジメマシテ、私はランスロットと申します、どうぞよろしく」


ギルマス 「お、おう……」


ランスロット 「失礼ですが?」


ギルマス 「なんだ?」


ランスロット 「お名前をお教え頂けますかな?」


ギルマス 「あ、ああ、俺はこのギルドのマスター、キングだ」


ランスロット 「ギルドマスターだったのですね。まぁそうだろうとは思いましたがね。さぁお前たちもギルマスキング様にご挨拶を」


パーシヴァル 「パーシヴァルだ」


エヴァンス 「……エヴァンス」


ランスロット 「無愛想な連中で申し訳ない」


キング 「……愛想が良いスケルトンも珍しいのだかな。というか、普通に会話ができるという事が異常なんだが……


そういえば、ランスロットと言ったか? お前は従魔の印を着けているが、あとの二人は着けていないな?」


ランスロット 「ええ、この二人は先程出てきたばかりなので」


キング 「出てきた?」


リュー 「先程紹介されて仲間になったんだ」


キング 「紹介? テイムしたって事か? いや、死霊術ネクロマンスか? 墓場から先程出てきたとでもいうのか?」


リュー 「俺はネクロマンサーではない。俺が生み出したわけではない」


ランスロット 「我々をネクロマンスで生み出した方は別に居ますが、その方についてはトップシークレットです。その方は冒険者ではありません、基本、世の中に出てくる事はありませんから気にする事はないかと」


キング 「リュージーンと言ったか? 生みの親が別に居るとはどういうことだ? リュージーンが主というわけではないのか? 大丈夫なのか? 言うことをちゃんと聞くんだろうな?」


ランスロット 「今はリュージーン様が主です」


リュー 「……そうだ、いいことを思いついた。人間と同じように会話がちゃんとできているのだから、従魔ではなく冒険者として登録したらどうだ?」


キング 「ばっ、冒険者だとぉ? 何言ってる、スケルトンが冒険者とか、無理に決まってるだろうが!」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


たかがFランクがチョーシコイテンジャネェゾ?


乞うご期待!



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