足を斬られてダンジョンに置き去りにされた少年、強くなって生還したので復讐します（習作２）

第275話 スケルトン軍団、街を守る ／ 王宮への報告

ブリジットはとりあえず、現在街の城門を警備している兵士達に、現在街に残っている警備兵を全員集めるように指示した。

ただ、全員集めてしまえば入城の検問作業が止まってしまう。もう街の警備隊には門番で残っていた兵士くらいしか残っていないのである。

城門の入城処理を止めるわけにはいかない。街への来訪者・帰還者を城壁の外に締め出して野宿させるわけにもいかないだろう。

そこで、リューの協力で、言葉を話せるスケルトン兵士を配置して対応させるようにした。

（死霊軍団（レギオン）の兵士は全員高度な知能を持っているが、全員が人間に聞こえる音声で話せるわけではないらしい。）

領主の館を漁って全身鎧を何着か見つけたので、それをスケルトンに着せ、足りない分は適当に服を着せて顔に布を巻きフード被せて誤魔化す事にした。不気味な格好ではあるが、警備兵の正体を入城希望者が疑う事もあまりないだろうから、中身が骸骨であるとは気付かれないだろう。

　　　　・

　　　　・

　　　　・

正門内側の広場に集められた警備隊員達、その数はわずか十数名であった。

その者達は、たまたま、城門の番であったり非番であったりしたため、森への集合に参加せずに済んだだけ、単なるラッキーで生き残った者達である。決して質（たち）がよい兵士というわけではない。

スケルトン達だけで警備業務は遂行できそうなので、質の悪い連中ならば全員処罰してしまってもいいのではないかとリューは言った。

だが、ブリジットとしてはそうもできず。集まった警備兵達に仲間は全員死んだ事を伝え、今後は罪を犯さず、街の運営に協力するという事であれば残った者は罪には問わないと言う事で言いくるめた。（もちろん、今後少しでも不法行為を行った事が発覚した場合は問答無用で厳罰に処すと警告はした。）

その警備兵達に、最近退職していった元警備兵達を集め再雇用するよう命じた。だが、それらをかき集めても元の警備隊の人数の三割というところである。さすがにそれだけでは足りないため、スケルトン軍団に二百名ほど協力してもらい、警備兵達に指揮させる事とした。

ただ、その人数では全身鎧も用意できず、服を用意するにしても手間と時間がかかるため、もうそのまま裸（・）？で町中を歩きまわってもらう事になった。町の人間達には早急に慣れてもらうしかないだろう。

スケルトン兵士達は自分でちゃんと考えて行動できるので任せておいて何も問題ないのである。全員、元は人間であった者達で、高度な知性を持っており、人間の事・街の事もちゃんと理解している。あとは外見と雰囲気の慣れだけの問題である。

最初は警備兵とともに町中を闊歩する骸骨に街の人間たちも動揺していたが、徐々に問題がない事が分かり、街はやがて平常運転に戻っていったのであった。

意外と簡単に人間は慣れるもののようで、応援が到着する頃にはスケルトン兵と親しく話をする町民まで出てきて、引き上げる時には別れを惜しむほどになるのであったが。

　　　＊　　＊　　＊　　＊

ドロテア　「エド、呼んだ？」

王城の謁見の間。王に呼ばれてドロテアがやってきたところである。王に対してこれだけ気さくな話し方をするのはドロテア以外には居ないだろう。

国王エドワード　「ダヤンの街に向かわせたブリジットから報告と応援要請が入った。ブリジットはダヤンの領主に捕らえられ殺されそうになったらしい」

ドロテア　「それは……すぐに救援を！　私が行きましょう！」

エド　「いや、ブリジットは無事脱出し、事態は既に解決済みだそうだ。領主は捕縛、領主の配下の騎士団と街の警備兵はほぼ壊滅させたそうだ」

ドロテア　「壊滅？　ブリジットとともに近衛騎士団を派遣したのですね？」

エド　「いや、ブリジットは護衛の騎士二名を連れて行っただけだ。残念ながら内一名は領主の騎士に殺されてしまったらしいが」

ドロテア　「では、ブリジット一人で事態を収拾できたのですか？　確かにブリジットも王宮騎士団の中隊長ですから腕は立つでしょうが…」

エド　「いや、報告によると、現地で雇った冒険者に助けて貰ったらしい。その冒険者の協力で、ダヤンの戦力を壊滅させる事ができたそうだよ。応援要請は、街の維持のための行政官と警備兵がほしいとの事だ」

ドロテア　「冒険者？」

エド　「ブリジットの報告では、その者は『賢者』だそうだ。名前はリュージーン」

ドロテア　「やっぱり！　でも、よく協力を得られましたね。私の見立てでは、彼に依頼を請けさせるのは難しそうな印象でしたが…」

エド　「もちろん依頼料は払う約束をしたらしい、金貨千枚だそうだ」

ドロテア　「千枚とは！　冒険者としては破格の依頼ですね。まぁ彼ならば当然ですか」

エド　「いや、その程度の額、反乱軍の制圧依頼としたら高いとは言えないだろう。だが金額よりも、ダヤンの領主がそのリュージーンを殺そうとした事が大きかったらしいな。共通の敵となった事で、助力を得ることができたそうだ」

ドロテア　「なるほど」

エド　「私も一度会ってみたいものだな、その　“賢者様”　とやらに」

ドロテア　「無理に取り込もうとするのは危険だと思いますよ？」

エド　「危険な存在なのは分かっている。だがそれよりも、国の体内に潜む虫（・）のほうがよほど性質（たち）が悪いのではないか？」

ドロテア　「そうですね……頭の痛い事です……」

―　―　―　―　―　―　―

次回予告

ランスロット　「頼も～！」

冒険者ギルドの空気が凍る

乞うご期待！