第274話 依頼終了~追加の依頼

ブリジット 「リュージーン様、ご協力を感謝致します」


リュー 「俺はアラハムの依頼を請けてブリジットを救出しただけだ。その分の報酬、金貨千枚はキッチリもらうから礼は不要だ」


ブリジット 「金貨千枚!」


リュー 「当然だろう? 賢者だからタダで手伝ってもらえると思ってたわけじゃないだろう?」


ブリジット 「い、いえ、そんな事は……しかし金貨千枚とは……」


アラハム 「勝手に申し訳有りません! 金貨千枚は、ブリジット様の救出をリュージーン様にお願いするために約束したのです。ブリジット様の命が助かるなら安いもの、金は私が王都の家屋敷を売ってでも支払いますので……」


ブリジット 「いや、その必要はない、ありがとうアラハム。良い判断だった。おかげで私は助かり、任務もこうして達成する事ができた」


リュー 「救出後の騎士と警備隊の殲滅、領主の捕縛についてはサービスって事にしておこう」


あえて恩着せがましい言い方をしてみるリュー。本当は、リューを殺そうとした者達の殲滅はリューの個人的な行動だったのだが。


リュー 「仕事は終わりだ、と言いたいが、そうも行かないか」


ブリジット 「賢者様、リュージーン様、申し訳有りませんが、もうしばらく手を貸して頂けませんか? 領主を捕縛したは良いですが、現在戦力が私とアラハムの二人だけしかない状況です。王都に応援は要請致しますが、到着まで何日掛かるか……」


リュー 「まぁ乗りかかった舟だし、仕方ないか。だがこれ以降の協力は、報酬は別料金だぞ?」


ブリジット 「はい、先の金貨千枚の他に、相応の報酬をお支払い致します」


リュー 「安請け合いして大丈夫なのか? 後で払えませんでしたと言われても困るぞ?」


ブリジット 「大丈夫です、もし万が一、認められないという事になった場合は、私が資産をすべて売ってでも払います。


ですが、問題無いと思いますよ、それだけの権限を私は預かってきておりますので。最悪の場合、街ひとつの運営を引き継ぐ事まで考えた任務だったのですから。


これは領地運営の必要経費ですから、認められるはずです」


リュー 「まあ俺も金が欲しいわけじゃない、金に困っているわけではないからな。だが、金で決着する話にしたほうがお互い気が楽だろう」


ブリジット 「正直、ここまで急展開するとは思わなかったので、準備ができておらず、申し訳ないのですが……


お金でリュージーン様のお力を貸して頂けるならありがたい話でしかありません」


リュー 「金を積めば何でもやってもらえるとは思わないでくれよ? 俺は確かに冒険者だが、気に入らない依頼は請ける気はないからな」


ブリジット 「もちろん、そのようには考えておりません。


……リュージ―ン様、是非、王宮に招待させて頂きたいのですが、王に是非お会い下さいませんか?」


リュー 「あーそういのはいいから。ドロテアにも言われたが断ったんだ」


ブリジット 「宮廷魔道士長のドロテア・リンジット様とお知り合いなのですか?」


リュー 「知り合いというか、押しかけられたというか……


だが、悪いが、俺はどこかの国の王の家臣になる気はない。王族・貴族に跪く事はしない。


見ての通り、俺は無礼者だからな、偉そうな態度の王族や貴族を俺に引き合わせる事は諦めた方が良いと思うぞ? トラブルになるだけだ」


ブリジット 「それならば大丈夫です」


リュー 「?」


ブリジット 「この国は実力主義です。そして国王、エドワード陛下は身分で差別をせず、別け隔てなく接するお方ですから」


リュー 「へぇ……」


ブリジット 「無理にとは申しませんが、是非、機会がありましたら一度お会いして頂ければ」


リュー 「そう、まぁ、考えておくよ……」



   *  *  *  *




ブリジットは領主屋敷の執事を呼び、屋敷に残る者を全員大広間に集めて言った。


ブリジット 「お前たちの主、領主バラス男爵は国家反逆罪で逮捕された。おそらく領主は解任、爵位も没収となるだろう」


執事 「私共は全員解雇と言う事になりますか」


ブリジット 「バラス家の私財についてはバラス家の子供達に引き継がれるだろう。あとはその子供達次第だ」


バラスの子供達は現在王都の学院で勉強中との事だった。父の爵位に関係なく、元より男爵位は世襲できないのだから、子供達も将来どうするかは考えているはずであろう。


ブリジット 「ただし! この屋敷の資産の持ち逃げ等すれば重罪に問われる事になるから覚悟しておくように! 


おそらく、一度バラス家の財産は全て王国が預かる事になる。横領等がなかったか検分の上、個人資産と認められた者は子供達に返却されるだろう」


使用人達は、自分達が解雇される事が容易に想像できたので、全員その日の内に荷物を纏めて屋敷を出たのであった。ブリジットの警告があったため、屋敷の金目のモノを持ち逃げするような者はほとんど居なかったようだ。


余談―――結局、横領が認められた分を除いてもそこそこの資産がバラス家の子供達に返却された。


バラスの次男と三男は屋敷や土地などの資産はすべて売り払い、王都の学校を継続。知識を身につけ人脈を作る努力をし、卒業後は商人として事業を起こす事になるのであった。





使用人がいなくなったため、領主の執務室の騎士達の死体を片付ける者が居ない。放置しておけば腐って大変な事になるし、アンデッド化してしまう可能性もある。


だが、ランスロットが部下達レギオンに命じて騎士達の死体を全て回収してしまった。レギオンに回収された死体はアンデッド化確定ではあるのだが。ダンジョンにしか出現する事はなくなるので特に問題はない。


代官が派遣されるまでの間は、とりあえずブリジットが領主の代行を行う事になるが、いかんせん人手が足りない。


屋敷の中に三人ほど、閑職に追いやられていた古参の騎士が残って居たのだが、その三人は王国に対する反逆にも関わっていないということで、そのままブリジットが雇って領地運営に力を貸してもらう事にした。


とりあえず、通信用魔道具を使い王宮に連絡を入れ、街を維持するための応援を大至急要請したが、王都からダヤンの街までは移動に数日掛かる距離である。部隊の編成から考えると、一~二週間掛かる可能性もある。


その間、街をどう維持するか……


街の騎士団と警備隊はほぼ壊滅状態なのである。


街は城壁に覆われているため、魔物の襲来についてはしばらくの間は問題はないだろうが、街を訪れる旅人の受け入れ業務は必要となる。街を閉鎖して旅人に外で待っていろと言うわけにもいかない。


それに、街の中の治安維持活動もする者が居なくなってしまう。


リュー 「手はいくらでもあるぞ」


ブリジット 「?」


リュー 「なぁ?」


ランスロット 「はい、お任せ下さい」


ブリジット 「いや、スケルトンに街の運営をさせるのは無理があるのでは……」


リュー 「別に問題ないだろ? 街の住民には慣れてもらうしかないが」


ランスロット 「はい、大丈夫ですよ、軍団レギオンの兵士は、必要であれば十万人でも用意できますぞ?」


リュー 「街を占領できそうだな……」


ブリジット 「ちょっ、それは流石に……必要最小限にしてクダサイ……」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


報告を聞いた王は……?


乞うご期待!



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